鬼族との出会い(後編)
重い門をジュラの力で開ける
両端に並ぶ石塔の灯が照らし出す、岩肌むき出しの薄暗く長い廊下……その先には再び扉が
「すいません、おじゃましま~す」
他人の家に上がる時に、条件反射で出る言葉にすぐ返事が
「邪魔するんやったら帰って」
ピンときた狂子は、にやりと笑い
「そうか悪かったな。ジュラ、帰ろか」
「ちょい待て待て、お決まりのギャグや、のりよすぎやで」
再び扉を開けると次は大広間。タリアと会う
いかにも魔王が鎮座するような椅子に鎮座し、大きな水晶に映るぞうを見ては笑い……その手には斧ではなく、せんべいが握られていた
(角が生え筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)をのそけば……ただのおばちゃん(見た目三十歳前後)がそこに居た)
相変わらずこの世界は、狂子の斜め上を行くついでに、彼女のイメージを破壊してゆく
「久しぶり、タリア」
ジュラの声に気付いたタリアは、彼女の元へ駆け寄り甘えるように抱き着いた。
「お、おう久しぶりやなジュラちゃん、二週間ぶりか? 相変わらず良い毛並みしとるな」
「ありがと」
「……で、横のおまえば誰や?」
「はじめまして鬼道狂子です」
「おう狂子ちゃんか。うちの名前は『オバ・タリア』や……しかしそんな弱い体で名に鬼が付くとは……笑えるな……で。さっきの、うちの返しが分かっとるちゅうことは。あんた異世界人か?」
「うん。それより、あたしは、あなたを何て呼べばいいの……タリアさん、それとも……オバさ」
「おい今ちゅうた」
「いえ何でもありません、タリアさん」
「分かればええ……こう見えてもうちは、ぴちぴちの三百歳で、ジュラちゃんよりはるかに年下や……で、はるばる異世界から、何の用や?」
「うん……イージス王国と、ミドルニアが戦争状態になりそう」
「知っとるで……最近(水晶に映る)昼のワイドショーもその話題一色になってきて……ほんまつまらん話しやで、ご飯美味しくないわ……それで何や?」
「あたしの。じゃなくて、イージス王国の味方になってほしい」
「で。ミドルニアの国を亡ぼせと……のんなん、うち」
と台詞を遮るように狂子が声を上げる
「そんな事した瞬間。あたしは、あなたを倒さなきゃいけなくなる」
「ははは、あんたが、うちを倒す⁈ 面白い事言うな。ならうちは何をしたれええんや?」
「抑止力へんに手出しせず、今まで通り仲良くしようと」
「じっとしとくだけかい?」
「うん……多分そうなる。というか、なってほしい」
「そやな。でもまあ、じっとしとけるかは向こうさんの出方次第になるけど、良いか?」
「うん」
「だったら、うちも狂子ちゃんらの味方になったげてもええけど」
快く頷くタリアの手をつかみ礼を言う狂子
「ありがとう」
「いやいや……けどや。うちも条件出させてもろて良いか?」
「なに、もしかしてタリアさんを倒せとか」
「そんな、あたまから無理て分かっとる頼み事なんてするかい……あんた、異世界人、言うてたな」
「はい」
「そこで相談や……十年前やったか、今日と同じように。ジュラちゃんが異世界人連れてきて……それから、いろいろあって……ある日『粉もん』ちゅう、めっちゃ美味い向こうの料理食わせてくれたんや」
(熱の入り方からして予想がつく)
「それで?」
「うんでもな、いけずな子で、詳しい作り方とか教えてくれんまま、その子はこっち(この世界)にこなくなったんや」
「もしかして、その『粉もん』をあたしに作れと?」
「流石はしず。いや。分かっとるなら話は早い……頼めるか? この際、少し不味くても良い。食わせてくれるんなら。仲間になったるわ」
「(ハードル下げてくれて)ありがとう。『粉もん』なら聞いた事有る(『粉もん』ていうんだから)……ここに小麦粉と、海以外の水って有る?」
「有るで……何回も思い出しながら、見よう見まねで作っとるんやけど……なかなか上手いこといかんでな……小麦粉なら、貯蔵庫兼宝物子に。水ならそこに、山の湧水引っ張って来とるで」
「……なら、作れるかも」
「ほんまか⁈」
「うん。でも、直ぐには無理」
「なんや。ぬか喜びか」
「ちがう。数分待ってて……いったん、大広間からあたしの世界に戻って、ママに聞いたり。足らない材料持って来るから」
「すまん。早合点してもた」
「気にしないで。あたしが戻ってくるまで小麦粉と水、それとお皿、用意して」
「おう」
「それじゃ、行ってきます」
光に包まれ、元の世界に転移




