裏18話「当日」
最近、白山くんに対してとある疑惑を抱くことがある。
「黑谷ちゃん、おは〜♡や〜っと文化祭だね!」
そう、白山くんホントに元陰キャオタクだったのか疑惑である。
白山くん、体育祭といい文化祭といい、やたらとイベントごとでテンションが上がるタイプ。
実行委員をやるわけじゃないけど、なんか手伝いを頼まれたらノリノリで引き受ける、みたいな。
昔からとにかくクラスの中心に入ることを避けてきた私からしたら、「すごいなぁ」と冷笑抜きで思える。
時刻は現在6時前。
こんな時間から開けてくれているありがたいコンビニで朝ご飯とおやつとデザートと甘味とスイーツを買ってから学校へ。
周りを見るとそんな冬ヶ丘生で溢れている。
……あ、今更だけど、この私立冬ヶ丘学園は中高大の一貫校。
私達より下の生徒も普通にいるし、後輩の手伝いやらで朝早くから登校してる大学生も。
殊勝。
「黑谷ちゃん、この時間帯って口数少ないよね。低血圧とか?」
「私さ、夜型なんだよね」
「あ、そうだった……」
◇◇◇
ということで私達はいつものように図書研究部……ではなく中庭に面した多目的教室へ。
毎度のことなんだけど、割と早めに来てる気はするのにどうして私達がラストのことがほとんどなんだろうか。
そんなことを考えつつ教室へ入ると、そこでは大慌てで駕籠野先輩が何かの準備をしていた。
「どうかしたんですか?駕籠野先輩」
「ええそうよ!どうかしてたわ!こんな大事なことなんで忘れてたのかしらあたし!?」
「えっと〜……氷室先輩、これは……?」
「まあその……あれっすね。自分らが思ってた以上にノマちゃんの落語って価値ヤバかったらしくて……」
「外部向けのネット整理券も告知直後に消し飛んだわ!大至急炎上回避のライブ中継確定よ!事務所に無理言ったわ!」
「おお」
「なにがおおよ!」
だけど……なるほど、ライブ配信。
これは新しい問題が出てきてしまった。
そう、白山くんの可愛さ全国にバレちゃう問題である。
ここままじゃ最高に可愛くて最高にえっちなSSR越えてUR越えてUSSR越えてLRな私の彼女が駕籠野先輩目当ての視聴者に見つかってしまうし、最悪の場合私や甘神ちゃんがいるのも込みで、大学ではフットボールサークルやらテニスサークルやらに入りそうな色黒金髪のチャラ男が入部を試みてくるかもしれない。
……あ、でももしかしたら氷室先輩トラップに引っかかって超面白いことになる可能性もあるのか。
ウェルカムチャラ男。
「……黑谷ちゃん、また変なこと考えてる?」
『大正解!!』
「待ってそのデカいプラカード何?」
「宣伝で使おうと思って。私が好きなように文字変えれて便利なんだよ」
『便利です、自分』
「自我持ってるタイプ?」
……とまあ、こんなことはさておいて。
実際には白山くんの可愛さが全国規模でバレたり、それが元でスカウトが来たり、それが原因でジャンルが変わったり、みたいなことは絶対ない。
なぜなら、私がそうならないような方向に軌道修正する魔法を世界に掛け続けているから。
詳しい説明は省くけど、とにかく白山くんが絶世のウルトラスーパーデラックス美少女だっていう事実と、白山くんが何故か一向に芸能界デビューしないという事実は両立する。
こんな私の努力によって今日も可愛い白山くんは読者の元へ送り出されるってわけ。
みんな、感謝の高評価とか星とか忘れずにね。
「で、阿須加先生。私達何やればいいですか?」
「そうね……あ、図書館の方からもう少しバザー用の本持ってきてもらえる?和菓子屋さんがおまけしてくれちゃったからもうちょっと数用意できそうなの」
「了解で〜す!」
そして私は阿須加先生から鍵を受け取り、白山くんと2人で図書館へ。
どこもかしこも着々と準備が進んでいて、文化祭開幕の瞬間はすぐそこまで迫っていた。




