第47話「引っ越し」
「セイ、一つ大切な話があるんだが」
「何?父さん」
「もう少ししたら、ここを引っ越すことになりそうなんだ。ほら、来年から母さん達もこっちに越してくるだろ?」
「あ、そっか。アオも冬ヶ丘入る感じなんだっけ」
「そういうこと。実は前から業者さんとも相談しててね、春休みには引っ越すことになりそうだよ。……そうそう、場所は歩いて10分くらい……少し駅近になるかな。学校にも通いやすくなるよ」
「へ〜」
◇◇◇
そして翌日。
わたしは黑谷ちゃんに連れてこられたカードショップで懐かしいデュエマを触りながらそのことを話していた。
「ってな感じで、来年辺り引っ越すことになったんだよね」
「それって公園の方の?」
「あ、そうそう。知ってるの?」
「だってあの辺開発してるのパパの会社だし。……へぇ、引っ越しかぁ……」
「……あ、黑谷ちゃん呼ばれてるよ。決勝戦始まるんじゃない?」
「みたい。ま、さくっと勝ってくるよ」
「さくっとって規模感じゃないけどなここ……」
◇◇◇
そしてさらに黑谷ちゃんが性格の悪いハンデスデッキで見事優勝を決めた翌日。
「白山くん、私も引っ越すことになったんだ」
「マジでやってんね黑谷ちゃん」
「ほら、《《丁度》》お隣が空いてたから。またご近所さんだね、白山くん」
「……ちなみに今回は……?」
「使ったよ。ガッツリ」
へ〜。
こんなに「悪びれもせず」って言葉が似合う表情あるんだ。
まさに満面の笑み。
まあこうなると思ってはいたけど。
「あれ、白山くんは嫌だった?私がお隣さんなの」
「ふふっ、大丈夫。ちゃんと嬉しいよ」
「良かったぁ。一緒にあいさつ回りしようね、白山くん」
ということでこの距離感が継続確定したところで家に帰ると……
「まあ。お帰りなさい、セイ」
「お邪魔してまーす」
そこには何故か母さんとアオの姿が。
どうかしたのかと尋ねると、母さんはクスッと笑って答えた。
「ほら、明後日から冬ヶ丘の文化祭でしょう?せっかく3日間もあるんですから、3日ともお邪魔しようと思いまして。いえ、邪魔をするつもりはありませんが」
「アタシもそんな感じー。てか受験生たるもの志望校の下見くらいトーゼンでしょ笑」
「あ〜、そういう……で、父さんは?」
「ピザとケンタッキーを取りに行かせています。クラスの人気者だったあのカイトさんを使い走りに出来るなんて……ふふっ、嫁入りした甲斐がありました」
「いっつもヤバいこと言ってんね母さん」
「あ、ちなみに向こうで2人の時もずっとこんな感じだからマジでおもろいよ、マジで」
そんなことを話している内に、ピーンポーン、とインターホンが鳴る。
父さんかな。
「出るよ」とわたしは少し早歩きで玄関の方に向かった。
「……っと。これで全部かな」
「おかえり、父さん」
「ああ。ただいま、セイ。聞いたか?黑谷さんもうちの側に引っ越すんだってさ。引き続きご近所さんだね」
「らしいね。……あと、父さんに一個だけ聞きたいんだけどさ」
「なんだい?」
「……父さん、なんで母さんと結婚したの?」
「ふふっ、簡単だよ」
父さんは笑って答えた。
「よくある話さ。母さん、クラスで一番大喜利が上手かったんだ」
?
「ほら、早く行こう。チキンが冷めてしまう」
「あ、父さん、それ意味変わる……」
??
???
……え、大喜利????




