ジュラとの出会い(前編)
(ここがバキアか……何だろう)
バザールだと聞いてた、あたしはてっきり、砂漠のオアシスのような、神秘的な場所かと、なかば期待していたけど……眼前に広がり、取り囲む景色は……。
垂直に切り立った岩山の群生地、まるでグランドキャニオン
その岩山をくりぬき、店や住居としてる。
あたしたちの世界でいう「ビル」に近い構造だからか、なんとなく落ち着く
つっこんだら負けなのか、メイド服もどきの服を着た女性が、恥ずかしげもなく、道の真ん中でビラを配っている。
深呼吸し見渡せば、あちらこちらに張られているポスター。
そう、ここは
(ここは中立域バザールバキアなどでは無い、聖地アキバである)
「あえて言おうパクリであると!」
一度も聖地アキバに行った事の無いあたしは、考え直し
(もどきでもいい、雰囲気だけでも楽しみたい)
と寄り道をしながらも、地図の丸印へ順当に進んでいった
「全てが終わったら、異世界独特の可愛い動物のペットショップと、デバイスを試着できる店と、本屋には行くぞ」
などと、心の声をもらして……路地裏へと入った。
さっきまでの明るい雰囲気から、一気に雰囲気が変わり……薄暗くしめっぽい、まさにアンダーグラウンド。
(雰囲気あるな……モヒカン刈りの男が、ひょっこり出てこないかな)
そう期待に胸をおどらせながら歩むあたしの目の前に……現れた。
けばいまでに、かじょう装飾された看板が『ようこそメイド喫茶アビスへ』
「あ……ここがジュラが居るという、メイド喫茶アビスか(英語で深淵、または地獄などを意味する単語……とうぜんあたしは知らない)でもこれじゃ」
錆の浮かぶ鉄の扉をなでながら『喫茶店』というよりも『古びたボクシングジム』といった雰囲気だが……とりあえず入ってみよう。
重い扉を開けた途端!
腕をつかまれ、引っぱりこまれたあたしは、抵抗する間もなくネックホールド(はがいじめ)された。
「よく来たニャ、お嬢ちゃん」
そう言って現れたのは、尖った耳と長い尻尾をはやした少女
(銀に黒の渦模様……アメリカンショートヘア)
「ケットシー」
「ニャカニャカ詳し、じゃニャくて……ゴホン、おや固まって可愛いニャ、メイド喫茶は初めてかニャ?」頷くあたしに彼女は言葉をつづける
「あたしは案内人のミケで……ネックホールドしてるのがクロだニャ……説明するニャ、お客様が大怪我しようが泣き叫ぼうが、失神、気絶されるまで心(闘魂)と体の触れ合いを第一にトレーニングを重ねたメイドが全力全開でお相手するニャ、胸、尻、他どこでもおさわりOKの、まさに夢のようニャお店だニャ……さあ、どの子をご指名かニャ~?」
店内を見渡すと……確かに、メイド服姿の獣人が、客に関節技を決めている、首から下は柔らかな胸や体がこれでもかと密着し、男にとってまさに天国、首から上、白目をむいたその眼差しは……まさに今、天国の扉を開かんとしている様だ。
(いや何か違う、あたしの知ってるメイド喫茶は、こんなアブノーマルな店じゃない!)
