第二十九話「普通の普通」
宿泊研修を終えて、気づけばゴールデンウィークも過ぎ、中間試験も終わっていた。
数学の授業。
小路による授業は、小路の癖のある人間性に反して存外にわかりやすかった。
結城は…ノートパソコンで何か調べていた。
一応、教師の許可は取っていると言っていたが…。
…いや、結城が言うにはあれはThinkPadであってノートパソコンではないらしい。
宿泊研修の『顧客が本当に欲しかったもの』の絵を出してくれた時、「ノートパソコン」と言ったら珍しく顔を真っ赤にして激怒して「ThinkPadよ!」と力説された。
「この問題、結城、解いてみろ。」
調べ物から急に指名されたが、顔色ひとつ変えずに黒板にスラスラと計算式を書いていく。
そして当然正解。
「普通にすごいな。」
所要時間が短過ぎて小路が逆に舌を巻いていた。
「普通にすごいって、結局普通じゃないってことですよね?」
「まあ私はアブノーマルなJKですから?」
結城は小路の最悪な発言を引用して皮肉で返す。
「悪かったって。」
「謝っても、私がアブノーマルだと言う情報が、クラス全員の脳にキャッシュされてます。TTLが切れるのは卒業後です。」
授業が終わって、「普通って何だ」と言う議論になった。
「普通じゃなくないってことでしょ?」
高梨、それは二重否定であって何の説明にもなってないぞ…。
「集団における大多数の認識の上に成り立つ社会通念上における普遍的な…」
抽象的的過ぎて意味がわからんぞ朝倉…。
「ローカル線の各駅停車…」
「列車種別の普通じゃないわよ!」
突っ込んでくれてありがとう結城。
「標準偏差の中央値付近よ。」
結城の答えは超簡潔だった。
しかし、結城は…。
何かを発言する時、おそらく標準偏差の端の人の思考も考慮した複数の案から最適解を選択しているような気がした。




