ドワーフとダークエルフは似た者同士? 前編(まずはドワーフ)
ここは火山裏に在る礼拝堂跡……その地下へ延びる階段を降りる三人。
「ベリハ。なあ、いいかげんこの建物、礼拝堂じゃなくていいから建て直してやらないか?」
「イツキ、相変わらず分かっておらぬな、この荒廃ぶりが良いんじゃないか」
「しかしだな、世話になってる奴らに……これはないがどう」
「私も同感です」
「ああ言い忘れてたが、ここは家でいう、裏口みたいなもので……実は以前、よも建て直しを勧めてみたが『裏口がから別にいいし、雰囲気、気に入ってるでしょ』と跳ね返され、予算として提示板金だけ取って行った」
「金渡してるなら……て、ここが裏口なら、玄関はどこだよ」
「ちと言いづらいが玄関は、歓楽街の、大人のおもちゃ屋だと……」「はあ?」
「うむ。手先が器用ゆえ、動くこけしやら、そのいろいろ」
恥ずかしそうに顔を赤くするべリハ
「でもあんな町は、二十歳にならないと入れないのでは」
「そこは問題ない、奴らは全員二十歳以上だ」
「でも産まれたての赤子は、と意地悪な質問をしたら、二十歳以下はダメだとは人間の決まり事、我らドワーフ、エルフには適応されない」
「金だけ受け取ったり。ああ言えばこう言う……相変わらずやっかいな……本当の大丈夫か」
「まあ、なるようにしかならん」
木の扉を開け武器庫に入ると、いつも通り赤々と燃える松明に照らされ輝く、壁一面に並ぶ手入れされ、輝く武器を見ながらべリハはため息交じりに言葉を続ける
「ま確かに、わがままな奴らだが、見てのとおり武器の手入れや製造、完璧な仕事をするから、よも文句は言えぬが……逆を言えば戦場は、奴らにとって、日々の仕事における成果(武器の威力)をいかんなく発揮できる場なのだから、断られる事など無いと期待しておる……さ、行くぞ」
「ああ」「はい」
二人の返事を聞くなりべリハは、武器庫の奥にある鉄の扉を開けた。と同時に押し寄せる熱気と煙、その向こう、むき出しの岩肌に、頭痛がするほどかん高い鉄を打つ音と、ジューと焼けた鉄を水に浸ける音に、鼻の奥までくる鉄の臭い。
そうここは、ドワーフの洞窟工房。
慣れていないのか、ベリハと千世が、少し顔をゆがめる
「イツキ、お前よくこの臭いと音の中、平気でおるな」「うう、流石ですイツキさん」
「報酬が多く入った時は防具や武器をオーダーメイドしようと相談に来てるからな……そこで、常連のあたいがお勧めする職人は……ここの古株(福工房長)のノロさんだ」
「工房長じゃなく、ですか?」
「千世よここに工房長などはおらん」
「亡くなられたのですか?」
「いや……職人というものは、いかに苦しくともけんさんを止めず、その手は日々進化し続けている。そのような奴らに『長』などという、くだらない到達点があるなんて考えてみろ……その手間見る間にさびつき、魂は輝きを失い死んでしまう」
「すごい」
おのれの限界を決めず限りなく進歩しようとする職人魂に、尊敬と感嘆の声を漏らす。
「だろ。だから奴らには始めから『長』なんて居ないのさ」
「うむ、あえて言うなら、この国の商業、工業を取り仕切る。シュセン・ドルゲン。が、それにあたるであろう」
「おい親父さん、ノロさん」
「おお、イツキか……給料日でもないのにこんなとこに来るたあ、珍しな。何か品定めにでも来たか? まさか又、岩さ斬ろうとして刀を折ったと?」
「何年前の話だよ。そんな事より、今日は珍しい客を連れて来た……って、お前じゃねえ!」
と、千世の背を押すより早く歩み出すベリハにツッコミを入れるイツキ
「こいつはおったまげだ、確かに珍しい客人だべ。これはお久しぶりですべリハ様」
「うむ、久しいなノロ。新年を祝う酒の席以来か」
「はい……あ、また酒の席が有ったらお声を」
「はは、分かっておる……しかし今宵は、よよりも珍しい客が来ておるぞ。というか、お前は初対面か……千世」
「ふん、おなごか。オラさ女にゃ、性欲的に興味なか……ってその瞳。もすかして!」
「流石は職人の目……ご明察。彼女は現世じいさんの、孫娘」
「はじめまして。暗木千世です」
「……うむ……おおお」
急に小声になり、身震いをするノロのひょう変ぶりに千世が不安そうにたずねる
「イツキさん」「ん?」
「ノロさん、急にどうしたんでしょう? もしかして私、彼に失礼な言動を」
「いや。ノロの奴、現世さんの大ファンなんだ……ちなみにこう(人間の三、四十代)に見えても百歳かるく越えてんのにな(三百歳を寿命としています)」
「うるさいわい! 男に惚れる事へ年など関係あるか……ああ、あの完璧な肉体と漢気……思い出しただけでも興奮するわい」
呼吸あらく股を膨らますノロに、思わず後ずさる千世と、苦笑いするイツキ。
「落ち着けノロ。千代が怖がっておるではないか……話しを、今宵来たわけ……本題に入って良いか?」
「はい。あいすまんこっです」
……と一呼吸おいて、ベリハが話し出す
「みみの良いお前の事だから、もう気付いてるとは思うが……このく」
