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第48話「開幕、文化祭(その1)」

「外部向けの観覧席の整理券配布は終了いたしました。ただいまの時間は通常席の整理券配布となっております」


「嘘!?まだ開場から10分経ってないのに!?」


「大変申し訳ありません。こちらSNSでも告知していた通り、半数は事前予約となっておりますので」


「ああ思ったよりもガチだ……」



「お姉さんめっちゃ美人じゃん!!シフト終わったら俺と遊び行かない?」


「自分、XYだけど大丈夫すか?」


「初めてやったポケモンの話?」


「いや、性染色体の話っす」



「NoMAちゃ〜〜ん!!!」


「こっち向いて〜〜!!!」


「ああもう……差し入れはありがたく受け取るわよ。それとあんた達、せっかく文化祭来たんだからうち以外にも色々楽しんでいくのよ。みんな色々頑張ってるんだから。いい?」


「「「「「は〜〜い!!!」」」」」


「駕籠野先輩、優しいですよね」


「人は滅多なことじゃないと自分を好きでいてくれる人間のこと嫌いにならないわよ」



 想像の、10倍くらい忙しい。


 あ、五七五だ……じゃなくて。


 受付を甘神ちゃんに任せ、それ以外で全力でホールを回す。


 ファンを上手くいなすNoMAちゃん先輩、そういうフェロモンでも出てるのかってくらい来るナンパを撃ち落とし続ける氷室先輩、よく考えたら図書館はちゃんと開けとかないとじゃんってことで往復してる阿須加先生……そんなみんなの間をすり抜けながら、わたし達はひたすらドリンクと和菓子を運んでいた。



「ねえねえ黑谷ちゃん、わたしって超絶美少女じゃん?」


「そうだね。得も言われぬって感じ」


「だよね。なのにナンパされないの、おかしくない?」


「おかしくないよ。だってそういう魔法掛けてるし。ほら、胸とか太ももとかに飛んでくる視線はなんとなく分かるでしょ?」


「まあ……それでゾクゾクするしいっか」



 そんなことを考えつつバックヤードで休憩していると、甘神ちゃんがひょこっと姿を現した。



「白山ちゃん、ご指名が入ってますよ」


「それってキャバクラみたいな?」


「ちょっと待っててください」


「あ、行っちゃった」


「戻りました。キャバクラみたいなやつだそうです」


「マジで?」



 ……っていうか、こんな言い方してきそうな人間、数えるくらいしか知らないんだけど……。



「白山くん、もしかしてさ」


「うん、これ多分……」



 悪い予感というか良い予感というか、名状しがたき予感がしてわたしは受付の方へ向かった。



「まあ。精進していますね、セイ」


「やっぱ母さんだった……」


「本が読めるカフェだと聞きました。せっかくですから、少しゆっくりしていってもいいですか?」


「あ、いいよ。ちょうど今は席空いてるし……本、何にする?」


「そう……ですね。このラインナップなら……夢野久作をお願いします」


「親に読んでてほしくない作家過ぎる」


「いえ、別に好みというわけではないのですが……昔、教科書で読んだ記憶があって。せっかく学校に来たわけですから、少しノスタルジーに浸ろうかな、と」


「へえ、いいんじゃない。じゃあこれと……ドリンクセット選んで」


「……まあ、ドクターペッパー。でしたらこれと、水まんじゅうでお願いします」


「ドクペに水まんじゅう……!?っていうかいつの間にメニューにドクペが……!?」


「美味しいよね、ドクペ」


「それはほぼ出頭だよ黑谷ちゃん」



 そしてわたしは本と席札を母さんに渡し、水まんじゅうとドクペを取りに行った。


 ……?


 ……あれ?


 待って。


 ……教科書に、夢野久作……!?

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