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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
集団暴行事件編

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元魔王颯爽登場

「おいお前、こんな時間にコスプレメイドの外人を連れて歩いて何のアピールしてんだよ?」

 俺はフランソワーズさんと一緒に歩いていることをアピールしているつもりなんてないのだけれど、考えてみればメイド服を着ている外国人女性と一緒に歩いているというのはおかしなことなのかもしれないと思ってしまった。だが、俺にはフランソワーズさんと一緒にいるという事を周りに自慢しようなんてつもりは一切なかったのだ。言ってみればこれは向こうの被害妄想でありただの僻みやっかみなのである。でも、そんな事を面と向かって言うほど俺はバカではないし無謀でもないのだ。

「何だよ、黙ってちゃお前がどういうつもりでこんないい女にコスプレさせてるのかわからないだろ。何も言うことが無いって言うんだったら、俺達でこの女を貰っちゃうけど良いよな?」

「いや、貰うとか意味わかんないし」

「は、何言ってんの。聞こえないんですけど。もっとはっきりと聞こえるように言ってくれなきゃ俺達わかんないんだけど」

 顔にやたらと切り傷がある男に凄まれてしまい、俺は少し怖気づいてしまっていたようで一歩後退してしまった。

「おいおい、こっちはただ質問してるだけなのにビビってんじゃないって。俺達は何もお前に喧嘩を売ろうってわけじゃないんだよ。ただ、なんでこんな時間にこんな場所でこんないい女にメイドコスプレをさせて歩いているのかって聞いてるだけなんだよ。だから、それに答えろって言ってんだろ」

「樫本、それくらいにしとけって。その子が怖がっちゃってるだろ。お前はただでさえ怖い顔しているんだからあんまり怖がらせるなって。ごめんな、こいつバカだから質問の仕方とか知らないんだよ」

「ケンちゃん、あんまり俺の事バカとか言うなよ。頭は良くないけど喧嘩は強いんだぜ」

「頭が悪かったらバカだろ。喧嘩が強かったとしてもそれは喧嘩の強いバカでしかないって事だ。良いからお前らは少し黙ってろ。今から俺がこの子に質問するんだからな」

「でもよ。俺はその外人メイドに興味あるんだよ。なあ、俺が一番でいいだろ」

「だからお前は喋るなって言ってんだろ。俺の命令が聞けねえのか?」

 顔面傷だらけの樫本は何か言いたげだったのだが、ケンちゃんと呼ばれている物腰の柔らかい話の分かりそうな男の一喝で他の男たちも含め全員が口を開くのをやめていた。最初は話の分かる人なのかと思ってみていたのだが、後ろにいる人達の様子を見た限りでは一番危険な男なのかもしれないと思ってしまった。

「それでさ、君は何でこんな時間にメイドさんを連れてこんな場所に来たのかな?」

「それはですね、コンビニに買い物に行った帰りにここらへんを通って帰ろうと思っただけで」

「コンビニか。コンビニは便利だよね。いつでも空いてるし君は中学生化高校生だと思うけど、君くらいの子が欲しいものなら大抵はコンビニにありそうだもんね。でもさ、ここを通って帰るって言ってたけど、コンビニに行くときにはここを通ってないよね?」

「通ってないですけど、帰りはこっちの方を通ろうかと思ってて」

「そうなんだ。でも、この辺は気を付けた方が良いよ。噂だと、この辺は危ない男たちがいて女連れで歩いてたら襲われちゃうって話だからね」

「それは知らなかったです。次から気を付けます」

「うーん、残念だけどさ、君には次は無いかな」

 ケンちゃんの言葉を待ってたかのように全員が俺を見ながら笑っていた。勘の悪いやつでなければ気付くと思うのだが、こいつらは俺をボコボコにしてフランソワーズさんを襲おうとしているのだ。この場所に行きたいといったのはフランソワーズさんではあったが、それを拒まなかった俺にも責任はあるはずだ。いや、俺の心のどこかでこっちのほうに行けば昌晃君を襲ったやつの仲間がいるんじゃないかと思っていたのだ。実際にこの人達が昌晃君を襲ったのかはわからないが、どう見ても無関係な人がこんな場所にいるとは思えなかった。

 だが、この場面で俺がとるべき選択は何だろうか。ここでの選択は絶対にミスをしてはいけない。俺の選択一つでフランソワーズさんが無事に帰れるかどうかがかかっているのだ。絶対に失敗をしてはいけないので、俺はこれから何をするべきか慎重に考えていた。

 どうにかしてフランソワーズさんだけでもこの場から逃がしたいと思っていたのだが、俺の正面にいるケンちゃん以外の人達は俺とフランソワーズさんが逃げ出さないように道を塞いでいるのだ。塀を乗り越えて逃げようと思っても塀の先は自動車専用道なので車にはねられる危険性が高い。かと言って俺が何人かと戦って道を切り開いてフランソワーズさんに逃げてもらおうとしても、俺がその何人かと戦ってどうにか出来るとは思えなかった。年齢が違うという事もあるだろうが、どこからどう見ても俺よりも弱そうな人はいないし、俺よりも強そうなくせに鉄パイプやナイフを持って威嚇してきているのだ。こんなのどうやったって勝てるわけがない。

「すいません。俺の力じゃフランソワーズさんを無事に家まで送り届けられるかわからないです。なので、俺はコンビニ方向にいる二人をどうにかするんでその好きにフランソワーズさんだけでも逃げてください」

「私だけ逃げるなんて出来ないです。それに、旦那様から将浩さんも守るように仰せつかってますので。旦那様に逆うようなことは出来ませんし、将浩さんが自分の手を汚すような事はしなくても大丈夫ですよ」

「そんなの気にしなくていいですから。俺が死ぬ気で道を切り開きますんで、その隙にフランソワーズさんは走って逃げてください」

「ですから、私は将浩さんを置いて逃げることなんでしませんよ。むしろ、将浩さんが逃げてくれた方が私的にも助かるのですが」

 淳二さんからの頼みだからと言ってこんな奴らに捕まってしまったら大変なことになってしまうだろう。俺のせいでフランソワーズさんが穢されてしまうのは避けたいところではあるのだが、俺があの二人をどうにか出来るとも思えないのだ。

 こんな時に昌晃君の時のようにパトカーが通ってくれればいいのにと思っていたのだが、そんな偶然が起こることは無かった。その代わりなのかわからないが、駐車場側から近寄ってくる大きな影が見えていた。

「どうした。こんなところで男に囲まれて。友達ではないみたいだが、こいつらが昌晃を襲ったやつらか?」

「昌晃君を襲った人かはわからないけど、良い人ではないと思うよ」

「そうか。では、吾輩がお前たち二人を助けてやる。二人には返しきれない恩があるからな、絶対に無事に帰してやるからな」

 飛鳥君の態度の大きさとあまりにも自然に男たちの間を通り抜けていたのだ。そのまま俺とケンちゃんの間に割り込んだ飛鳥君は時々見せる怖い人の感じを出しながらケンちゃんに話しかけていたのだ。

「吾輩の友達に何か用か。用があるからこうして囲んでいるのだろ。何の用事か言ってみろ」

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