↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
425/441

学院2年サラサ編 第八十五章 ルーメンの誕生日④ リリィの含み

食事の後、リリィ先生が「そろそろお風呂にしましょうか」と言った。

俺はいつも通り、魔術でお湯を張り、先に浴室を使わせてもらうことになった。

シャワーを浴び、湯船に浸かると、全身の力が抜けていく。

今日は本当に濃密な一日だった。エアリスとの未来への約束、リリィ先生からの現在の守護。二人の愛の形は対照的だが、どちらも俺には欠かせない大切なものだ。

ぼんやりと考え事をしていると、不意に浴室の扉が開いた。


「えっ!?」

驚いて振り返ると、そこにはバスタオル一枚を体に巻いたリリィ先生が立っていた。

湯気の中で、彼女の白い肌が艶かしく光っている。普段は研究者としてキリッとしている彼女の、無防備で扇情的な姿に、俺の思考は停止した。

「リリィ!? ど、どうしたんですか?」

「ふふ、驚かせてごめんなさい。背中を流してあげようと思って」

彼女は悪戯っぽく微笑みながら、ゆっくりと近づいてきた。

その瞳は潤んでいて、どこか熱っぽい。拒絶する隙も与えず、彼女は当然のように洗い場に座り、俺の背中に触れた。

「い、いいえ、大丈夫ですよ! 自分で洗えますから!」

「遠慮しないで。今日はルーメンの特別な日ですから、これくらいさせてください」


リリィの手つきは優しく、そして丁寧だった。

スポンジが背中を滑るたび、彼女の指先が肌に触れ、そこから体温が伝わってくる。

俺は硬直したまま、されるがままになっていた。

「ルーメン……」

「は、はい」

「私の身体、どうですか?」

唐突な問いかけに、心臓が跳ね上がる。

「え?」

「石化病が治って、傷跡も消えて……綺麗になりましたか?」

彼女は俺の耳元で囁くように言った。


振り返ると、そこには不安と期待が入り混じったような表情のリリィがいた。

病に侵されていたかつての自分を乗り越え、今の自分を認めてほしい。女として見てほしい。そんな切実な願いが、痛いほど伝わってきた。

「……はい。とても綺麗です、リリィ」

「そうですか。なら……もっとよく見てください」


次の瞬間、彼女は立ち上がり、体に巻いていたバスタオルの端に手をかけた。

するりとタオルが床に落ちる。

隠すもののない、彼女の裸身が露わになった。

絹のような白い肌、柔らかい曲線の体、お湯に濡れた艶やかな髪。湯気越しに見えるその肢体は、芸術品のように美しく、そして生々しいほどに女性的だった。


「リリィ……!」

「見ていいんですよ、ルーメン。あなたに見せるために来たんですから」

彼女は恥じらうことなく、真っ直ぐに俺を見つめていた。

その瞳には、もはや師匠としての威厳はなく、ただ一人の男を求める女の情熱だけが燃えていた。

「……っ」

俺は言葉を失い、ただ彼女を見つめ返すことしかできなかった。


すると、リリィはそのまま湯船に入ってきて、俺に抱きついてきた。

滑らかな肌の感触、柔らかい胸の弾力、甘い香り。全てが俺の理性を吹き飛ばすには十分すぎた。

「ルーメン、お誕生日おめでとうございます」

「リリィ……」

「愛しています。もう、我慢できません」

彼女は俺の首に腕を回し、唇を重ねてきた。

それは昼間のエアリスとのキスとは違う、もっと濃密で、むさぼるような大人のキスだった。

俺もまた、彼女の情熱に応えるように、強く抱きしめ返した。

湯気と熱気が充満する浴室で、俺たちの境界線は溶け合い、一つになっていった。


湯気と熱気が渦巻く浴室で、俺たちは互いの存在を確かめ合うように、長く、深い口づけを交わした。

時が止まったような錯覚。世界には俺とリリィ、二人しかいないように感じられた。

けれど、永遠に続くかと思われたその口づけを、リリィ先生の方からゆっくりと解いた。


「……はぁ、はぁ……っ」

彼女の肩が激しく上下している。

濡れた髪が頬に張り付き、瞳は潤みきって、その顔は見たこともないほど艶めかしい。

俺もまた、息を荒らげながら彼女を見つめ返すことしかできなかった。

今にも理性のタガが外れそうになる衝動。それを必死に押し殺しているのは、俺だけではないようだった。

リリィは、俺の胸に額を押し当て、乱れた呼吸を無理やり整えるように深く息を吸い込んだ。

そして、顔を上げると、悪戯っぽく、けれど慈愛に満ちた瞳で俺を見つめ、囁いた。


「ルーメン……お誕生日、おめでとうございます」

「……ありがとうございます、リリィ」

「ふふ、顔が真っ赤ですよ? ……でも、ごめんなさい。この続きは……また、あとですね」

彼女はそう言って、甘く微笑んだ。

その言葉には、「大人になるまで待つ」という意味なのか、それとも「今夜のベッドで」という意味なのか、含みを持たせた響きがあった。

彼女は床に落ちたバスタオルを拾い上げ、優雅な仕草で体に巻き直すと、最後に俺の頬へ、今度は羽根のように軽いキスを落とした。


「先に部屋で待っていますね」

濡れた足跡を残し、リリィ先生が浴室を出て行く。

パタン、と扉が閉まる音が響き、俺は再び湯船の中に一人残された。

静寂が戻った浴室で、俺は自分の胸に手を当てた。心臓が痛いほど脈打っている。

エアリスとの未来の約束。

リリィとの現在の誓い。

14歳の誕生日は、俺の人生にとって忘れられない、重く、甘く、そして幸せな一日となった。

俺は湯船に深く沈み込み、二人の愛の重みを噛み締めながら、赤くなった顔を冷ますのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。