第17話 涼しくて煩わしくて快適な教室、利己的に甘やかされた友人たち_2
私が私であることを確認できるコミュニティは、あまりに大げさに表現するのなら、この多少の窮屈さを伴う三人の友人だけなのだ。
「もちろん。でも、正直全然、出会いがないんだよね」
「嘘つけ。加藤が秘密主義者なのは、みんな知ってんだよ。何かあるだろ、情報を提供しろよ」
「綾乃みたいにイケメンの彼氏が出来れば、聞かれなくても答えるよ」
麻雀のアプリに再ログインし、新しいゲームを始めながら答える。
数少ない友人から、白けた視線を向けられることなんて望まない。築きあげてきたものが音を立てて崩れるのは、とてつもなく怖い。揚げ足をとられる挙動は、出来る限り回避しながら生きていきたい。少なくとも、卒業までのあと半年の間は。
「そういえば、唯はどうなの?」
百合谷が、思い出したように唯にそう尋ねる。
しばらく苦笑いをして黙っていると、話題の中心は予想通り、他人に移った。会話の隅で、私はそっと胸をなでおろす。
「どんな名前だったかな。あの小さな商店で出会った彼氏とは、順調なの?」
百合谷は長い髪を耳にかけながら、思い出すように天井を見上げる。
「死ぬほど順調」唯ではなく綾乃が答える。「結構進展あったよな。言っていい?」
「だめ! 言ったら怒るからね!」
スマホに熱中していた唯が顔を上げ、頬を染めて盛大に首を振る。
「えー、知りたかったのに。百合谷はどう?」
話題が自分に返って来ないように、口を割らない唯から百合谷に話を降る。ペットボトルの甘ったるい炭酸水を飲み干しながら、どこかに置き忘れてしまったお気に入りのリップの行方を考える。
物思いに耽るうちにも、話題は次から次へと移っていく。女子同士の会話のいいところは、流動的すぎて誰も前の話題を覚えていないこと。
「いないの」
困ったように百合谷が首を振る。
「いないって、親しい男子がいないってこと?」きょとんとした顔で唯が尋ねる。「それとも、百合谷に見合う男子がいないってこと?」
「百合谷は本当に美人だから、近場に釣り合う男子がいないのも納得」
鼻筋の通った百合谷の横顔を見つめ、唯の意見に心から同調する。
「違う、違う。そんなに傲慢なことを考えているように見える?」
百合谷が困ったように笑い、やんわりと否定する。
「まあ、見えると言えば見える。だって美人だし、お嬢様ぶってるし」
綾乃が軽口を叩き、化粧ポーチを鞄に戻す。気づけば、彼女の目は右も左も適度に大きくなっている。
「選びたい人で、かつ選んでもらいたい人が、選んでいい範疇にいないの」
参考書を閉じた百合谷が、頬杖をついて窓の外を眺める。
他の物語のキャラクターは設定を練ったオリジナルですが、
本作はキャラクターは結構、モデルがいます。
その当時の周囲の人々の特徴を参考にしました。
読み返すと、当時の友人に再会できたみたいで懐かしい。




