別2話「文化祭」
「おい!ここの漫研、中高大で300人超えてるらしいぞ!30年くらい続いてて、この前の夏コミとかシャッター前だって!」
「星のカービィ同好会でーす!!1/1スケールメタルジェネラル展示してまーす!!」
「パパー、わたし、おすもうさんたちみにいきたーい」
「カジノー、カジノー、カジノはいかがですかー。大教室Aにてエヴァ15は10台、シンエヴァ、リゼロ2、まどマギ3は5台、その他機種やスロットも揃えてまーす」
「空手部、柔道部、ボクシング部、キックボクシング部、バリツ部の異種格闘技戦午後の部まもなく始まります!!」
大体2時手前。
仕事を白山さん達に引き継いで一段落した俺は、ノマちゃんと一緒に他の展示を見て回っていた。
毎年大盛況の文化祭。
いつもの見知った騒がしさとは違う騒がしさがなんとも心地よく響く。
『氷室、そっちの調子はどうだ?』
『お陰様で大繁盛。そっちこそどうなんだよ、丹波』
『こっちはすげーことになってんぞ。石黒が一点賭け三連チャンしてBのうまい棒300本掻っ攫った』
『マジで?』
『マジマジ。お前も終わったんなら来いよ。雀荘荒らしに行こうぜ』
『すまん。俺今駕籠野と回ってんだわ』
『了解。楽しめよ』
「あら、誰かからのお誘い?別に行ってきてもいいわよ」
「いいって。せっかくノマちゃんが時間作ってくれたんだし、お互い一人で回んのも寂しいだろ」
「イツキの癖に分かってるじゃない。そしたら次、ナタデココ並ぶわよ」
そう言って俺の手を引いてスタスタと歩いていくノマちゃん。
俺は大人しくそれに従いながらも、つきまとう違和感について彼女に問いかけた。
「えっと……一つ、二つ……三つくらい聞いても良いか?」
「良いわよ」
「えっと……一つ目。なんでノマちゃん、そんなギャルチックな感じになってんの?フェイスペイントマシマシだし、珍しく髪下ろしてるし」
「身バレ防止。言っとくけど、本当ならあたしはあんたと一緒に文化祭を楽しんでられないくらいの人気者なの」
「……俺、やっぱ麻雀行ってこよっか?」
「そうは言ってないでしょ!?……これでほんのちょっとバレにくくなって、少しくらいならあんたと遊ぶ余裕が出来るってこと。せっかくの文化祭だもの、あたしだって楽しみたいのよ」
「そりゃそうか。……で、二つ目。なんで俺もお揃いのフェイスペイントされてんの?」
「そりゃこういうのは誰かと一緒にやる方が楽しいからに決まってるじゃない。似合ってるわよ、イツキ」
「いや、でも俺はあんまこういう、陽キャな感じなのは趣味じゃないっていうか……」
「普段からあんなファッションしてるのに?傍から見ればあんたの属性、ダウナーギャルよ」
「……まあ、いいや。で、ラストなんだけど。……なんで俺、男装させられてんの?」
いや、男装はおかしいか。
俺、男だし。
いや、でもメイクはいつも通りで……
待って。
俺は今どういう状態なんだ?
「イツキ。質問するならちゃんと整理してからにしなさい」
「一個増えた。俺、どういう状況?」
「簡単よ。まず氷室イツキって男子高校生がいて」
「うん」
「そいつが日頃から女装して共学の姫してるじゃない」
「知らないあだ名出てきた」
「で、文化祭だから共学の姫に男装させてるわけ」
「……?」
「要は、今のあんたは男装女子のコスプレをしてる男子高校生。分かった」
「……男装女装男子?」
「そういうことね」
「で、それはなんで?」
「あたしの趣味。ってか、基本的にみんな女装男子も男装女子も好きなんだから混ぜ込んだらもっと好きに決まってるでしょ」
「それ男子でよくね……?」
「は?殺されるわよマジで。女装男子が男装してることが大事なんだから」
そんなことを話しながら、いつの間にか会計を終えたノマちゃんはナタデココパフェを二つ受け取り、そのうちの一つを俺へ渡す。
「あれ、ノマちゃん、お金……」
「いいわよ。良いもの見せてもらってるし。それよりほら、次はプラネタリウムね」
「え、いつの間に整理券取ったの?」
「アメ達からのプレゼントよ。あいつら、中々気が利くんだから」
そして俺はまた、楽しげなノマちゃんに手を引かれていった。