雰囲気に流されるな、とりあえず用事を済ませよう
「ジュラを」
「ニャ⁈」驚きのあまり、毛を逆立てるミケ
「ついてないね、お嬢ちゃん」
ペルシャ猫の毛みたいに優しい口調のクロ(サイベリアン)
「もしかして、戦、いや、接客中?」
「ちがうニャ、ジュラ様は、指名率ゼロ、うちのワーストワンメイド、なんだニャ」
「うそ、弱いの?(最強の獣人って聞いたんだけど)」
「死にたいのかい? その逆だよ、強すぎて指名なんてされないのさ」
一見すると獣人の王が、ひどいあつかい……だけどあたしには
(まさに最強にふさわしい)
絶対に勝てないどころか、無事には帰れないだろうといった不安と正反対に
あたしの口は笑い……動揺を見せる二人へ無意識に言葉を返す。
「ふふふ、いいねえ」
「おお、やる気満々だね、死んでも知らないよ」
と言うクロの声でわれにかえったあたしは、目を丸くするが、時すでに遅し。
ぐいぐいと背中を押すミケにされるがまま……あたしの前には、大人の雰囲気漂うピンク色の天幕がひらく
「一名様……死体安置、いや、ビップルームへごあんニャーい」
突き飛ばされ入室。
(接客がなってないぞ……なんて文句を言ってる場合じゃないか)
『獣人族の長』なんだから、てっきりライオンかと思い込んでいたあたしは、正直おどろいた。
目の前にある段上で、長い尻尾をなみうたせ、どこかたいくつそうにクッションの上で横たわる……もふもふな毛並みと、豊かな胸をもつ獣人は……黄色と黒が特徴的なトラだ……詳しくはスマトラトラだろうか。
彼女、ジュラは、久々の客(獲物)であろうあたしを、金色にひかる大きな瞳で、ただ静かに見ている。
この空間のおける絶対的強者の愉悦というものだろう、うっすらと笑みを浮かべている……。
まけじとあたしが、いくら気迫のこもった視線をおくろうが、それは変わらないどころか優しげ……むしろ眠たげに目を細めている。
「あの……ジュラ様、お客です」
「ああ」
何ともめんどくさそうに上体を起こしたジュラは、あたしを睨んだ。
「ふっ、我を指名するとはな……普通の客じゃないね、うぬは何者で、ここへ何をしに来た……我まどろみを妨げたのだ……相応の覚悟はしておろうな⁈」
「覚悟だなんて……あたしはただ、ギルドマスターから『メイド喫茶で働いてるジュラちゃんは強いよ』て聞いたから……これから始まるかもしれない、ミドルニアとの戦いに、イージス王国側の仲間になって、あたしと一緒に戦ってほしい……というより、ジュラちゃん可愛いから、あたしの言うことを何でも聞いてくれる妹分になってくれないかな?」
「戦争とはまたやっかいな話しだな……で、我がお前のような小娘のしもべになれと? …………いやすまん、よく聞き取れなかった、もう一度言ってくれないか……そうしてくれると、気がねなく、その首、かっきれるんだがな」
みけんにしわを寄せ、気にくわないといった表情で、段に股を開いて座り、爪をむき出した右手を伸ばしていかくする。
「いやいや、しもべじゃなくて、仲間、妹分なんだけど」
「我にとっては、どちらも同じ事だ……どうやらイージス王国のギルドは、使者ではなく……道化師をよこしたらしい、が……まるで笑えぬ……おぬしを殺し、その首を酢漬けにして返答とするかな」
(弱肉強食の長……というか脳筋⁈)
「言葉じゃ分かってもらえそうにないね……だったら、あたしの強さを見せて、納得してもらうしかない」
覚悟を決め、剣を抜き構えるあたしに、ジュラは床を叩き声を上げ笑いだした。
「えっ、何がおかしいの、これ武器だよ、ケガするよ」
「ははは、しゃれた事を言う……そんな紙きれが武器……まるで折り紙を自慢してる子供のようで、なんとも可愛らしわ……いやすまぬ、お主にとって真剣勝負であったな……よし来い」
鼻で笑い、指で挑発するジュラ……頭にきたあたしは、手加減なしに切りかかる!
次の瞬間、その指一本で、武器、防具は見事に破壊され……めげず殴り掛かるあたし……次の瞬間、ジュラがあたしをきつく抱きしめた。
(自分からぶつかって、あたしの拳を無効化した。ただの脳筋じゃない)
早く離れて仕切り直そうと、ジュラの腕の中でもがくあたし。
「気に入った、お前、イツキや、静江に似てるな」
「え、静江って、もしかしてあたしのママ⁈」
「やはりな、目が似ている……うむ、今回はこのままかえしてやるが……まだ我を仲間にしたくば、再度挑戦し見事『我をお前の足元にひれ伏させてみよ』……特別に色々安くしてやるぞ」
「じゃあ、明日も来るから」
「ははは、静江同様めげない女だ、良いだろう……楽しみに待っておるぞ」
店を出る
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『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第二十七部『ジュラとの出会い(狂子)』
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by.メガネ君(作者)




