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閑話「白山くん家のモーニング」

 その日の白山くんは7時起きだった。


 少し早いのは昨日徹夜覚悟で回していたおまもりガチャの結果、想定よりだいぶ早く狂化2、それも業鎧2のスロ4-1-1という途方もない神おまを引いてしまった結果、気絶するように眠ってしまったから。


 部屋の真ん中にはふわふわのカーペットが敷かれ、ドレッサーにはプチプラからデパートまで溢れんばかりのコスメコレクション、片隅では空気清浄機がフル稼働。


 未開封のプラモや読みかけの漫画が積まれていた半年前の実家のお部屋とは大違いの女子力である。


 なんならパジャマは私とお揃いのジェラートピケの猫耳ふわもこパーカーだし。



「んん……ぁ、今日三限までじゃん、らっきー」



 それから猫っ毛なのにボリュームも出せる奇跡的な黒髪にヘアオイルを馴染ませて軽く梳かした後、まだ少し眠い目を擦りながらリビングの方へ出る彼女。


 この時間になると大体白山くんのパパもといお義父さんが朝ごはんを作り終える。


 白山くんがリビングへ出ると「今日は早いな」と彼女は出迎えた。



「おはよ、父さん。父さんこそおしゃれしちゃって、どっか行くの?」


「いいだろう? オフィスカジュアルってやつだ。色々対応もまとまったみたいだから、今日から父さんも出勤だ」


「へえ。てかほんと父さん料理上手になったよね」


「まあな。せっかくなら見てくれも良い方が色々楽しいし」



 そう言って会心の出来のパンケーキをピースと息子のピースと一緒にレンズに収める、キュロットパンツに白いブラウスをまとったお義父さん。


 今年47歳になるはずの彼女は広報の後輩に誘われて絶賛setlogにお熱なのだ。


 「親子早起き」なんてシンプルなメッセージが「母娘」じゃないのは最後のプライドなのかどうか、それについてはまだ調べる気は沸かない。



「「いただきまーす」」



 そして2人はダイニングテーブル……じゃなくてテレビ前のソファに座り、膝の上にお皿を乗せ、朝の情報番組やらを垂れ流しながら食べ始める。


 白山くんはともかくとして、お義父さんの方はかなり肉体の方に精神年齢が引っ張られている感じがある。


 これがTSか。



「後で髪の方頼んでもいいか? くるりんぱハーフアップで頼む」


「了解。わたしのドレッサー使っていいよ」


「ありがとう、セイ」



 そして朝ごはんを食べ終わると、2人はそのまま白山くんの部屋へ。


 お義父さんがドレッサーの椅子に腰掛けてもうだいぶ慣れた手つきでメイクする間、これまたすっかり馴染んだ手つきで髪をセットする彼女。


 「メイクいらずの美少女」と「メイクで化ける」というのは両立する概念であって、主張の強くないナチュラルメイクを施したお義父さんは恐ろしくクオリティが高いだけで何かのキャラクターのコスプレなんじゃないかと疑ってしまうほどに。


 流石は白山くんの遺伝上の父親である。


 言い方はちょっとアレかもだけど他意はないので勘弁して欲しい。


 ちなみに彼女の指先に施されているのは言われたら気づくレベルの綾波レイの概念ネイル。


 どうやら青春時代を彩った推しらしい。


 思えばパパとママもちょっと前にシンエヴァを見に行っては号泣しながら帰ってきたことがあったし、まあそういう世代なんだろう……って、もうこんな時間か。


 私はテーブルの上のそうめんを口に詰め込んでめんつゆで流し込み、「行ってきます」と部屋を出る。


 目的地はと言えば当然お隣。


 私はチャイムを鳴らした。



「おはよ、白山くん」

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