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第56話「黑谷ちゃんの黒歴史」

「え、ウソ!? この回消したはずでしょ私!? ダメダメ、ダメだって!!」


「はいはい、意味分かんないこと言って抵抗しない。体力測定で一番スコア低かった人が中学の卒アル見せる約束でしょ?」


「誰なのそんなこと言い出したやつ!!?」


「黑谷アメという方でございますが」


「死ね!!」


「自分じゃん」


「話くらい聞きなよ黑谷ちゃん」


「でもやだ……カッコつけてるくせにバチクソぼっちなのバレるのやだ……てか白山くんこそ見られたらヤバいんじゃないの……!? よく乗ったねこの勝負……」


「だって黑谷ちゃんに負けるわけないじゃん笑」


「躊躇ない煽りでございますね」


「いや、おかしいの、そっちだから……普通の人は50mで10秒とか切れるはずないのに……!」


「女子高生の平均が9秒とかだよ?」


「そ〜そ〜、私9秒とか小1で切ってたし〜」


「いやまあ流石に4秒台で走る人外みたいなのは置いといたとしてもさ、黑谷ちゃん50m13秒はおかしいって。4秒台で走る人外みたいなのは置いといたとしても」


「せーちゃんせーちゃん、そっちが遅いって可能性はない?」


「あるわけないじゃん。ソフトボール投げ70mとかだったよね七夕ちゃん」


「弱めのゴリラでございますか?」


「……で、話を戻すんだけど。黑谷ちゃん弱くない? 平均越えたやつある?」


「長座体前屈」


「ああ……」


「冷笑やめて」



 今更だけど、今日は図書研一年のメンツin黑谷ちゃん家。


 黑谷ちゃんが言い出しっぺの体力測定の比べ合いで見事黑谷ちゃんが惨敗したため、卒アル公開の義務を負った所なのだ。


 ちなみに黑谷ちゃんがクラスの女子の中だと下の下、わたしが中の下から下の上、甘神ちゃんが上の下、七夕ちゃんが男子込みぶっちぎりトップといった感じ。


 黑谷ちゃん、その場のノリでなんかやるの止めたほうがいいと思う。


 わたしはため息を吐きながら、こっそりと彼女に耳打ちした。



「そんなに嫌なら、魔法、使えば?」


「でも……ここでまた魔法使うのようなの、白山くん嫌いでしょ……?」


「うん、嫌いになっちゃうかもなぁ……?」


「……じゃあ、無理。我慢する」



 そして何度か深呼吸し、やっと覚悟を決めた黑谷ちゃんは部屋の奥から一冊のアルバムを引っ張り出してきた。



「開けていい?」


「……どうぞ」


「んじゃご開帳〜!」


「wktk」



 ノリよくアルバムを開く七夕ちゃん、それを覗き込むわたしと甘神ちゃん、床に倒れ込んで顔を手で隠す黑谷ちゃん。


 そこにあったのは真っ白な寄せ書きのページと、今からは考えられないほど攻撃的というか、近づきがたい雰囲気を纏ったショートウルフの黑谷ちゃんの姿だった。



「え、顔良……え、イケメン過ぎない……?」


「せーちゃん面食いよな〜笑 てかほんとに全部一人じゃん、あめちゃん写ってるやつ」


「シャニカマでございますね。シャイニーカマーズでございます」


「でもせーちゃんの気持ち分かるわ〜、いやこの顔でトゲトゲオーラ出してたら近づけないけどガチ恋湧くよこれ〜! これでギターは絶対隠れファンバカほどいたと見るね」


「……てかさ、黑谷ちゃん、こんなのが黒歴史でいいの?」


「……え?」


「そりゃ分かるよ? 隠したいのもさ。でも、今わたし達いるんだから良くない? 黑谷ちゃん、ちゃんと厨二病卒業できたんだし、もうぼっちでもないし」


「白山くん……」


「あ、せっかく寄せ書きが白紙なら勝手に書いてしまいましょうか。まのさば行きますまのさば」


「あっ、わたしも書く!」


「ウチもウチも!」



 3人が押し詰め合って、白紙の寄せ書きはまたたく間に絵チャの会場に。


 

「……みんな、ありがと」



 素直じゃないお礼が聞こえてから、黑谷ちゃんもそこに参戦した。

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