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個室
彼女のいない空間に、初めて向き合う朝。
会社に着くと、いつものデスクの並びが迎える。
でも、あの席にはもう、彼女はいない。
個室の静けさが、普段よりも重く感じられる。
モニターの光も、椅子も、何も変わらない。
ただ、座る人だけがいない。
私はそっとその席の前に立つ。
手を伸ばして、何か触れるわけではない。
それでも、その空間の重みが、胸に刺さる。
思い出す。
二人で肩を並べて仕事をしていた時間。
笑い声、軽く文句を言った瞬間、冗談で怒った顔。
「いないんだ……」
小さな吐息が漏れる。
涙はまだ出ないけれど、胸の奥はざわつく。
引き出しを開ける。
メモ帳。付箋。
自分が書いた走り書き。
「あとで相談」と書かれた付箋に、思わず笑みが浮かぶ。
「もう相談できないんだな……」
でも、空っぽではない。
思い出は、確かにここに残っている。
机を前に、深呼吸する。
手をキーボードに置くと、少しだけ温かさを感じた気がした。
ここで、私はまた仕事を始める。
悲しみは静かにある。
でも、歩みは止めない。




