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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
集団暴行事件編

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フランソワーズさんと俺達

 俺達の前にさっそうと現れた飛鳥君は臆することも無くこの男たちに向かって威嚇をし始めた。

 元魔王を自称しているのは何の冗談なのだろうと思っていたのだけれど、こうして見ると明らかに人数的に不利な状況なのにもかかわらず虚勢を入っているのが魔王らしいといえなくもないように思えた。

「なんだその態度は。途中から割り込んできて何抜かしてんだ。コラ」

「樫本。俺の話に割り込むなって言ってるだろ。次に割り込んだらまた顔の傷増やすぞ」

「ご、ごめん。気を付けるよ。だからさ、俺の顔に傷を付けるのはやめてくれよ」

「わかってるよ。俺もやりたくてやってるわけじゃないからな。お前がバカだからちゃんとわかってもらえるように仕方なくやってるだけだからな」

 樫本の顔の傷はケンちゃんが付けたという事なのだろうか。バカだからわかってもらえるように仕方なく顔に傷を付けるという行為の意味も分からなかったが、もしかしたらケンちゃんも頭が良さそうに見えてバカなのかもしれないな。

「いきなりやってきたお前さ、なんか態度デカいよな。俺は俺より偉そうなやつを見ると無性にムカついてしまうんだよな。だからさ、あんまりそんなデカい態度盗らない方が良いよ。これは忠告じゃなくて命令だからな。命令だから、逆らうと罰があるからな」

「すまん、何で吾輩がお前ごときに命令をされなくてはいけないのかわからないのだが。その理由を教えてもらえぬか?」

「だからよ。俺より偉そうにすんなって言ってんだろ。殺すぞ」

 普通は殺すぞというのは威嚇であって攻撃の合図ではないと思うのだが、ケンちゃんは飛鳥君に殺すぞと行った時にはもうすでに飛鳥君の二の腕を殴っていた。顔やお腹ではなくなぜ二の腕なのかと思っていたのだが、意外なことに飛鳥君は殴られた場所を抑えながらうずくまってしまった。

「吾輩の考えが甘かったかもしれない。こいつらは危険すぎる。だが、二人は吾輩の命を懸けてでも守るからな」

 一体何があったのかわからなかったが、二の腕を押させている飛鳥君の手から血が流れているように見えた。薄暗くてちゃんと見えているわけではないのだが、飛鳥君の腕を伝って地面にぽたぽたと血が落ちていたのだ。

「その怪我はどうしたの。いったい何があったの?」

「何があったってお前もバカか。血が出てるって事は刺されたって事だろ。それ以外ないだろ。お前も樫本と一緒でバカなのか?」

 普通に考えて鼻を殴られて鼻血が出るのは分かるが、二の腕を殴られて血が出るというのは想像出来ないだろう。仮に刃物を持っていたらあんな風にすんなりと殴らせないで避けると思うのだ。そこがどうしても理解出来ずにいた。

「何があったんだって顔してるけどさ、この状況を見てまだわからないかな。お前のお友達は俺が殴ると思ってたら刺されたんだよ。それだけの事だから、深く考えなくても良いよ」

 飛鳥君には悪いと思うのだが、俺はこの状況を切り抜けるだけの力も知恵も無い。出来ることと言えば、俺が壁になってフランソワーズさんを守りながら人気のある場所まで逃げるという事だけだ。それ以外に二人が助かる可能性はないだろう。うまく行ったとしても飛鳥君はただでは済まないと思うけれど、フランソワーズさんを逃がしたら助けにくると決めた。これだけは絶対に守ると決めたのだ。

「飛鳥君には悪いと思うけど、俺がフランソワーズさんを守りながら走るからフランソワーズさんはコンビニまで走って行ってよ。人気の多いところまで送り届けたら俺はここに戻って飛鳥君を助けるから。大丈夫、俺を信じて欲しい」

「それは無理だと思いますよ。私の見立てですと、将浩さんがあの二人の間を割って突破する事は不可能だと思います。あちらの四人の間も同様に無理ですね。かと言って、他に将浩さんが突破できそうな場所も無いですし、将浩さんの計画は最初の段階で破綻しているんです。ですが、そんな事をしなくても将浩さんが無事に帰れる方法があるんですよ」

「俺の事は良いからさ、フランソワーズさんが無事に帰れる方法を探そうよ」

「それでしたらご安心ください。私はどうやっても無事に帰れますから」

 フランソワーズさんは何故か持っていた止血用のゴムバンドを使って飛鳥君の腕から滴り落ちていた血を止めると、そこに手のひらサイズの絆創膏を貼って包帯を巻いて治療していた。どうしてそんなものを持っているのだろうかと思っていたのだが、こんな時間に外に出たら怪我をするかもしれないと思っていたからだそうだ。本当にそんな理由なのかはわからなけれど、飛鳥君の刺された傷はいったん落ち着いているようだ。

 俺は飛鳥君の近くに行って一緒にフランソワーズさんを逃がすための作戦を伝えようとしたのだが、そんな俺の思いとは裏腹にフランソワーズさんはケンちゃんの前へと歩いて行ってしまった。

「そんな物まで持ってるなんて用意周到だね。ますます気に行ったよ。それに、よく見たら美人でスタイルもよさそうだな。そんな奴らと仲良くしてないで俺達と仲良くしようぜ」

「そうだそうだ。ケンちゃんの言う通りだ。でも、一番最初は俺にやらせてくれよ。な、いいだろ?」

「順番は後で決めればいいさ。俺も外人は初めてだしな。俺達の事をたくさん楽しませてくれよ」

 ケンちゃんは目の前にいるフランソワーズさんを掴もうと左手を伸ばしてきた。その顔は先ほどまでの冷静で落ち着いたものではなく、ゲスな人間が見せるいかにもと言った表情になっていた。

 しかし、フランソワーズさんはケンちゃんの伸ばした手をさっと交わしてそのままケンちゃんの横に回ると、耐性を入れ替えながらも右手で左肩を左手で手首を掴んで強烈な足払いを繰り出した。力が入っていたら足の骨が折れてしまうのではないかと思うくらいに強烈な一撃が綺麗に入ったのだ。足払いと同時にケンちゃんの左肩を掴んでいた手をフランソワーズさんが離して左手首を持っている左手をそのまま引くと空中で完全にバランスを崩したケンちゃんは右半身から地面に叩きつけられるように落下していた。

 左手を掴んだままフランソワーズさんはケンちゃんの体を飛び越えると、そのままつま先でケンちゃんの顔面を何度も何度も蹴り続けていた。

「全く下品な人ですね。あまりにも下品すぎて虫唾が走ってしまいました。でも、こうして顔面を攻撃しておけば理解してもらえるんでしたよね?」

 こちらからはケンちゃんの顔がどうなっているのか見えないのだけれど、その周りにいる男たちは完全に引いてしまっているようだ。

「私を楽しませてくれると言ってましたが、これから楽しませてもらえるんですかね?」

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