第二十一話「普通の終業式」
くねくねに見えた結城と、娘とお揃いの服を着た変人医師に助けられた一件以降、何かがモヤモヤしていた。
ハッキリ言って結城にときめいてしまった。
そして理解した。
始まる可能性が皆無の最初から破綻した恋という形式の失恋が存在するという事を。
好きになってはいけない人に惚れてしまったという点で、高島の気持ちがなんとなくわかる気がした。
高島は結城に好意があるが、多田が接近するのを妨害してない。
積極的に勇気と距離を置かない代わりに、結城と多田がくっついてくれれば自分の気持ちに区切りをつけられると無意識に思っているのだろう。
他力本願にも程があるが、なんとも人間臭い。
そしてその二人は進展があったらしい。
「確かに3-Wayハンドシェイクとは言ったけど、そういう意味じゃないわ…。」
ずっとSYNとかSYN,ACKとか言いまくってる多田に対して、結城が呆れていた。
「そんじゃー、終業式だから全員廊下に並べー」
相変わらずやる気のない命令。
「体育館に移動して長ったらしい校長の話聞きに行くぞー」
いや教師としてアウトだろ。
全校生徒約600人が体育館に集められる。
1人あたり秒間80〜100Wの熱を放出すると言われる。
体育館の熱源4.8MW/s…考えるだけでまた熱中症になりそうだ。
まあ、倒れたらまた結城がなんとかしてくれるだろうけど…って、何を期待しているんだ私は…。
…熱中症で倒れて結城に介抱されることはなく教室に戻ってきた。
その後ホームルームで注意事項とか聞いて終了。
かくして1学期が終わった……のだが……。
バーン!
教室のドアがすごい勢いで開け放たれる。
嵌め込まれたガラスが割れたのではないかと心配になるレベルだった。
「結城雪っていうのは、あんたね!」
扉を開け放った少女が結城に喧嘩を売りにきたようだ。
その少女が小柄という点は結城と体格は近そうだが、華奢というかガリガリだった。
そしてパーカーを見に纏い、顔はフードで覆っている。
パーカーのポケットには重たそうなものが入っているようで生地が伸びている。
下は和良沼中のジャージのようだ。
そして…。
その手には包丁が握られている。
「何でお前がここにいるんだ!!」
大声で叫んだのは多田だった。
あ、これ訳アリっぽいな。
突如教室が修羅場と化したので、私も色ボケモードから戦闘モードへと切り替えなくては…。
軽く深呼吸して、静かに肩を回した。




