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あんたんーUNundersTANdable  作者: 三咲 美月
第一章「普通の日常を目指したい」

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第三話「普通の教室での会話」

翌朝、始業前のことである。

私は五十音で最後尾に近い…というか、「吉田」「吉野」「和田」とか私の後ろにきそうな苗字がいなかったので、最後尾だった。

席順は初期設定で五十音順で、先頭が左前なので私の席は右後、一番廊下側の後ろの扉に最も近い位置である。

(クラス全員の人力入退室ログでも作ろうかしら…)

いや、それはいくら「普通じゃない人」で友人ができないにしても不毛すぎる。


打ち解けられる友人候補がいるかもわからず、HSRPのステータスならListenでクラスの様子を観察していると、クラスの中央付近の席の男子の会話が耳に入ってくる。


「なんか母さんが緑色の石鹸でゴシゴシ洗ってて…」

そう発言したのは高島隆、このクラスで唯一昔からお互いを知っている人物。仲がいいかと言われると、何人かでグループで会話していればお互い会話するが、一対一では避けられているという微妙な関係である。

「あ、それ知ってる。名前何だっけ…ウタマル?」

そう返したのは、自己紹介で多田忠男と名乗っていた。

苗字が「た」で始まっていて、高島の後ろである。

…のだが、誰がその会話をしたかは今は関係ない。

他人の会話にツッコミを入れないと死んじゃう病の発作で、体が勝手に教室の一番右後ろから中央付近まで移動していた。

通常この病は日本人の10人に1人くらいの割合で発現し、発作時に衝動的に体が動くのはせいぜい半径1メートル程度である。私の症状はかなり重症らしい。

「それだと某大喜利番組の司会進行をやってた落語家になっちゃうわ。でも緑色だけは一致してるわね。」

言い終わると同時に、高島が言う。

「…また人の会話に勝手に入ってきやがって……。」

まあ、ごもっともな反応である。

多田が続ける。

「いいんじゃない?で、石鹸の名前何だっけ?」

「『ウタマロ』ね。」

高島が不満そうに割り込む。

「いつも何で平然と割り込んでこられるんだか…」

だいたいこう言う流れで会話に割り込むのがよほど不満らしい。話の腰を折られるのが嫌なのか、話題の中心でいられなくなるのが嫌なのか。…後者だとしたらギャルなのかお前は?


とりあえず弁明しておく。

「他人の会話でも間違いを正さないと死んじゃう病なのよ。主に母のせいで。」

と言い終わるとほぼ同時に、何者かに後ろからすごい勢いで肩を掴まれた。

「わかる!ツッコミ入れたくてウズウズしちゃうよね!」

いや、そんな肩をがっしり掴んで同意してくれなくても良いのだが。

そしてこの私と同じ病を罹患している宣言をしたのは、朝倉さくら、入学式後の自己紹介の後に、クラス委員に立候補してそのまま信任された、委員長である。

「うわっ、なんか増えた!!」

高島が驚きと嫌悪感を3:1で混ぜ合わせたような声で言う。

「いいじゃない、友達は多い方が。」

多田が言う。場を取り繕っていると言うより、本心からおしゃべり好きなのだろうと思える声で。

それに対して高島はぼそっと言った。

「……友達…結城が?」

まぁ、知ってたが。


一対一では避けられてるし。


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