↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/29

シーン8!

「わーい! アモルちゃん一緒にいられるよー!」

「そうだねー、あ・い・り・ちゃん! 愛してるよー! ……・ガハッ!」

 両想い同士である俺と愛莉がお花畑をバックに抱き合おうと思った瞬間、後頭部から鈍器が思いっきり降りかかってきた。ガツンってレベルじゃねえ、「ゴリッ」 だ。分かるか? 「ゴリッ」 だぜ!

 怜め…… 加減を知らないにもほどがある。

「ねえねえ、アモルちゃん、因みにお兄ちゃんどうしたの?」

「ん? ああ、愚民か。あいつならまだ寝てる」

「ええ! アニキまだ起きてないの!? 通りで朝飯がまだ出てないと思ったら」

「お兄ちゃん遅刻しちゃうよー! 愛莉起こしてくる!」

 愛莉はリビングを飛び出し、階段を上っていく。愛莉はちょくちょく髪形を変えるのだが、ツインテールアンド制服姿もスゲーに合ってるなあ。そう自分なりに納得していたら、愚民の代わりに黙々と朝食の支度を始めている怜が声をかけてきた。

「わ、私はあんたのことキューピッドだなんて思ってないから!」

「……あっそ」

 声を荒らげて宣言した怜に、俺は興味なさげにそう返した。

「あんたをここに居候させるのも、愛莉が言ったからで、私は賛成してないの! ただ、ただ許可しただけよ!」

「まあ一応有り難いと思ってるよ」

 追い出されたら、どうこのミッションをクリアすればいいかわかんないし、途方に暮れるしかなかったからな。

「そ、そう……」

 ったく、そんなことかよ…… しかし、今の人間、今のご時世は、目に見えるもの、感じ取れるものしか信じなくなっちまった。幽霊信じないだの、サンタクロース信じないだの、神様信じないだの、キューピッド信じないだの、その他諸々。

 もう笑って流せるほど聞き飽きた。

 しかも、今じゃあ心は脳から作られる化学物資だってことにすらなってるらしい。創造者様も報われないな。

「ま、まあ、わ、わかればいいのよ」

「…………さて」

 俺は木製の椅子から立ち上がったと思えば、台所の隣にある冷蔵庫を開けて、朝に似合うものを物色することにした。おっ、紙パックに入った飲み物があるじゃないか。匂いからして…… コーヒーか? よし、間違いないな。これにしよう。

 次はコップだな。食器棚から、一番高価そうなヨーロピアン柄のカップを取り出した。隣のキッチンからだしの匂いが空気を伝って漂ってくる。

 それに代わって、何で怜は苦そうな顔をしてるんだろうな。この美味しそうなコーヒーが台無しじゃないか。仕方ねーな。

「まだ会って一日だ。俺もすぐさまキューピッドだって信用されることはハナッから期待してねーよ」

「…………そういうことじゃないのよ」

「ん、なんか言ったか?」

「何も言ってない!」

 変だなこいつも。ツンデレは全然いいし、俺の大好物だし、大歓迎なんだが、変人になったら俺のタイプから外れちまうぞ。ったく。

 俺は再び元の椅子に座り、コップにコーピ―を注いだ。そして、ゆっくり味わってみる。

 愛莉なかなか戻ってこないなー、と心配しながら待っていると、暫くしてやっと降りてきた。ていうか、愚民に至っては家の中で息が切れるほどの焦りようで走り込んできた。

「ご、ご、ご、ごめん! 怜! 本当にごめん!」

 全くホント何やってんだよ。これだけ俺を暇にしてくれて、なめてくれたもんだな、愚民ごときが。まあ、口には出さないがな。手を合わせて謝ってる輩に口出しするほどの度胸は、この高貴な俺でさえ持ってはいない。

 どうやら、朝食も完成したみたいだ。だし巻き卵、お浸しに味噌汁か。いい感じの和風の食卓じゃないか。

「朝食、出来ちゃってるんだね、本当にごめんね! 怜!」

「まあ、いいわ、たまには。アニキも昨日は色々あって疲れたから、長めに寝ただけのこと。まあ、たまには和風の朝食もいいかなと思ったから作っただけよ」

 チッ、俺には 「死ね」 とか言い放ってるくせに、愚民にだけスマイルを振りまきやがって!

