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第57話「100話目ですよ100話目」

あり得ないタイトル

「おめでとー」


「おめでとー……え、何のお祝い?」



 夜景が綺麗なレストランの個室。


 わたしは黑谷ちゃんとモクテルの入った細いグラスで困惑気味に乾杯する。


 彼女は「やっぱ細いのは全然入ってないね」なんて幾何学詐欺を嘆きながらグラスを空にして言った。



「白山くんの身体測定がとんでもないことになった記念、あとついでに連載100話記念」


「また知らない話して……待ってなんで結果知ってるの!? わたしカイちゃんにも見せてないんだけど!?」


「カイちゃん……あ、父親をちゃん付けまで堕ちた? 万事快調だね」


「いいから! 何で知ってるの!? どこで見た!?」


「私、全部見れるんだけど?」


「ああもう忘れそうになるなぁガチ魔法使い!」


「165cm、59kg、上から112の63の97……これ全年齢向け主人公の数字じゃないよ? あ、今はもうR-15だけど」


「ねえそういう話!? わざわざ個室のレストランまで来てそういう話しに来たの!? わたし、ちょっとおしゃれしてきたくらいなんだけど!?」



 「パパが急遽行けなくなっためちゃ高レストラン行かない?」と連絡を受けて最近伸ばしてる髪も巻いて、アイテムも出来る限りフォーマルになるように合わせて、わりかし緊張して挑んだ中、出迎えたのはまるで夜中の買い食いのような長ズボンに体育祭Tシャツの黑谷ちゃん。


 舐めてんのかと叫びそうになったが、黑谷ちゃんはそもそもうっすら……うっすら?


 うん、うっすらで行こう。


 ガッツリ人生を舐めている感じの人間なので、こんなところで明記されてもいないドレスコードを要求しても冷笑で終わってしまう。


 まあ、魔法、見た目、実家という三種の神器を持ち合わせる黑谷ちゃんには敗北なんてないんだろうけど。



「ねえ結局ガッツリになってるじゃん。ガッツリなのはメインディッシュのステーキだけでいいんだって」


「こういうお店って、ガッツリじゃないと思うよ……?」


「いーや、ガッツリだね」


「失礼します、メインの特盛ガーリックステーキ(450g)&ガーリックシュリンプ(30尾)をお持ちしました」


「ほら」


「急にアメリカンにならないでよ」



 え、ここフレンチレストランだよね……?



『メイン:シャロレー牛ザブトンのコンフィ』



「ねえ魔法じゃん黑谷ちゃん!?」


「ガーリックシュリンプにはおろしにんにくが合うよね」


「合うわけなくない!?」


「ほら」


「あっ、美味しい……じゃなくて!! ほんと、どこでも黑谷ちゃんのペース変わんないね……」


「まあ、そうだね。白山くんに比べたら変わらないよ」


「? わたし?」


「うん。これは普通に聞いてほしいんだけど、私、近くで見れて嬉しいんだよ。白山くんが女の子になってくの。言い忘れてたけど、そのお礼もしたかったからさ」



 そう言って普段の煽り癖の抜けた、素直な笑顔を浮かべる黑谷ちゃん。


 ほんと、黙ってたら完璧なのに。


 いや、おしゃべりも含めて黑谷ちゃんなんだけどさ。


 そんなことを考えながら、わたし達はもう一度乾杯した。

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