「んだ……イージス王国と、戦が起こるかもしれんと。腕の見せ所だけんんど、両手あげて喜べんな」
「ああ確かに……でだ」
「オラ達を、ちょうへいしに来たと?」
又もや、せりふを遮り奪う様に口を挟むノロ。と……流石に頭にきたのか、ひきつった笑顔で乱暴な口調になるべリハ。
「ああ、察しが良いな……で、察しが良いなら、気を利かして、よに最後までしゃべらせろや!」
そんなのお構いなしとばかりノロが口を開く。
「ははは……その話す。ええ男とやりあえるなら、のってやってもいいでよ」
予想外。一つ返事で良い返事を得られた事に一瞬で笑顔になるべリハ。
「ほんとか? 後から『やっぱり怖いからやめ』なんて言うのは無しだぞ」
「ああ。漢に二言はねえでよ……だがな、条件が有る」
「条件……報酬、金の事か」
「は、じじが、いっちょ前の事言って……結局はそれかよ」
「……」
予想は出来ていたが……と落胆する三人を見て。
ハンマーを折らんばかりに机にたたきつけ、声を上げるノロ。
「やっぱ女の(世の中は金だという)考える事はくそだな……漢を、オラを舐めるでねえ!」
湯気が立つほどの漢気を見せるノロに、驚き関心する三人。
「金が要らぬなら……名誉か名声か⁈ まさか女。嫁さんか……確かにお前はまだ独身だもんな」
「女。そんなプルンプルン、つやつや、すべすべ、したはんりょなどいらんわ!」
戦の後に贈られる(お約束の)褒美をことごとく断るノロに、声を上げ返すべリハ。
「予想がつかん……だったらお前が望む条件とやらは何だ!」
「BLの漫画を持ってこい!」
「ビールの漫画? 書物の事か」
「いや、漫画はそら耳、酒好きなノロさんの事だから、とにかくビールだろ」
「……すいませんノロさん、もう一度おっしゃって下さい」
「おう、現世さんの孫娘さんか。丁度良い、向こう世界なら手に入りやすいと聞くから、お前さんに頼もうか」
「はい、任せてください。で、何を持って来れば良いのですか?」
「ビ、ビーエウ」
「やはりビール……すいません。お酒は二十歳になってから、なので……そうだ、お爺さんに事情を話し買ってきてもらいます」
「現世どのぬぃ!」
千世はわざとらしいまでの、時代遅れな一般人。
と、流石は異世界『BL』の意味を知らない、お年頃の女性二人。
「ん? ノロよ、そんなに驚く事か……怪しいな。ちと待っておれ『BL』とやらを元老院に聞いてやる」
思わぬ事で、おのれの性癖が拡散されると焦るノロ(百歳以上、男性)
だが……時すでに遅し。
「こ、子の知れ者が!」「どうしたんだ」と、べリハから内容を聞くイツキ
「ははは……でもそんな程度て取り乱すなんて、べリハお前も見た目通り、まだまだ子供だな……ノロさん、その漫画、あたいにも後から見せてくんない?」
思わぬ同志、しかも女性の同志のたんじょうに、目を輝かせるノロは
「同志よ……いや、イツキ、お前さえよければ今度、オリハルコン製の防具、武器一式。ただで作ってやる」
「そいつは有り難いけど……。オリハルコン製なんて本気か」
「効果が有るかは知らねえけんど、古代エルフの、まじない文字も刻印してやる」
クールなお姉さんタイプのイツキが『見たい』と興味を持つ程の本だきっと良い内容だろうと、千世は俄然興味を引かれた千世は二人に歩み寄る
「でそのBLとは何なんですか?」
そして……真実を知らされる少女……。
そのあまりの恥ずかしさと、そんなもの(ゲイ術作品)を、地元の書店で笑顔で購入ている自分の姿を想像してしまったのか……見る間に顔を真っ赤にし、て涙ぐみ、イツキを見る。
そんなの、四つん這いの赤子に棒高跳びをしろと言ってるようなものだ
「千世。そのだな……知ってると思うけど、あたいら二人は、お前の世界に付いて行ってやれないんだ」
「ぎゃ、頑張るます」
「しぬなよ……いや、むしろ新しい扉を開き転生して来い」笑いをこらえるイツキ
「剣を向けてしまった相手……無理を承知だが、向こうの世界で狂子を頼れ、あの者なら(よと通じ合うものが)……頼めば、力になってくれるであろう」
「……はい」
「千世(気持ちは分かるが元気を出せとか、励ましの言葉なんて意味が無いだろうけど)……なんだ……バカみたいに元気なあいつのことだ、本心を打ち明けそんな事水に流してくれるだろう」
ただ頷く千世に、どうすれば良いのか分からなくなったべリハは
「とにかくだ。そうと決まればここに突っ立っておっても、時間の無駄だ! つぎ行くぞ」
両手で千世の肩をを叩き、背中を押し動かし……ボーっとする彼女を我にかえした。
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『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第二十九部『ドワーフとダークエルフは似た者同士? 前編』
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by.メガネ君(作者)