 気に食わない奴だな、ホントに。

 ビジュアルがあるから許すけど。

「そ、そっか…… ありがとね、怜」

 既に制服姿の愚民は俺の隣の椅子に座り、俺と眼を合わせないまま、黙々と朝食をを口に入れていく。

 無愛想な野郎だな。

 愛莉も怜も、時間がないのか、かなりのスピードで食っていく。まあ、怜に至っては元々単に皿を汚すぐらいの量しか盛ってないわけだから、無くなるのが早いのは当たり前なのだが。

「ごちそうさま! 行ってきます!」

「私もごちそう様。先行ってるわ」

「行ってらっしゃい!」

 怜と愛莉が威勢のいい声とともに家を出ると、愚民は皿を洗い始めた。

 主夫の鏡だよ、お前は。

 そして、俺は愚民と二人きりになった。

 それは別に結構なんだが、この沈黙の時間が刻々と流れていく状況には適応できない自分が存在するのも事実である。

 何を話せばいいのか。無理してでも話題、話題を作らねば。

「愚民、お前シスコンだろ」

「ええ!?なんでいきなり!?」

 部屋の壁一面に妹の写真飾ってあったら、シスコン以外の何物でも無いだろう。

 気づかない方がおかしい。

「どうしてわかったんですか! も、もしかして、キューピッドなら分かっちゃうんですか、この愛が! 僕のあの可憐な妹たちに対する愛が!」

「ちょっ、身を乗り出すな。しかも、触るな! 濡れる、濡れるしスポンジの泡、俺の服に付くから!」

 む、むう…… ペースが乱れるな。

 ここで躊躇なしに肯定されるパターンは予想してなかった。

「よし、まず落ち着こう。皿を洗い終えてから語ろう」

 愚民は 「了解! アモルさん!」 と言ったらその後、瞬く間に残っていた皿を洗い終えた。言っておくが、残ってた皿は少なくなかったぞ。調理器具とか、トレイ容器とか、なんちゃらかんちゃらあったからな。

 なぜ俺がこのようなフォローするのかというと、それはもうこの上ないほど凄まじい速さだったということを伝えたいからだ。

「そう……か。お前は妹のことを愛している……と」

「はい!」

 皿洗いが終わった愚民は改まって俺の向かい側に座る。

「だから、妹たちの写真を壁にべたべた貼っていると」

「そうなんですよ! もう、愛しくて仕方がないっていうか…… デヘ~~」

「『デヘ~~』 じゃねえ! よfだれ垂らしてないで起きろ、眼鏡愚民!」

 はあ、これほどまでに兄妹愛 (こいつの一方的な側面が断然大きいのだが) が強いと、逆に呆れるよな。つーか、怖いだろ、一つ屋根の下で暮らすのも!

 よく共存できるよ、この家族。感心、感心……

 え、ちょ、ちょっと待てよ。なんか嫌な予感がする。

 昨日、こいつ、俺からまだ一つ答えてない質問があったよな。

 質問の内容は俺の運命の核心に迫るものだから、俺自身忘れることはないのだが。

「おい、愚民。昨日の俺の質問覚えてるか」

「デヘ~~……」

「よーし、屋根裏のダンボールの中にあった 『メイドコレクションEX2012』 を怜と愛莉の部屋に飾ろう!」

「はい、なんでしょうか、アモル様」

 面倒かけさせるやつだな。ったく。お前の妹に関する妄想は俺にとってのエロ本かよ。

「だ~か~ら~、昨日の俺の質問覚えてるかって聞いてんの」

「えーっと、何の質問でしたっけ?」

「あれだよ、お前が今好きな奴は誰だ、っていう話」

「ああ、途中で僕の最愛の妹たちが帰ってきたんですよね。あの時はごめんなさい」

「謝んのはいいから、さっさと答えを出せ」

 そう頬杖を突きながらクールに決めたつもりの俺だが、愚民のスマイルからどのような返事が来るのかを待つ際、生唾を呑んでいた。脂汗も止まることを忘れてしまったらしい。

 それもそうだろ? 万が一、「俺は妹が好き好き、だーい好き、もう他になし!」 ってことになったら、俺は、俺は…… もう、どうすればいいんだ! 兄妹間の愛を成就させるためのつなぎ役になれとでも言うのか!?

 百歩譲って、例えば人間界のタブー承知で兄妹愛をめでたくゴールインさせたとしよう! ハッピーエンドだ! ヒャッホー! パチパチパチ…………

 その時点で俺の出世は無くなり、消滅刑だろう。

 マジかよ~~~、嫌だよ~~~~、死にたくないよ~~~~!!

「あー、もちろん……」

 何だ! 誰だ!

どーも、はるまきです。

ようやくシーンが変わりましたね!

まあ、相変わらず家の中でだべっているのは変わりようがないのですが、ちょっとはネンマリが解消できたらと思います。

ここまで読んでいただいて有難うございました!

これからもよろしくお願いします!

よろしければ感想や評価もお願いしますね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。