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シーン10!

「ったく、男ってのはどんだけバカなんだ。たかが、弁当一つで屋台を潰す気か」

「貴方も男性なのに、面白いことを仰るのですね?」

 俺は振り向き、笑みを浮かべながら俺に語りかけてくるその女性を見た。

 ああ! か、可愛い!

 全体的に端正で清楚な顔立ちをしている、モラトリアム突入中の女の子、っていうイメージだ。ふっくらとしたか顔立ちでたれ目なのだが、大人のオーラを醸し出している。前髪は右と左、両方ピンで止めてあり、丸顔の肩まである黒髪のセミロングがとてもお似合いだ。

「あの!」

「はい、どういたしましたか?」

「俺と結婚して下さい!」

「ごめんなさい、私には心に決めた人がいますので」

 オワッタ…… 俺の恋が儚くも散ってしまった……

 ………………

 あれ……? なんか、とてつもなく重大なことを忘れている気がしないでもない。

 そうだ!

「お名前は」

「遠山一途(とおやまいちず)と申します。以後お見知りおきを」

「美しい名前ですね」

「それほどでもありませんわ」

「そんな、そんな、ご謙遜を。ご趣味は?」

「ゲートボールと、将棋、盆栽ですわ」

 コメントしづれえ趣味を出すなあ。

「あの、その…… ご、ご年配の方々の趣味が多いですね」

「よくジジくさいと言われますわ」

 そりゃそうだわ。

「そうですか。はっはっはっは」

 でも、まあ、笑顔が美しいなあ! なんていうか、夜に一人だけ輝いている月のような笑顔……この学校の男子生徒が魅了され、一途さんの弁当を殴り合いをしてでも勝ち取ろうとする精神が、徐々にわかってきたよ。

 ここで、最も重要なことを問いかけてみた。

「えーっと、あの、一途さん。俺のこと見えるんですか?」

「はい、もちろんです。どうかしましたか?」

「いえ、その…… 何でも」

 いかにも当然だとされると、調子が狂うな。俺が可笑しいのかな?

 そんなはずはない。

 愚民の教室の中でも、愚民以外誰一人俺に気づいた人間はいなかったじゃないか。

 ま、いっか。

 適当こそが俺のやり方だし。

「良かったら、今度買いに来てくださいね。温かいお弁当をご用意しておきますから」

 最後に一途さんは微笑みながら、そう言った。

 俺の答えは一つだ。

「もちろんですとも!」


 風呂から上がった後、俺はリビングの方に行った。

 湯船に浸かっている間、一途さんがなぜ俺のことが見えるのか、始終を思考を巡らせていたのだが、全くと言ってアイデアがない。

 一瞬、上司に聞いてみようとも思ったが、俺の手取りの給料が益々減ってしまうのを考慮し、止めた。

 つまるところ、考えることを諦めたわけだが、その途端に暇になってしまった。

 まあ、俺は四六時中起きているわけだし、愚民の部屋で時間を潰そうにしても、飽きる。昨日の時点で全てのエロ本をコンプしてしまったからな。現時点で、メイド服の種類の区別化をしろ、といわれたなら、俺は自信を持ってその作業を完璧に行う能力があると自負している。

 俺にとって 「寝る」 という行動自体、どのようなものか全く分からない。それと同時に、「夢」 ってのも理解が及ばない。でも、俺が、俺の身でその感触を味わうことが出来なくても、それは素晴らしいことだとつくづく思う。

 人間は目を閉じて、目を開けた瞬間、新しい世界が待っているのだから。何とも、贅沢な存在だ。俺たちにはそんな区切りなんてないし、「今日」 とか、 「明日」 とか、キューピッド界にでも有るんだろうが、本質上連続しているから別に気にしたことなんてなかった。「寝る」 ってことは身近なリセットみたいなもんなのかもしれない。

 リビングはなぜだか明かりがついていた。しかし、照明のような強い光ではなく、微かな光だ。

 俺はリビングに通じるドアを開ける。

「あんたね」

 黒ブチ眼鏡をかけた怜が、座りながら何やら書いている。

 スタンドライトが先ほどの微かな光の正体のようだ。

 俯きながら、何か物々言っている。ほのかに顔が赤くなっているようにも伺える。

 嫌な予感がする。

「お、おう……」

 俺もつい動揺してしまった。

「あんた、キューピッドでしょ」

「おうよ。偉大なるアモル様だ!」

 否定する訳がなかろう!

「ふ、ふーん……」

「……で?」

 裏があることは確かだ。

 そうじゃなきゃ、悪魔がキューピッドに話しかけるなどありえない。

「じゃ、じゃあ……」

「じゃあ?」

 次の発言で俺は驚愕の波に飲み込まれることとなる。


「私の恋を成就させてみなさいよ」


「にゃ!? にゃんつった今!?」

 こいつも人並みの恋とやらが出来んのか!?

 人間界ってのはわからんもんだ。

 赤面しながら俺の襟をグイッと持ち上げる。

「そこまで驚かなくてもいいんじゃないかしら! 私も一応女の子なんだから人並みに恋ぐらいはするに決まってるんじゃない! キューピッドでしょ! 私を両思いにさせてみろっていってんの!」

「俺はあのムッツリ変態愚民のフォローしろって言われただけだ! なんでお前のにも干渉せねばならん!?」

 正論をぶちかます俺。

「問答無用!」

「あ、痛!」

 鉛筆で俺の頭を叩いた。地味に痛い。

 しっかし、似てるんだよなあ、エロース様と。その、傍若無人っぷりが。

 対人運ってのは俺にはないらしい。やれやれ、やっぱりキューピッドがいるって思ってるんじゃねえか。

 こいつも初々しいぜ。

「ふん! じゃあ、明日の放課後、噴水広場ね」

「……来なかったら?」

「コロス」

 聞くんじゃなかった。

どーも、はるまきです。

今回は本編の第十話目です!

読んでくださってありがとうございました!

感想や評価もよろしければおいていってくださいね!^^

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