第十話「普通の事実」
私は眩暈がした。情報量の土石流で脳が埋もれて窒息しそうだった。
なぜか私より教室を後に出たのに、私の家に先にいた結城雪から語られた内容を整理すると以下の通りだった。
①私がコンビニ前で捻り上げたヤンキーが次に狙っていたチビと言うのが結城雪だった。
②結城雪はヤンキーの攻撃を躱してスルーしたが、高梨香菜は脅迫され万引きを強要された。
③高梨香菜を保護するためコンビニからタクシーを使って離脱した。
④避難先にうちを選んだ。
⑤母が結城雪と面識があった
…というか、『とある重要顧客』案件の通信暗号化の要件がチンプンカンプンで友人のSEに相談したら「じゃぁうちの娘貸すよ」と言って派遣されたのが結城雪だったため『とある重要顧客』についてなんとなく察しがついている模様。
「結城さんに頼んだ、その暗号化通信って…?」
「SHA256とか4096ビットとか、TLS1.3とかPGPとか…聞いたことある単語ばっかりだけど私にはお手上げで。」
母が肩をすくめている。
「ああ、それね。それもそうよね。構築指示書というタイトルがついているのにただの要件定義書だったわよ。それも全部英語で書いてあって、『こんな感じで通信する』としか書いてなくて、設計については具体的なことは何も書いてなかったわ…。重要顧客さん、依頼先を篩にかけたかったんじゃないかしら?」
「…え……。」
うちの家業、実は結城雪によって支えられていたの…?
情報量の火砕流に巻き込まれて、私の脳は爆発した。




