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めんへら  作者: 津島時雨
4/6

変動

その年、五年生の担任は最悪な人でした(今になってみれば六年生の担任よりかはましですが)。一日に何度も怒るような人でした。その人は新しく配属された人で、氏素性を知らなかったものなので、それを知ってからは毎日学校に行くのが面倒になっていました。その先生が分かるようになって数ヶ月したころ、転校生が来ました。可哀想。そう思いました。


その人、龍久先生は怒るとき、それが子どもにとって怖いと思っているのか、なまった口調で怒るのですが、全然怖くないのです。しかし、それで泣くやつがいたのです。私には幼馴染が二人いて、その内の一人、臼井、という男子です。そのあと先生は臼井に向かって「お前は成長する」と声をかけていたのです。私はつくづく馬鹿らしい、と思っていました。人間が泣いて成長するのであれば誰だって偉くなれるし、幸せになれる。


また、その先生はかける言葉が割りときつく、一人の生徒を不登校にさせるほどでした。実際、その時学級委員長だった私も、いやみを言われ、いらついて一日ずる休みをしました。


その年は私が一番自殺を図った回数が多かった年でした。先生からのそういった圧力のせい、だけではありません。私と姉は六歳の差がある、それは、姉は去年高校にあがった、ということです。問題はそこではなく、行った高校にあります。姉が通っている学校は、県内で一番頭が良い高校だったのです。


それが何を意味するか、そう。私がこれまで以上に比べられる。親からではない、周囲の大人から。


「瑞希ちゃんが頭良いなら、さぞかし亜希ちゃんも頭が良いんだろうねぇ。」


父と母は、


「いや、瑞希より頭が良い」と更なる圧力をかけてきました。


そんな事があり、四月のはじめ、家に誰もいなくなったときに私は一回目の自殺を図りました。定番の首吊りです。しかし、失敗。縄が切れたのです。


もう一回。そう思ったとき、ちょうど親が帰ってきました。こうして、私は生き延びました。


五月になり、桜が満開になったころ、地域の祭りに転校生と行きました。そこで、私は転校生、愛依めいが転校してきた理由を知ります。


いじめと親の離婚。ありきたりな理由でした。でも、私は真剣な表情をつくろってその話を聞きました。そうしていると、クラスメイトのHが向こうから歩いてきました。そこからは興味がなくどう発展してそうなったのかは覚えていませんが、うろ覚えな記憶でHと愛依が喧嘩をしていました。


Hを蹴りながら愛依が「お前なんか死んでしまえ」と言い、Hが「何でこの学校に来たんだ」と言い。くだらない喧嘩で、見てて眠くなりました。


愛依がその後私に泣きながら、

「なんでいじめられて転校してきたのに、そこでもいじめられるの?」と言ってきました。


私は涙を流しました。同情の涙ではなく、その愚かさに。なぜ転校すればいじめられることはないと思ったのか。環境ではなく、本人の性格そのものを変えなければ愛依はそれに気付けないでしょう。


それから一、二ヶ月経ち、先生に親からの苦情が殺到していたころ、二回自殺を図りました。どちらも失敗に終わりましたが。縄を変えてみたり、かける場所を変えてみたり、その年で十回は自殺を図りましたが、いずれも失敗に終わりました。


自殺で死ねない、と知ると、十月ごろ、私は自傷行為に手を出しました。腕が真っ赤になるくらい、びっしりと。いつばれてもおかしくないくらい。案の定また温泉でばれました。しかし、転んだ、でごまかせました。


その年から、私は一人称を「俺」に改めました。無性に、「私」でいることがつらくなったからです。でも、一人称を変えたくらいでは、本当の自分に戻れませんでした。作り笑いも、繕ったツボの浅さも、何もかも。ここから俺は、自分を偽ったことを後悔しました。

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