目には目を
狂子がジュラを仲間にして、数日経ったある晴れた日の午後。
ここはミルドニア城、べリハの私室。
彼女は一人、机に向かい元老院から渡された書類に目をとおしていると……扉を叩く音が。
「誰だ……入ってきて良いぞ」
扉を開け入ってきたのは元老院三人……ごていねいに彼女に渡した書類作業の進み具合でも見に来たのだろうか……と、シュセン・ドルゲンが頭を下げ口を開いた。
「姫。目を通されたとは思いますが、報告書にあるように……週出港した中型船はおろか、先々週出港した大型船も、まだ戻ったおりませぬ」
「バカにするな、それくらい城下の様子を見ていれば分かるわ……露店に並ぶ商品、主に食料を見るに、備蓄(非常用)に手を出すほどではないから、大丈夫だろう」
「はい今のところは……加えて気候にも恵まれ、多くの農作物はちかく収穫の時期を迎えます」
その言葉に全員、息を漏らし表情がゆるみ、べリハは意地悪く鼻で笑う
「バカンスでも楽しんでおるのだろう……心配するな、海でマリンスポーツのさわやかな汗をかいた分……今度は鉱山で労働のべたつく汗をかかせてやるわ」
「「「ははは」」」
笑う一同の中……ドン・トリーノが真剣な表情で歩み寄り地図を指さす。
「わしもそう思って……イツキを偵察に行かせた二日後『バキアとの間にある平原にて、馬車に乗って戻ってくる船員を見かけた』と通信が来ました」
「船が壊れたのか?」
「いえ、船は二隻とも完璧な状態でイージス王国の港に停泊しておりました」
「不思議な事もあるもの……うむ。戻った時にでも事情を聞き、イージス王国には、早く船を戻してもらうよう、要請を出そう……さてペンと紙は」
「残念ながら、そうも言っておれんのです……さらに報告によれば……獣人王ジュラ様のお姿をイージス王国で見かけたと」
「ジュラが、イージス王国に居るとは意外だな」
笑みを浮かべるべリハとは正反対に、目を丸くしたログ・ウエストは速足で彼女の側に立ち、全員に聞こえる声で忠告を始める。
「あの国が獣人を受け入れるとは……この二件……私の考えすぎかもしれませんが……何やらあやしくありませんか?」
「怪しいとは、お主こそ何か言いたげだな……遠慮なく言ってみよ」
「……宣戦布告の準備かと」
その言葉にべリハは怒り、椅子を飛ばす勢いで立ち上がるなり机を殴る。
「血迷ったか、貴様! 元老院のみでありながら、言っていい事と悪い事の区別もつかぬか!」
炎を宿さんばかりの赤い瞳と、荒い息づかい。
今にも殴りかかろう、いや斬りかからんばかりのけんまくに、思わず膝をつく元老院。怒りの矛先であろうログ・ウエストはさらに頭を下げ、言葉をつづける。
「申し訳ありません、ですがこれは、あくまで可能性の話しでございます」
普段は、ふてぶてしくも頼もしい元老院が、そろって膝をつき怯えたように目を伏せる姿に……はっと我にかえったべリハは、彼らの肩に手をのせ
「怒りに身を任せ声を上げ、すまななかった……だから怯えないで、顔を上げてくれ」
「はい……姫、大きくなられましたな(胸以外)」「わし達はうれしいのです」
「姫がこれほどまでに国を、世界を思われていることに」
「当然であろう……よも十八歳のなだ」
「はい、しかし残念ながら」「お体の方が」「とくに、む」
「言うな! うむ、ちと頭と手を冷やしいてくる」
怒りか恥ずかしさで、べリハは顔を赤くしたまま私室を出た。
数分後戻ると……先程までとは打って変わり、元老院は、普段のふてぶてしさを取り戻し、窓際で何やら話している。
「待たせたな」
「いいえ、それよりも姫……ききたい事がございます」
「何だ?」
「は……さきの親善の時……何か相手を刺激するような真似など、なさいませんでしたか?」
思わず視線をそらすべリハに、元老院がねじりよる
「有るのですね」「答えて下さい」「さあさあ」
「いや、その……千世とイツキの影技と……かるいアストラルワークスと、罵倒を少々」
「間違いなくそれです!」「いやはや何とも」「……は~」
もう、怒る気力すらうせる、怒る事すら馬鹿らしい。と言わんばかり深いため息を漏らし、そろって肩を落とす元老院。
「あ、いや、すまぬ……しかしもう過ぎた事よ……これに対し、よはどうすればよい……やはり『力には力』対抗せねばならなぬのか」
「無論です!」
流石は軍事担当ドン・トリーノ、待ってましたとばかり前に出……残る二人に目をやると、シュセン・ドルゲンがにやりと笑い頭を下げる。
「鉄、武器の備蓄ならば大丈夫です」
(始めから、よに応戦発言させる事が狙いだったのか?)
