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「冒険ガイド」が神スキルだった 〜戦闘も生産も経営も全部このスキルで楽しみ尽くす!〜  作者: 水無月 平良


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思考する受付嬢

 

 受付嬢にとって人気というのは意外と重要だ。


 何件の事案を処理したか、というのは特に業績として見られることはないが、有望な探索者と親しくしておくと良いことがあるのだ。


 例えばフリーの探索者を企業が引き抜こうとするとき、間に探索者ギルドが入るのが通例であるが、その時引き抜き対象の探索者と面識がある受付嬢が担当者になることが多い。


 そして、その業務に対してそれなりの額の特別手当が出るので──企業がギルドに払う仲介料の一部だ──それを目的に探索者と親しくしておこうとする受付嬢が後を絶たない。


 その慣わしに私──藤原千尋(ふじわらちひろ)は正直うんざりしていた。


 いや、正確にはその慣わしに、ではなくその慣わしに関連した一部の受付嬢の行動にであるが。


 特別手当を目当てに探索者とのパイプを作ろうとするのは良い。

 でもそれは例えば正確性や速さ、言われていないところまで気がつくサポート力など、仕事の内容で探索者に認めてもらうことで築く関係性であるべきだと思う。


 決してこの同僚のように色目を使ってやるようなことではない。


「藤原さーん。この間探索者になった海斗くんって知ってますー? あの子のスキルめっちゃ強いらしくてー。ティア7か8ぐらいありそうなんですってー」


「それってあなたの所によく並んでる子?」


 自慢したくてわざわざ来たであろうこの同僚は、適当にあしらっても結局は喋りたいことを喋るまで気がすまないだろう。

 それならさっさと話を終わらそうとあえてこの同僚が求める方向に話を進める。


「そうなんですよー。けっこう若いから初心でかわいくて。そう言えば藤原さんの所にも海斗くんぐらいの初心者のもう一人の子よく並んでますよねー。なんか野菜を配ったり変わってるみたいですけど、スキルの話は全然聞かないので残念な感じだったんですかねー?」


 どこか小馬鹿にするようなその笑みを見て、自慢をするだけじゃなくてこれが言いたかったらしいと察する。


「どうかしらね。スキルに関しては特に相談されてないからわからないけれど」


 そう淡々返す私が面白くなかったのか「へー」と適当な相槌を打ちながら彼女は離れていった。


 そんな彼女の後ろ姿を見ながら、私は表情に出なかった自分を褒めながら、話題に上がった新人探索者のことを考えていた。


 彼女がよく担当する有望らしい探索者のこと──ではなく、私がよく担当する変わってると言われた方の探索者のことだ。


 正直私も始めはあの同僚の彼女と同意見だった。


 ダンジョンに入ってから出るまでが速く、換金額的にも一日三体程度の分のみ。


 あまり良いスキルではなくすぐに探索者を辞めてしまうのだろうと予想していた。

 スキルに関して相談されなかったのが不思議なくらいだった。


 それから他の探索者に野菜を配っているなんて話を耳にして、変わった人だという印象は追加されていたが、探索者をすぐ辞めてしまいそうだという予想に変わりはなかった。


 それががらりと一転したのがこの間私が担当した換金の時だった。


 彼が換金したのが二階層の魔物の素材だったのだ。


 私がいる派出所から近い墓ダンは一階層も二階層もスケルトンであるが、その素材がどちらのものであるかは査定機にかければはっきりとわかる。


 ダンジョン序盤の二階層といえども一階層とは魔物の強さが大きく異なる。


 二階層の魔物を倒せるということは、すなわち彼がLv.2に上がったということだ。


 私の記憶では彼を初めて見たのが一週間ほど前。


 もし、それが彼が初めてスキルを獲得した時期と同じなのであれば。


 彼は一週間というトップ探索者でも聞いたことがないようなとんでもない速さでレベルアップしたということになる。


 もちろん、私がそれまでたまたま彼を認識できていなかったとか、彼が今まで別のギルド派出所で換金してたとかは考えられるけれど。


 さっきの同僚も彼が初心者探索者であるという認識のようだったから、私がそれまで彼を知らなかったわけでもなさそうなのだ。


 換金についても自分の生活拠点の近くのダンジョンを潜ってその最寄りの派出所で換金するのが普通だから、引越しでもしない限り換金場所が変わることはない。

 そしてこの何をするにもお金がかかるダンジョン都市で一階層や二階層で活動する探索者が引越しをするのはあまり考えられない。


 それらの可能性を考えて、もしかして、と思ってしまう。


 彼が今まで聞いたこともないような成長速度のスキルツリーを獲得していたのだとしたら。


 彼が望むと望まざるに限らず、周りが彼を放っておかないだろう。


 しかし、今その可能性に気づけているのはおそらく私だけだ。


 幸い彼は今のところ私が担当できている。

 換金するだけでなく、ダンジョンや装備についてなど一日一回は会話をしている。


 私も受付嬢の特別手当の制度自体は、悪いことではないと考えている。

 せっかくこんな機会が転がってきたのだから、みすみす逃すつもりはない。


 もちろんその手段は仕事内容で納得してもらうことによって、だ。

 そこだけは譲るつもりはない。


 そう思いながらふと、私は想像してしまった。


 彼の実力が明らかになった時、あの同僚はどんな顔をするのだろうか、と。




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