第二十二話「普通の宿泊研修」
オリエンテーション。
そう言う名称だが、入学後の説明ではない。
1年生の親睦を深める宿泊研修だった。
青年の家と称する施設に軟禁され、睡眠という人間が最も無防備になる状態を、赤の他人と晒すという恐怖のイベントである。
部屋割りはある程度自由に組ませてもらえたのが救いだった。
朝倉さくら、高梨香菜、間宮真美、そして私、結城雪だ。
間宮真美、ずっと無口で班分けでどこにも入ろうとしないので引き受けたが…。
何を話しかけても反応が薄い。
ずっと本を読んでいる。
この人大丈夫だろうか?
…いや私も似たようなものか。
「ねー、ベッドどれにする?アタシ上がいい!」
割り当てられた部屋の2台の二段ベッドを目の前にして高梨パクチーがはしゃいでいる。
パクチーは最近打ち解けてきた。
どうやら直感的に思ったことを、考えずにしゃべってしまうことで過去に友人に誤解を与えたことがトラウマで、直感的によく考えて心にもないことを言ってしまうという最悪な拗らせ方をしていたらしい。
私や朝倉が心を許せる存在だと分かった瞬間、ものすごくお喋りになった…が、喋り方がほとんど小学生のような感じだった。
朝倉とパクチーなら、寝込みを襲われる心配もない。
この間宮も、読書以外興味なさそうだし…。
セキュリティレベルを下げて睡眠レベルは上げても問題なさそうだ。
と油断したのが間違いだった。
「怪談話ししませんか?」
消灯時刻を過ぎてから間宮の声がした。
「やめて!」
朝倉が即答する。
朝倉は自分が理解できないものはとにかく嫌だ、というタイプなのは1ヶ月の付き合いでよく分かった。
探偵とかやってると、怪奇現象とかは排除したい思考回路になるのだろうか。
「うーん…アタシはいいけど…さくらっちが…。」
パクチーも乗り気ではない。
「じゃぁ私が…。」
とっておきの怪談話をした。
全員青ざめていた。
「恐ろしいけど、思っていたのと違う。」
間宮は私の狙い通りに興醒めしたという感じだった。
「…怖いね…普通に。」
「ヤバくね?」
朝倉とパクチーはドン引きしていた。
怪談と称して何を話したのかって?
畳に敷き詰められたUTPと畳に転がる聴診器の話である。




