第十五話「普通の興味」
神無宮市の住宅地の自宅・多田邸から、自転車で15分。
神無宮駅から田園地帯の中の駅を2つ抜け、田舎の町とはいえ商店街と呼べる規模の機能している商業施設の密集地が近い和良沼町の中心地、和良沼駅で下車する。
この町は、江戸時代くらいの資料には「藁沼」という地名だったが、いつからか字面が悪いという理由で変えられたらしい。
その証拠に、駅の近くに「和良沼町藁沼」という地名が残っていたりする。
この辺り一帯は、昔は海だったところが海退現象によって陸地になった平野と、元から陸地だった丘陵がはっきり分かれている。
地元の地質学では「神無宮崖線」なんていう名前すらついている。
駅は平地の方にあり、その駅から徒歩で20分程度の位置に僕が入学した和良沼高校はあった。
通い始めて思う。
(なんでここ受けたんだろう?これから3年間毎日これ歩くのか…。)
その坂を登り始めて少しの場所にコンビニがあった。
昨日ガラの悪い上級生がいて、結城がタクシーで離脱した店だ。
そのコンビニに、問題のガラの悪いのが今日もいた。
この坂道の途中のコンビニは、砂漠の中を行くキャラバンがオアシスで休憩するように、うちの生徒は自然と立ち寄るような立地だというのに、アイツがいたのでは立ち寄れないではないか。
そう思いながら、コンビニを通過しようとしたら…。
(あれ?出てきたのは結城さん?)
昨日は小柄なのにどこか威厳のあるピンとした背筋だったが、今日は別人のように猫背だった。
昨日は茜色だったオーラが群青色である。
そしてその目の前にはガラが悪い上級生。
(大丈夫だろうか?)
ああいうガラの悪いのは、メンツとかプライドとか気にするだろう。
昨日の結城の行動は、間違いなくそれを傷つけただろう。
昨日のような覇気が全くないのをいいことに、ボコボコにされてしまうのではないか?
その心配はいい意味で裏切られた。
少し会話した後、結城とガラの悪い上級生が一緒に学校の方向へ歩き始めたのである。
(…どういうことだ…???)
(…というか、彼女は何者なんだ…????)
何が起きたのか気になるという好奇心が、結城への興味に直結していた。
気がつくとストーカーのように、結城から目が離せず、一定の距離を保ちながら後ろを歩いていたのだった。




