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条件への挑戦(まずはBL漫画)

(とりあえず、一息つこう)

 と、異世界から戻って来た狂子が目を開けると……眼前には骸骨が。

「わっ!」驚きあまり尻餅をつく。


(戻って来た途端、骸骨なんて心臓に悪い)と、軽く周囲を見渡す。

「千世ちゃんの部屋……て事は」

 尻餅をついてたおかげか、顔を上げた先で、何とも申し訳なさそうな表情で今にも泣きだしそうにうつむ居ている千世と目が合う。


「あ、ごめん、その別に千世ちゃんの……ママ骸骨に」

「ごめんなさい!」

「え⁈」


いきなり深く頭を下げ、土下座する千世に。当然戸惑う狂子。

「いきなりどうしたの⁈ とりあえず頭を上げて……あたし何かした。話聞くから」

「私……狂子ちゃんに剣を……戦争を」


「ああ」(そういう事か)安堵(あんど)に息を漏らした狂子は、千世の肩に手をのせ、優しい口調で言葉を続ける。

「あたし、ケガしてないし、千世ちゃんのだってあの時は気が動転してたんでしょ? 気にしてないし。第一、あたしも剣抜いて応戦したんだから、おあいこ……だから謝らなくていいよ」

「でも……」

「もう過ぎた事なんだし……あたしが、良いって言ってるんだから良いの!」

「ごめんなさい」

「だから……あたし達は仲良くやってきましょう……で、ちいちゃん、どのあたりでこの世界に戻って来たの……イージス王国の事どこまで知ってるの」



「イツキさんから聞いたのですが……獣人の女王、ジュラさんを仲間にしたのか、イージス王国で一緒に歩いてるのを見たと……」

「うん」

「で……次は鬼族だろうって」

「当たってる」

「だから元老院さんの勧めで、私達も、洞窟で共存してるドワーフとダークエルフを……」

「えっ、ちょっと待って⁈ ドワーフはともかく、ダークエルフが洞窟に居るの、しかも同居して」

「はい……でもそれぞれから、一緒に戦う代わりに条件が有ると提示されました」「ああ」(よくありのパターン)「あたしも協力するから。その条件ての教えて」


「ありがとう……ドワーフのノロさんからは」

「うんうん」

「男の人が出る……エッチな漫画を持ってこいと」

「男ってやつは……種族が違っても、所詮(しょせん)、中身は同じ雄オスか……ごめん。その漫画、たぶん十八禁だから、その歳(とし)になるまで女子であっても買えないの」


「……そんな」肩を落とし、あからさまにがっかりする千世。


「力になれなくてごめんね……ちなみに興味本位なんだけど、ジャンルは?」

「はい。BLです……はじめビールと聞き間違え、おじいさんに買ってきてもらおうと言ったところ、血相を変えたノロさんに断られたんです」


(そりゃそうだろ……イツキさんから聞いたけど現世さんて異世界では、トップランクの戦士らしい。以前に知り合いにBL漫画買ってきてなんて言えない……でも買うのはあたし達の世界。という事は……地元のお坊さんが、真顔でBL本を出してきた日にゃ、レジの人腰ぬかすわ! でも離れて見てみたいかも)


「ははは……前言撤回(ぜんげんてっかい)。BL漫画なら力になれるかも」

「本当⁈」

期待のまなざしを向ける千世に、笑顔で頷く

「うん、十五、十八禁も有るけど、BLってちゃんと全年齢向けも有るから大丈夫。へへ、実はあたしも何冊か持ってるかし」

「え⁈」

「も、もちろん興味本位程度だから」


「ううん」

 一歩下がろうと身を引く千世。

(とても「部屋に来る」なんて言える雰囲気じゃない)


「とりあえず明日、本屋に行こうか」

「うん……でもBL本買ってるところ、クラスの人に見られたら」

「それなら大丈夫……めったに客なんて来ないぶん、ゆっくり本選びが出来る、あたしお勧めの本屋を紹介してあげるから」



 そして翌日の放課後……下校途中、制服姿の二人は、商店街の隅っこ、人通りの少ない横道に在る……

なおかつ、薄いガラス張りの木戸と、かすれた文字の看板……昭和初期、いや大正に建てられたと言われたって頷ける、木造平屋建ての本屋の前に立っている。


「下根(しもね)書店」

「どう、ちいちゃん雰囲気あるでしょ」

「はい……でも意外です。BLって古書か古文書だった?」

「いやいや、自慢じゃないけど、あたしがそんなの読めると思う? ちゃんと普通の本屋だから……入るよ」


 ガラガラと音をたて中に入ると、まばらな蛍光灯に店は薄暗く、木戸から入る光が最高の照明ともいえ……日没後一時間で閉店とかかれている理由が納得でき。


 昔の家どくとくの広い土間をそのまま売り場にし……突き当りには、舞台のように飛び出した板の間(又は番台)には、かっぽうぎを着たおばあさん(下根民子(しもねたみこ))が座布団に鎮座している。

 その、眠ってる猫みたいに笑っているような細い目と、丸い顔……小さな体……まるで日本人形


「可愛い」

 思わずつぶやく千世に頷く狂子……と。それに気付いたのか、おばあさんが二人に顔を向け、ゆっくりと話し出す

「おや……鬼道さんちの。だれ……あ、狂子ちゃん」


「こんにちは民子(たみこ)おばあちゃん」

(今一瞬あたしの名前忘れてたな)


「はい、こんにちわ。今日、も、エッチな本買いに来てくれたのかい?」

 その言葉に目を丸くし、距離をとろうとする千世。


「ははは。今日もだなんて、冗談きついなおばあちゃん」

「……で、横の子は……エロ本友達かい」

(おばあちゃん……ちょっとその話題から外れようか)


「また冗談きついな。彼女はあたしの親友で……ほら」

狂子が千世の背中を軽くたたく

「はい……はじめまして民子(たみこ)さん。暗木千世です」

「暗木……ああ中二寺(なかにじ)の。現世くんのお孫さん?」


「はい……ところでおば。おばちゃん」

「何だい」機嫌よく返事する民子おばあちゃん

「おすすめのBL漫画ありませんか?」


(初対面の人になんてこと聞くんだいこの子は、でもこれで話題終了だね)

と狂子が千世の手を引いた時

「それなら、とっておきの……これなんてどうだい」

(有るのかよ!)


 と、隣の部屋から彼女が持ってきたBL本の内容を簡単に説明しよう

タイトルは『ザ・解脱』……中年僧侶が、悩める男達を「仏の名のもと」などと言葉巧みに本堂に連れ込み……アドバイスで悩みを解決させ(意外に実生活でも役立つアイデアと言葉)……ついでにしっかり、新たな世界の扉を開かせる


「なんとも特殊な」

「法具(ほうぐ)をこんな…………う……ばち当りです!」

声を上げる千世に、頭を下げる民子さん

「うん、ごめんね……でもこの僧侶の顔、よく見てみ」


「……え、うそ⁈」

「おじいさんに、似てないかい……お勧めだよ」


(お爺さんにそっくりな顔した主人公のBLを勧められ……彼女の判断は)

「はい……これに決めます」




と、なかば強引に最初の試練。いな、ドワーフからの条件をクリアーした。

読んでいただき、ありがとうございます。

『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』

第三十二部『条件への挑戦(まずはBL漫画)』

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by.メガネ君(作者)

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