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シーン9!

「僕の妹に決まってるじゃないですか!!」


 背筋が凍った。

「マジすか」

「僕は妹が好き好き! だーい好き! もう他になしですよ!」

「うおおおおおおおおおおおおお――――――――!」

 俺は壊れた。

「だって、僕の妹たち、めちゃめちゃかわいいし、ていうか、世界一? キャー―――! もー言葉にできないほどパーフェクトなんですよ! チョベリグじゃね? 最高じゃね? 世界一じゃね? 両方ともモデルやってるし、怜なんか学問が優秀すぎて高校一年ながら、某アメリカの大学への進学が確定し! しかも、愛莉は愛莉でスポーツ万能、数々の著名チームからお呼びがかかってるんですよ。例えば、例えばですよ! 陸上、水泳、柔道、剣道、空手、サッカー、バスケット、ホッケー、スケート、体操、ゴルフ、ビリヤード、チェス、将棋、後は、後は…………」

 くねくねしながら妹のノロケ話を淡々としていく愚民であった。

 …………終わった。

 俺は、今崖っぷちじゃない。崖から落ちているのだ。

 過度のシスコンの恋をサポートしなければならないのか、俺は!

 クソッ! 元はと言えばあの悪魔上司のせい……

 頭が真っ白だぜ……

「燃え尽きた…… 俺はもう燃え尽きたよ。あ、後はお前に託した……ぜ……」

「アモルさん!?」

 ここで俺のプロデュースは終わり――――たかったのだが、余計帰れなくなるのがオチなので、なんとかするしかなかった。

 

 俺は上手く愚民を丸め込み、気を取り直して愚民の学校に付いていくことにした。 

 愚民の家は、かなり学校から近かった。というか、二軒ほど家を通り過ぎ、横断歩道を渡ったところでもう 「香閣学院」 に到着だ。

 外装は何とも一流私立校という感じである。校舎は基本的にガラス張り、残った壁は全面的に白一色で染まっている。

 今の時刻が丁度登校時間のゴールデンタイムらしく、生徒がごった返しになっている。

 下駄箱を通り抜け、愚民のクラスまでの階段を上がっていく。

 それは四階にある階段のすぐ隣にそのクラスが位置するらしい。

 愚民はドアを左にスライドさせ、俺がまずクラスに入るのを確認した後、俺に続くようにして入った。そして、最後にドアを閉めるのも愚民だ。

 こいつは俺の姿や声もろとも、他の人間には感じ取ることが出来ないことを知っているからか、俺に全く物をふれさせようとしない。

 かなり賢明で自然な配慮だ。

 ……なんか、逆に先行されるとやりづらいな。突っ込みどころが少なすぎる。

 もっと、ドタバタ感が欲しいな、第三者である俺としては!

 因みに愚民の席は窓際の最後尾。

 程よく温かい日差しが射し、窓の向こうに広がっている噴水広場と色とりどりの花々を眺めながら思考を委ね、妄想に浸りながら、巧に立たせた本を盾として、まどろむことを許された、至上最高の昼寝場である。

「お前…… いいとこ行ってるんだな」

「まあ、奨学金ですよ」

 まるで俺がいないかのように横っ面を向けたまま、そして、あたかも独り言のように返事をした。席に着いたらすぐさま本を開く姿勢も、まるで俺が透明人間みたいな扱い方だ。

「授業始めるぞ――!」

 そんなこんなで一限目が始まった。


「……ヒマだ」

 じっとしていることがまずありえない俺は、先生のチョークを隠すという地味ないたずらを仕掛けながら、そう呟いた。チュークのストックは多いのでこんなことをしても不毛なことは知っているのだが。

 もう一限目が過ぎ、二限目に入った。

「ぐ~~み~~ん~~~、絡んでくれ~~~~~」

「…………」

 愚民は黙って黒板を書き写している。

 嫌に冷たい。

 俺は教室中に響き渡る声で叫んだ!

