表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
KILARe:  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/20

第15話

 荒野の風が砂を激しく巻き上げ、夕陽の残光が地平線を染めていた。

 乾いた土の匂いが鼻を突き、遠くの木々が揺らめく中、キラリの体からあふれ出す青白い気光が空気を震わせた。

 それは奔流のような力の具現化だった。

 ただの光ではなく、星屑の記憶を宿した銀河の渦巻きのように、荒野全体を包み込み、圧倒的な気配が空間を支配した。

 指先一つで殺される予感が、セツジの肌を粟立たせ、トモエの息を止めた。

 マシロの倒れた体が、かすかに震える中――七つの国の秩序を崩す八人目の魂が、ついに目覚めた瞬間だった。

 その瞳は、澄んだ少年のものではなく、果てしない宇宙の深淵を映すように、冷たく輝いた。

 刀の刃に宿る気光が脈動し、銀河の腕がゆっくりと回転するかのように、荒野を照らし出した。

 セツジの額に汗が伝った。

「まじか……目覚めちまったか!」

 男の叫びが震えを抑えきれず、柄を握る手が白くなった。

 民の国の九本刀として、初めての恐怖が宿った。

 それは魂の深淵を覗き込んだような絶望だった。

 セツジは歯を食いしばり、刀を振り上げた。

 セツジの一閃がキラリの喉元へ迫った。

 だが、少年は人差し指と中指でそれを受け止めた。

 奔流が指先から溢れ、刀身を優しく包み込み、衝撃を吸収した。

 刃が止まり、セツジの腕が震えた。

 金属の軋む音が荒野に響き、指の感触は冷たく、しかし鋼のように固く、刀の勢いを一瞬で殺した。

 その唇がゆっくりと弧を描き、少年の面影が薄れ、代わりに古の文人肌の武士の余裕が浮かんだ。

「ふむ。見事な肉体だ。よく研がれている。刀など振るったことはないが、体が勝手に全て教えてくれるな」

 声は低く、しかし響き渡った。

 それは少年のものではなく、雪原で息絶えた男の響きだった――吉良上野介の残魂が、隕石の旅路を終え、再びこの体に宿った瞬間。

 セツジの声が震え、刀を引こうとするも、指の力が離さなかった。

「お前……何者だ……!」

 男の瞳に、七つの国の秘密を知る者としての絶望が広がった。

 均衡の守護者たちが、隕石の魂を宿す七人。

 八人目が目覚めれば、世界は再構築される。

 セツジの額の汗が滴り落ちた。

 少年の目が、初めてセツジを捉えた。

「私か……? 私は吉良上野介。縁あって、助太刀に参った」

 言葉に、風が一瞬止まった。

 トモエの呟いた。

「キラリ……? お前、なにを……」

 彼女の瞳が見開き、短刀を握る手が震えた。

「キラ……ここで仕留める!」

 セツジの蹴りがキラリの胴体へ迫った。

 着物の裾が翻り、一撃が骨を砕く勢いで迫った。

「ふむ。肩慣らしといこう」

 キラリは刀を手放し、一瞬で四閃を放った。

 指先から放たれる気光の刃がセツジの足に刻まれ、肉を裂き、骨を砕いた。

 赤い飛沫が夕陽に溶け、セツジの足がばらばらと崩れた。

「ぐああっ!」

 男の悲鳴が荒野を震わせ、土に膝をつき、着物が血に染まった。

「くそっが……この力、化け物かよ!」

 セツジの横薙ぎが首を狙った。

 残った手で刀を振り、風圧が砂を巻き上げた。

「ここまで差があると、つまらんな」

 キラリは一瞬で後ろへ回り、体が加速し、擦れ違いざまに二十を超える刀撃を加えた。

 気光の奔流がセツジの体を切り刻み、着物が無数の裂け目を刻まれた。

 血が噴き出し、幻の刃が空気を震わせ、荒野の草を薙ぎ払った。

 セツジの刀が落ち、地面に突き刺さり、土を抉った。

「これが隕石の力か……最後に戦えたのがお前で良かったぜ」

 男の声がかすれ、崩れ落ちた。

 体が土に沈み、息が止まった。

「これ以上は……体が……持たぬか」

 キラリの体から青白い光が収まった。

 気光の粒子が散り、少年の体が重く傾いた。

 刀が手のひらから滑り落ち、土に転がった。

 覚醒の代償が体を蝕み、少年の意識が闇に沈んだ。

 トモエも、流れ落ちる血の色を目に、体がガクンと震えた。

「きゅー……」

 小さな悲鳴を上げ、意識を失った。

 マシロのうめきがかすかに響いた。

 三人の体が倒れ伏した。

 八つ目の隕石が目覚めた瞬間――七つの国の魂がキラリの覚醒で軋んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