第十一話「普通のパクチー」
訳あって、私は下校途中にクラスメイトを確保してタクシーで探偵事務所に押しかけている。
ことの顛末を説明すると、探偵事務所の所長の娘である朝倉さくらは脳内がブルースクリーンになってしまったようだ。
「まぁ、大人の事情は置いておいて。」
私が話を切り出そうとすると、朝倉母が横槍を入れる。
「大人の事情って、一番見た目が子供っぽいあなたが言うの…」
と言って笑う。
「パソコンの壁紙真っ赤にしますよ?」
「やめて?黙ってるから!」
この朝倉母、他人の会話にチャチャ入れたい病末期患者らしい。私や朝倉以上にタチが悪い。
とりあえず黙らせて続ける。
「変なのに絡まれるくらいなら、私と一緒に行動するようにしたらどうかしら、という提案よ。」
(…あ、やってしまった。言葉から感情要素が一切ないので、これでは何を考えているか伝わらないパターンだ…。)
私は時々会話が機械的というか、事務的になってしまう。こういうところの不器用さで、高梨に親近感が湧いたというのもあった。
「まぁ、結城さんや私と友達になっていつも一緒なら色々助け合えるでしょ?」
朝倉が一般的な友人同士言語に翻訳してくれた。
人間的にに言えば、そういうことなのである。
「じゃぁ、あだ名。あなた今日からパクチーね。」
「…え?」
高梨が困惑する。
「味について賛否両論の存在をあだ名にする結城さんのセンスにドン引きだよ!」
朝倉も困惑してた。
「名前、香菜でしょう?これ中国語でパクチーを意味するわ。」
「由来も小学生男子のイジりレベルで酷かった…?」
「え、名前覚えて…?」
高梨がちょっと驚いた表情をする。
「…私はパクチーとは呼ばないからね?」
朝倉にはリジェクトされた。
「よろしくお願いするわ、パクチー!」
「…こちらこそ…。」
高梨は気にしていないらしい。いや、本物のパクチーを知らないだけかもしれないが。
その様子を見て「うん、若いねぇ」と朝倉母がニヤニヤしているのに、私は気づかなかったことにしておいた。




