第二話「普通の賃走」
(はぁ…)
この天候だと、家業の手伝いは無理そうだ。
依頼主のターゲットが18時くらいに動き出すのを尾行するという話だった。
寒冷前線が通り過ぎて18時に雨が上がったとしても、このままではその時間に配置につける気がしない。
今のうちに母にメッセージ送っておこう。
「では、傘がないという問題に対する最もリスクの低いソリューションを提示するわね。」
結城の手のスマホにはタクシー配車アプリの画面が表示されている。
「いや、金かかるだろうが!お前と違って俺ら普通の学生だぞ?」
「あら、私も普通のJKよ?ちょっと稼いではいるけど…。」
結城さんがバイト…意外だった…。
あ、うちの母のとある重要顧客案件の構築か…?
確かにタクシーは魅力的な提案ではあるが、お金がかかるという点で高校生の選択肢としては最終手段だろう。
(高梨のコンビニでのヤンキーからの撤退協力時は緊急事態だったからなのかと思ったが、もしかして結城の金銭感覚おかしい?…いや、母親が医者になるために借金とか言ってたし、むしろお金あんまり無いんじゃ…?)
「リスクマネジメントとして…」
また始まった…。
普通のJKが絶対に使わない用語解説…。
「想定されるリスクの危険度評価と対策案のQCDを比較してどう行動するか決める物よ。雨に濡れて困ルリスクの回避策のトレードオフよ?」
「……全員乗れるの?」
時短できるなら願ったりだ。
話に食らいついた。
「車種がコンフォートなら、サイドブレーキとシフトレバーの配置を空けて座席になってるから前に乗客2人乗れて、5人いけるわ。」
「待て、金が…」
高島が言う。
普通の反応だろう。
「まぁ、5人で割り勘ならそこまで行かないわよ。」
とは言っても…という表情で財布の中を確認する高島。
「まぁ、私はこの状態のパクチーを置いて帰れないから勝手にタクシーを呼ぶわよ。たまたま空いてる席にタダで一緒に乗れるラッキーな人が3人発生するわね。あれ?ここに3人いるじゃない?」
「…お前に払わせるのは癪だが…。来月倍にして返すからな!」
「いや僕も払うよ?てか倍にして返すってどゆこと?」
「いやいや、領収証の宛名は『朝倉探偵事務所』でいいよ。」
現状、結城と高梨は引き離せない。
どういう配置で乗るんだ…?
順当に考えれば、前2人は高島と多田、後ろが私と結城と高梨になるだろうか。
この場に間宮がいないのが幸いだった…。
あれ…?間宮、さっき教室にいたよな、何をしているんだろう…。
……あ。雷を怖がって結城にしがみつく高梨を見つめてニヤニヤしていた。
ブレないな、お前は…。




