第二話「普通の自己紹介」
入学式が終わり、そのままホームルームとなる。
当然、自己紹介はある。
自己紹介は、毎回何を話すか迷う。迷った挙句、普通じゃないことを言ってドン引きされる。
であれば、普通に「自分が普通ではない」と言うことを言えばいいのではないか、という結論に達した。
…のではあったが、担任が既に普通じゃなかった。
「1年間このクラスの担任になる小路高次だ。担当科目は数学。モットーは『生徒との適度な距離感』なんで、まぁほどほどによろしく。」
「ってことで出席番号順に自己紹介してってねー」
(…大丈夫かこの教師…)
『適度な』とは曖昧で便利な言葉である。何でも誤魔化しが効く。
距離感を謳って最終的に全く生徒に関わる意思がないのではないか?
とか考えていたら私の順番になった。
苗字が「結城」だから出席番号がだいたい最後尾から数えた方が近い。
「結城雪です。よくあまり『普通ではない』と言われますが、普通に接していただけると幸いです。」
さて、反応は…普通にスルーされたようだ。結果オーライ。
と思ったが、私以外に『普通じゃない』やつがもう一人いた…それが担任だった。
「ふーん、結城さん、ね。普通じゃない…アブノーマルってことね」
一気に教室がざわつく。
「言い方が最悪ですぅー!」
どこからともなく、誰かの普通な怒りの声が響いた。
言われた本人の代わりに言ったというより、ただの非難なのかもしれない。
私はそこで担任の発言を非難も否定もしなかった。
「英訳するなら普通、「Unusual」ですよね。あえて「Abnormal」を選んだのは、なかなか悪意があって面白いと思います。先生も『普通ではない』ですね。」
そう言って自己紹介を終えた。
おそらく全員のクラスメイトデータベースの「結城雪」のレコードにある備考フィールドに「普通じゃない人」とインプットされたことであろう。
ともかく、ドン引きされなかったことだけは一定の評価に値する…(はず)。
かくして、初日のホームルームを終えたのであった。