「おーい、みんな―――! 本庄拓哉はメイドが好きだ――――! チョー好きだ――!」

「おい!!」

 やっとかまってくれたぜ。

 その代わりに愚民は教室中からの注目の的となっている。

 愚民は赤面しながら席に座った。俺は愚民の席の傍らに座り込む。

「な、何するんですか!?」

 やはり小声で俺に語りかけてくる。

「だってえー暇なんだけど~~~、チョーだるいって感じ~~~」

「何ギャル口調で話してるんですか」

「大体な、愚かな人間よ。ここの生徒は勤勉すぎる!」

「……そ、そうですか?」

「そうだ! 周りを見てみろ。机にお絵かきをしている者もいなければ、回し手紙をしている奴らもいない。授業そっちのけで男女和気あいあいとお喋りしたり、チョッカイ出したりする奴らもいない! 全員が全員、カタカタカタカタ、カタカタカタカタ、キー――――――! ノートに黒板を書き写すだけじゃないか!」

「まあ、これが学校のあるべき姿じゃないですか」

 真に正論である。

「もういい! おい愚民、愛莉のクラスはどこだ」

「え? 二階の二年F組ですけど……」

「その 『にねんえふぐみ』 とやらを紙に書いてくれ」

「え?」

「いいから書け!」

 愚民は腑に落ちない様子でノートの切れ端にその 『にねんえふぐみ』 とやらを書いた。

「アディオス! アミーゴス!」

 そして、俺はそれを力ずくで奪い取り、クラスを出たのであった。


 俺は愚民が書き渡したノートの切れ端を頼りに、愛莉のクラスを探すこととなった。二階と言うことで、ある程度特定は出来たといえども、クラスが指では数えきれないほど存在している状況では探し当てるのはなかなか難しいのである。

 なぜなら、俺は字が読めないのだ。

 だから、俺はそのノートの切れ端に書かれた 『にねんえふぐみ』 と、ドアの上に書いている表札の形で何とか見つけ出そうとしたのだが、結果空しく、中々見つからない。

 探しているうちに休憩時間になってしまい、生徒がゾロゾロと、教室から我が先にと飛び出してくる。というか、発狂しているかのような空気を漂わせ、充血した眼のまま脱兎のごとく走り去っていく。中には俺の脚につまずき顔面を廊下にぶつけた人間もいたが、何事もなかったかのように起き、風のように去って行った。

 終電のラッシュよりもテンパっている彼らが向かっているさきは、どうやら同じ場所らしい。

 しかも、考えたらこの喧騒の当事者はほとんどが男子だ。女子もいるはいるのだが、そこまで校舎内で短距離走を行おうというクレイジーなお方は存在しないらしい。彼女らは自らの上品な風格を保ちながら、ゆっくり歩いている。

 ここで、俺の野次馬精神が働かなっかったら、それは俺じゃない。キューピッドは干渉するのがある意味仕事であり、生きがいだ!

 俺はいっちょ、その波にあえて飲み込まれてみることにした。

 彼らに付いていき、校舎を抜け、噴水広場を直進する。

 周りを見渡すと、やはり女子ばかり。男子の大部分はこの競争に参加しているらしい。愚民の姿は見当たらなかったが。

 最終的に行きたった先は、屋台らしい。

 実際その場にいて 「らしい」 で括るのは確かに違和感を感じられるかもしれないが、そこんとこはご了承を願いたい。というのも、脂汗でぎったぎったの男子軍の壁が、俺の視界を遮っているからだ。全く、もう醜いったらありゃしない。目が腐る。

 そのため、現時点では 「いい匂いするし、あー、多分屋台じゃね?」 みたいなノリでの推測でしかない。

 しかし、その壁も、休憩終了のチャイムが近づく同時に徐々に消えていく。

 そして、次第に姿を現していったその注目の的は、俺の推測が正しかったことを示していた。

 一つの屋台がチョン、と大体、正面入り口と噴水広場のちょうど真ん中ぐらいに設置されている。プラスチック容器と割り箸などの資材から、どうやら弁当を売っているようだ。しかしながら、鉄パイプと布だけで立てられた、その屋台は決してこの学校の気品に合ったものではない。

 ガサゴソ、屋台の裏で音がする。

どーも、はるまきです。

さて、第九話ということで、「学校」が出てきました!

定番中の定番ですね。

この場所がないと、もう小説は出来上がることはないでしょう!

まあ、そんなことはさておき。

読んでいただいて有難うございました!

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