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From.4.1「NoMAくん先輩とイツキちゃん」

「戦友だと思ってたやつがっ……!!また先に卒業しやがったぁ〜〜っ!!」


「またすか。駕籠野先輩」



 目の前に座る顔の良い後輩、黑谷は俺の嘆きを軽く聞き流しながら特大のプリンパフェを口に運ぶ。


 日本人離れした水色の髪、翠色の瞳と間違いなく俺達筋肉同好会の顔面偏差値向上に一役買っているであろうこいつは一足先にデカパイ彼女と済ませて卒業済み。


 先輩というものを舐めてるらしい。



「もう今月入って3度目っすよ、それ。先輩もいい加減自分から手を出したらどうなんすか?氷室先輩、僕の白山ちゃんに負けず劣らずのエッグい身体してるじゃないすか。男共どうせ狙いまくってますって。あの身体で男装女子は無理あるって早く教えたってください」


「そこが良いんだろ、分かってねぇなぁお前。イケメン女子にでっけえ乳付いてんだぞ?これ以上に得なことあるか?」


「駕籠野先輩、いくら今をときめくトップアイドルとしてもドン引きされるレベルの性欲っすね。その辺のファンでも引っ掛けてきたらどうすか?……反転したらこんなにも見るに耐えない感じに……いや、結構あっちの世界もそんなもんか……」


「それは人間として駄目だろ」


「じゃあ諦めてください」


「でも……俺だって童貞捨てたいんだよ……っ!!俺だけ、共学で、高三にもなってっ……!!なんでまだ俺だけS◯Xの味が知れないんだよ……っ!!」


「チェンソーマンみたいっすね。そんなにS◯Xの味でも知りたいなら今すぐ上履き脱げばどうですか?履いてますよね、靴下」


「お前暴力に訴えかけるぞマジで」



 そう、俺は今絶賛片想い中。


 相手は幼馴染、同じく私立冬ヶ丘学園高校三年F組の氷室イツキ。


 2008年1月14日産まれ、身長171cm、体重63kg、家族構成は両親と兄一人、この前の中間の学年順位は43位/277人、趣味は読書、お絵描き、音楽鑑賞、特技はハーモニカ、日課はヨガと父親とのドライブ、使ってるコスメブランドはキャンメイク、悩みはそのデカパイのせいでオーバーサイズじゃないとTシャツなんかが捲れてしまうことと市販の可愛い下着が少ないこと……



「これ男が言ってると元よりヤバさのレベル跳ね上がりますね」


「なんか言ったか?」


「いや、何も」



 そしてイツキはいわゆる男装女子というか、顔だけならどっちかというとおっぱいのついたイケメンに分類されるタイプ。


 表情はとろんと穏やかなことが多いが、顔立ち自体はかなりシュッとしたイケメン女子という感じで、中1くらいの時は男子以上に女子からキャーキャー言われてた記憶がある。


 その後成長期が来た結果、クラスどころか学年でもトップクラスのわがままボディに進化したわけだが、そんなことは正直どうでもいい。


 いや、どうでもよくはない。


 感覚としては一目惚れしたソシャゲのキャラの性能が環境トップだったと言えば分かりやすいか。


 要は別にそうじゃなくても良かったけどそれも付いてくるならお得だよね、といった感じだ。


 どれくらいかというと、この前共演したHカップのグラビアより間違いなく、自信どころか確信を持って大きいと言えるくらいの爆乳である。



「で、良いんすか先輩。必死こいて仕事の合間縫った時間で学校来て、やることが後輩に性欲全開の相談とか。おっかけのおばさま方が見たら大泣きっすよ」


「お前に分かるかよ……性欲まみれの芸能界で一つの頂点に上り詰めながら未だ純潔を貫いてる俺の気持ちがよぉ……!!」


「この前の犯人役の時よりもえげつない表情っすね。そんなんじゃNTRどころかBSS……どころかDSSっすよ」


「なんでエヴァ行った?んで、その心配はねぇよ。むしろ寝取る側も泣いて逃げ出すサイズだぜ俺んは」


「ド下が過ぎるだろ……そこまで後輩に言える余裕あんだったらさっさと告ってきてください。性別反転してるんでもっと悲惨な状態っすよ、今の先輩」


「何との比較だよおい」


「いえ、何でもないっす。それより……ほら」



 黑谷が指を差すと同時、「お〜い!」と聞き慣れた声がカフェテリアの入口の方から聞こえてくる。



「ノマく〜ん!待たせちゃってごめんね!」


「あ、いや、全然大丈夫。イツキこそ疲れてんだろ。何か頼むか?」


「いいよ、帰ろ帰ろ。今日からせっかくのお泊りなんだし、ぱっと買い出し終わらせちゃってさ」


「……あ、うん、そうだな。黑谷、愚痴代だ。ここの会計俺が出しとくわ」


「お、あざ〜す」


「それと黑谷くん、白山ちゃんは購買の方だよ。スケッチブック買うからちょっと遅れるって」


「了解っす。だったら僕の方から行くんで」



 「んじゃ失礼します」と足早に去っていく黑谷。


 会計を終えて外に出ると、イツキはさもそれが当然かのように手を繋いできた。



「今日、ノマくんのパパもママもいないんでしょ?晩ご飯、何にしよっか?」


「あ〜、晩ご飯。俺……そうだな、奮発して鰻とか?」


「鰻!いいね、私も食べたい!」



 ……よし。


 そろそろ……覚悟、決めるか。

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