第十四話「普通の解熱」
「結城さんのお見舞いに病院に行きたい。」
珍しくアタシから言い出した。
「あー…香菜、最近結城にベッタリだったし、寂しいよね。でも今の状況じゃ厳しいでしょ。」
さくらっちが答える。
間宮さんが補足する。
「39℃の熱が出て、原因がわからない状態だと面会も許可されないと思いますよー。」
この人はちょっと不気味だけど、悪い人じゃない。
確かに。
アタシは心配だった。
このまま結城さんと会えなくなってしまうのではないか…そんな不安が胸の中でモヤモヤしていた。
アタシは子供の頃から、褒められた記憶がない。
というか、見栄っ張りの両親からすると、アタシがドジで子供っぽいことで恥をかかされたと、常に怒られていた記憶しかない。
風邪を引いたら、「よその子より体が弱い」と怒られる。
ご飯を食べていたら「好き嫌いが多い」「食べこぼしが多い」「のろのろ食べるな」と怒られる。
「おねしょが治らない」と怒られる。
小学生になったら「○○ちゃんは××で賞を取ったのに、何であんたは何の賞も取れないの」と怒られる。
習い事もしてないのに素人が賞なんて取れるわけないじゃん。
…今思い返すと、子供だから当たり前のことばっかり。
そしていつしか、「早く大人っぽく振る舞えるようになって、両親が見栄を張れるようにならなくてはいけない」と思い込むようになった。
でもそんな簡単じゃない。
天地がひっくり返ってもアタシはしっかり者にはなれっこない。
気がついたら、大人っぽい振る舞いだと自分で思い込んで、ちょいワルなギャルっぽく振る舞っていた。
中学でお母さんが生徒指導に呼び出された。
見た目ギャルだし当然といえば当然だと思った。
これは自分の大人っぽくの暴走だと自覚はあったから、初めて自分が悪くて怒られる……と思ったのに、帰り道「あんたも結構大人になったんだね」と言われた。
なんか方向性が違う。
子供の頃からわかってた。
親なのに全然信用できない。
だから…。
なんにも考えずに信頼できる結城さんと一緒に過ごすようになって、安心だった。
その結城さんが、昨日は何だかアタシに対してちょっとぎこちなかった。
とにかく不安だった。
放課後、何やらさくらっちと多田くんがコソコソと教室を出ていくのが見えた。
気になって後を追う。
資料室倉庫と書いてある部屋に入って行った。
鍵開いてるの…?
結城さんとスマホでビデオ通話しているようだった。
(…ずるい!)
そう思いつつも、聞いちゃいけない会話だと思って立ち去ろうとしたが…結局一部始終聞いてしまった。
そして…。
「心配してくれてありがとう、雪お姉ちゃん!」
気がつくとアタシはスマホの画面に乱入していた。
その後、「急に眠くなったわ」と言って、結城さん――雪お姉ちゃんは気絶するように後ろに倒れて画面から消えてしまった。
「多分、病室のベットに倒れ込んだだけだから大丈夫。」
多田くんが前後の状況も含めて教えてくれた。
それから3時間後…携帯が鳴った。
『ご心配をおかけしました。熱は下がりました。』




