第十六話「普通の関係」
4月にこの和良沼高校に入学してから2か月。
私の中での謎が一つあった。
高島と結城の関係だ。
決して、仲がいいようには見えない。
二人きりだと会話をしない、というか、お互い他の誰かが一緒じゃないと近づこうともしない。
ウタマロせっけんの会話も乱入されて嫌そうにしていたし、結城も嫌がられている自覚がありそうだった。
その時は、「お互い何かプチ因縁があるのだろう」くらいにしか思っていなかったが…。
先日のお見舞いの時のやり取り、あれは高島は結城に対して好意はありそうなんだよなぁ…。
気になって寝不足になった。
明日、家業の手伝いで素行調査とか頼まれてるから流石に今晩はちゃんと寝ておきたい。
――あれは…。
小学2年生の時。
「高島!やめなさよ!雪ちゃんいやがってるじゃないの!」
「うるせー、お前にはかんけいないだろ!」
俺が結城にちょっかいを出した。
2年生になって同じクラスになった、無口で本ばかり読んでいる、何を考えているかわからないヤツ。
しかもその本が普通に漢字と英語が混ざってて、意味不明な図が載ってたりして、天才アピールしてるみたいに見えてなんとなくムカつく。
理由はよくわからないが無性にからかいたかった。
そしてからかっても運動神経鈍そうで反撃してこなさそう。
俺は休み時間に本を読んでいる結城の目の前で、机の上の筆箱を奪って、
「本ばっか読んでるからふでばこもらっちゃうぞー!」
「返してほしかったらここまでおいでー!」
と、テンプレないじめっ子になっていた。
そこでクラス委員長の優等生が介入してきた。
「あなたが私のことを思って間に入ってくれるのはありがたいわ。」
結城は俺の存在なんか気にしない様子で、逆にクラス委員長を諭していた。
「でもね、正義感だけで間に入ると、一緒にいじめられるかもしれないから、場合によっては先生を呼ぶとか、他の方法も取れるか考えた方がいいわよ。」
なんだコイツ、妙に大人ぶっていて気持ち悪い。
読んでる本も到底子供が読む本じゃないだろ。
本のタイトルは…『PMBOKガイド』とか書いてあったような。
まぁ、だいぶ後に聞いた話では「あの時は家にあったから持ってきて読もうとしたけど何一つわからなかったわ」と言っていたが。
そして…。
「あと、さっき『私がいやがってる』て言ってたけど、いやがってないわよ?」
「ふでばこも、スケーリングしてるけどいちおうバックアップあるのよ。」
予備のペンケースを引き出しからすぐに出していた。
――気になりすぎて私が高島に直接聞いたら、高島が回想を語った。
「結局俺は、結城にとっての『処理した問題』の一つだったんだよ。」
私の脳内に納得感と困惑が同居していた。
「結城さん、小2の時から既に完成しすぎじゃない…。」
「その時、結城はいじめるより利用する方が楽だと気づいて、一緒にいるだけだ。」
続けて高島が一言。
「俺は、アイツを好きになる資格なんかないんだよ。」
モヤモヤが増えて今晩も寝られる気がしなかった。