戦う気満々の二人に、べリハの顔がくもる……これはいけないとログ・ウエストは、彼女に駆け寄り、肩に手をのせ地図を指さす。
「勿論、中立国バキア。イージス王国の民には……被害が出ぬよう事を進めます」
「向こうは、獣人と鬼族でしょう(どちらも近接)」
「ですからこちらは仲間は洞窟に居る、ドワーフと、ダークエルフを(近接、中長距離)仲間にした後……期待薄ではありますが、砂漠の盗賊団にも声をかけようと……これはイツキに行かせようと」
「直ちに馬を走らせ……明日の朝、遅くとも昼までにはここに、イツキと千世、二名を連れてまいります」
「よろしく頼む」
そして後日……玉座の間にとおされた千世とイツキは、ベリハが来るまで、近況報告などをしている。
「宣戦布告は避けられないのでしょうか?」
「ああ、残念ながらな」舌打ちをしながら答える
「その狂子ちゃんと一緒にいたという、ジュラさん、てどんな方なんですか?」
「ん、以前バキアに行った時。橋の下でミケに会っただろ」
「はい、お耳が可愛く元気な……たしか喫茶店の店員さん」
「よく覚えてるな。ジュラはその親玉、店長みたいなもんで……接近戦なら、あたいなんか彼女の足元にも及ばない」
「そんなに」
「ああ、獣人だからか人間離れの強さ……でこっからが問題だ」
「どういう」
「ジュラを仲間にしたって事は……間違いなく次は、鬼族の長、タリアさんを仲間にしようってこんたんだろうな」
(貴族って権力者の事だよね)首をかしげる千世
「貴族ていど私たち二人なら余裕で勝てるのでは?」
「はあ⁈ 千世お前、何夢みたいな事言って……あ(言葉の違いか)お前の世界じゃ『きぞく』って人間か、弱い動物とかだろうけど……ここじゃ、お前の世界で言う、鬼の一族をさし美人だ……その美しい見た目とは裏腹に『力の破壊の体現者』なんて揶揄されるほどの化け物だ」
「……」黙り込む千世。
「けどいくら宣戦布告が近いからって、狂子が、ジュラや、タリアさんなんて知らないだろうし、平和好きなギルドの奴らが教える訳ない(暴れだしたら確実に厄介事になる二人)……十中八九、あのバカ国王の命令だろうな」
「話し合いで、済まないのでしょうか」
「無理……第一、王子を誘拐したあたいらが、そんな事言ったら火に油だよ」
黙り込む二人に冷たく静まりかえる空間……と
「ははは。お前達の気持ち聞かせてもらったぞ」
突然響き渡るべリハの声に焦る二人。
「マスターの声……どこに」
「バカ(小声)とべリハは高い所を好むという、とにかく上を見ろ」
「おいイツキ、バカとはなんだ。よはここだ」
座って(スタンバって)いたのか尻のほこりを払いながら、ベリハが玉座の後ろから現れる……が
「マスター」
「何だよその格好」
「これから向かう所に適したものだ……流石はよだ、何を着たって似合うであろう」
自画自賛、胸を張るべリハに
((いや落ち着くから。むしろいつもその格好でいてくれ))
少々あきれ顔で苦笑いを浮かべる二人……だが数秒後
「元老院のじじいらはどうした?」
「ああ、避けられぬであろう戦争が起こった時。少しでも両国の国民に被害が出ないよう……彼らには、外交や商業、各ギルドなどつてを使い、手回しをしてもらっている」
「で、あたいらはこれからどこへ行きゃ良いんだ?」
「よたちは、火山裏にある礼拝堂跡の地下武器庫より、鉱山工房へと入り、ダークエルフとドワーフに協力を求めるつもりだ」
「なかなか良い判断だ……けど、変わり者が多いと聞くぞ。大丈夫か?」
「物事『やらずに諦める』と『やって後悔する』の二択なら。よは後者を選ぶ」
そうして三人は、地下武器庫の奥の扉を開け、吹き出す煙の中へと姿を消した。
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『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第二十八部『目には目を』
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by.メガネ君(作者)




