第三話「普通の相席」
「え、私と高島くんが2人で前?」
私が示した想定外の席次で朝倉が困惑している模様だ。
「もしくは朝倉さんは後部座席で多田くんと高島でサンドイッチ。」
「……何でだよ?」
今度は高島が困惑した。
合理的だと思うのだが…。
高島と朝倉を前の座席に座らせたが、降りるときにその意味を理解してもらえたようだ。
二人とも降りる場所が和良沼町の中心から近い。
一方、多田とパクチーは神無宮市だった。
朝倉と高島が降りたのに私が一緒に降りないことに疑問に思った多田が聞いてくる。
「え、結城さんに家の場所、この辺でしょ?高島と小中も一緒だったってことは…。」
「…そうよ。でも今降りたらパクチーが可哀想よ。」
多田の表情が複雑だった。
そこまで面倒見るのか?と言いたそうだった。
私としては、一つ確かめたい仮説があったのでパクチーの家までついて行こうと思っていたが、確かにやりすぎかもしれない。
他人のトラブルに善意で介入しすぎて炎上するのは父譲りか。
でも、その炎上すら愚痴を言いながら楽しんでしまうのが結城家の遺伝子かもしれない。
結論から言うと、仮説は当たっていた。
「同級生にタクシー代払わせるって、何考えてるの!」
玄関先で服が濡れた状態のパクチーは母親から罵声を浴びせられていた。
表面上は常識的な思考かもしれないが、雨に濡れ落雷に怯えている娘を前に第一声がそれとは…。
パクチーは両親を信用できず、それでも精一杯大人になろうと努力して変な方向に行ってしまった、その反動で信頼できると思った相手には、今まで親に甘えられなかった分まで甘えている…。
仮説を証明するパーツが一つ増えた。
「あ、お金出します。」
パクチーの母親はそう言ったが断った。
「私が好きで乗せてきただけなので、受け取りませんよ。」
うん、こういう大人のメンツは立ててやらない。
まぁ実際、妹ができたみたいでちょっと楽しかったし。
言いたいことは山ほどあるが、タクシーに多田を待たせていたので、早々に切り上げて戻る。
(タクシーって停車中もメーター上がるんだよなぁ…。)
多田の家まで走る間、多田と二人きりになった。
「てか、僕の家まで行かなくてもいいけど…。」
「…そうね。善意でやってると見せかけて、何かあったときの為に友人の家の場所を把握したいだけよ。」
「何かって…。」
「さぁ、何でしょうね?起きるも八卦、起きぬも八卦…いやこれ違うか。」
パクチーの心理はわからなくもない。
私も基本的に他人は信用していない。
「他人は絶対に信用するな。自分はもっと信用するな。」
という父の迷言のせいだが、その反動で信用できると思った相手には結構毒を吐いている。
(…なんか放って置けないのは、同類だからか…。)
そう思いながら、心のACLに
permit ip 多田 any
を追加したのだった。




