第十八話「普通の母子」
私は結城にハンディファンで風を当てられていた。
正直、この高温多湿の真夏の炎天下では、扇風機というよりはイカれて弱風しか出ないドライヤーのように感じる。
そして、このままでは結城まで熱中症になりはしまいか。
それは結城もわかっているようで、手を打つところのようだ。
「あ、お母様、ちょっと車で来てもらえないかしら?」
「…え?場所?ホテル『ヘヴン・ユートピア』の南南西約250mの路上よ。」
やがて到着したアルトラパンから出てきた結城の母親は、一眼見ただけでヤバいと思った。
うちの母親もヤバいが、ベクトルが違う。
そこそこにいい歳だろうに、結城と同じ服装だった。
(姉妹で子供服ペアルックはよく見るけど、親子でやるか…?)
と朦朧とする脳内でツッコミを入れていると、手際よく私の腕に何かを巻き付けていく。
シュコ、シュコ、シュコ… 空気の入る音と共に腕が締め付けられる。
シューーー…… 結城母は向日葵畑を駆け回ってそうな服装なのに、真剣な表情で聴診器に集中している。
「105の65、かなり脱水してるね。」
「脈拍は100あったわ、お母様。」
「とりあえず車乗って、多少はエアコン効いてるから。」
結城母のアルトラパンの助手席に座らせられ、経口補水液を飲まされる。
「…助かりました。」
「…それで、さっきから気になっていたんですけど、なんで雪さんと同じ格好なんですか…?」
「私は小柄だから、子供服で160が入るからね。」
…それにしてもいい歳して麦わら帽子と白のキャミソールワンピースって…。
その格好で血圧計持ってるとか情報量多すぎ案件だから…。
「あ、夏場はちゃんと食べないと、体温調節だけでエネルギー使うからね。これ食べなさいな。」
結城母からあんぱんと牛乳を渡された。
情報量が限界で私の頭はストライキを起こした。




