第九話「普通の心因性」
「インフル、コロナ、溶連菌、マイコプラズマ…全部陰性でした。」
処置室のベッドの上で間宮看護師の説明を聞く。
父は困惑している。
「…高熱が出そうな感染症ではない?でも、ただの風邪でこんな熱が出るのは…。」
当然だった。
私でこの熱に心当たりがある。
確かにあの雨と急に流れ込んだ寒気で体が冷えたのは事実。
だが問題はそこではない。
パクチーの家庭だ。
首を突っ込みすぎと言われればその通りかもしれないが、目をかけた相手が抱えている家庭の問題をどうにもできない歯痒さと、放置して帰宅してしまった罪悪感…。
パクチーが見舞いに来て、顔を見た瞬間に、体調不良で忘れていた問題解決模索プロセスがフル稼働し始め、CPU使用率99%張り付きだった。
端的に言って、ストレスーー心因性のものだと思う。
とは言え、それを両親に話したところで、よその家の問題に関与できないし、相談された側がモヤモヤしては私のポリシーに反する。
サラリーマンは職場の問題を家族に愚痴れない…私も同じか。
友人とはいえ、完全に責任範囲外の案件なのだから、様子見しておけば良い。
それが合理的だと頭ではわかっているのに…。
気分のディクリメント、ストレスのインクリメントの無限ループの末、モヤモヤがオーバーフローして意識が落ちたのだった。
目が覚めて気づく。
そのまま入院となったらしい。
まぁ当然か。アセリオで解熱したものの、原因不明の高熱でうなされていた患者を帰宅させるのはありえないだろう…。
病室のベッドのテーブルの上の携帯に、多田からのメッセージが届いていたのだった。




