第十七話「普通の睡眠」
カチッ
……1分ごとに進む針の音が、大きな建物特有の親機と連動した時計と、それが設置される施設に似つかわしくない静けさを際立たせる。
深夜2時。
最初はお金を少しでも稼いで両親に返したいという思いから当直を多めに入れてたのだが、気がついたら寝なくても平気な体に順応していた。
呼びかけられたらすぐに反応できるくらいにボーッとしているだけで、ぐっすり寝たのと同じくらい疲れが取れている。
脳波とかどうなっているんだろうか…。
脳細胞は覚醒時は膨らんでおり、睡眠時に萎んで、その時に毛細血管にきた血流で老廃物を押し流す。
感覚的には脳細胞の間の毛細血管がギリギリ使えるくらいまで萎ませてる。
実際はどうなっているかは知らないが。
今夜、自宅は壮絶な修羅場になっているらしい。
娘からLANケーブルが畳に敷き詰められて布団を敷けないというメッセージが送られてきた。
写真も添付されている。
何をやっているんだ夫は。
ボーッとする。
ふとあることを思い出す。
小学校の理科の授業、試験管には塩酸、そこに金属を入れると水素の気泡が発生するという実験。
その後の単元で胃液は塩酸ということを習った。
つまり、アルミを食べれば空が飛べるかも?と本気で考えていた。
中学の理科では、質量保存という原則を習った。
あ、やっぱり空は飛べないのか、とショックを受けた。
高校の化学で、化学反応式を習った。
胃の中に塩化アルミニウムが沈澱するね。
というかゲップで発生した水素が出てってしまう。
医大に入って普通にわかった。
アルミって過剰摂取したら毒だった。
というか、金属を単体で摂取するなんて体が想定してない。
…そして今。
「結城先生!1歳児がボタン電池誤飲で、救急搬送受け入れしたいんですけど…。」
「わかった、すぐに準備するからうちで受け入れてあげて。」
ボーッとタイムは終わった。
仕事の時間だ!




