いざ中立国バキアヘ(ジュラとの出会い)
「ここ……数か月もたってないけど懐かしい。千世ちゃんと一緒に盗賊を撃退した」
「ああ、ありがとよ助かったよ……今はこうだけどまた国交が戻ったらまた頼むよ」
などと、積み荷の護衛をしているおじさんと話しながら、あたしは周囲を見渡す……側には広い川が流れ、ときおり鳥や動物の鳴き声が聞こえ、帯のようにさす木漏れ日が何とも幻想的な森林をゆく荷馬車の列。
(つくづく実感……流石は異世界、ゲームやファンタジー映画の一場面みたい)
「エルフとか出てきそう」
思わず出た独り言に、おじさんが答える
「エルフの集落はもっと奥に在ると聞いた……彼らは(悪く言えば臆病な種族だから)めったに、こんなひらけた場所になんて現れないから……期待するだけ無駄だろう」
とその時、茂みが揺れたくさんの人影が現れ……思わず声を上げる
「もしかしてエルフ」
「いや、盗賊だ!」
「ああ、そのとおり、俺たちゃ盗賊だ。エルフじゃなくて悪かったね……その顔。久しぶりだな嬢ちゃ、いや坊ちゃ……そんな物騒な格好して、どこに行くのかな~?」
「言うから、驚かないでよ……ちなみにあたしは女の子だから」
「ははは、このお嬢ちゃん、今から言葉だけで、俺たちを驚かせるんだってよ」
「聞いてやろうじゃねえか」
「それじゃあ、うまく言えないけど、ありのまま話すね……近いうちにイージス王国は、ミドルニアに宣戦布告をするみたいで……あたしは、仲間を集めるためバキアに行く途中」
あっさりと答えるあたしの言葉に、盗賊達はいっせいに目を丸くし
「え?」「なに宣戦布告」「おい、冗談だろ」「はははは」
と、周囲を見渡し…………無言で頷く護衛や、商人達に……
威勢の良かった盗賊達の顔が、見る間に青くなり……顔を見合わせ。
「おいおい!」
「おい、こうしちゃいられねえ、急いで族長に報告だ!」
全員いっせいに回れ右し、茂みに消え……消えようと走り出したが、その寸前、思い出したように舞い戻り……何ともばつの悪そうな顔で
「と、とりあえず、出すものを出してもらおうか」
「金品なんざいらねえ、食いもんをよこせ!」
「日持ちするものが良いな」
何とも珍しい光景……盗賊達が商人と、身振り手振りをしながら商談している
非常時とは、こうも人間を変えてしまうのか。
そうして……ちゃんと目的を果たした盗賊団は、族長に報告するためか一目散に走り去っていった。
バキアが近付いてきた……城壁までとはいかないが盗賊対策といったところか、それなりの高さを誇る壁に守られた都市だ。
その入り口、大きな門『関所』まで……周囲の村々からの行商か、観光客か、沢山の馬車や人が、長い列を成し……軽装の警備員が、ご丁寧にも一人質問をしていていた。
そしてようやくあたし達の番……警備員が来た
「こんにちは、ようこそバキアへ……どこから来られましたか、入国の目的は何ですか? 行商ですか、観光ですか?」
「イージス王国から、ギルドの任務で」
「ほう、差し支えなければ、詳しくお願いできませんか?」
「大きな声では言えないので……お耳をはいしゃく」
あたしは、警備の男に耳打ちする(『』小声で周囲には聞こえない)
『近いうち、もしかしたらイージス王国は、ミドルニアに宣戦布告をするかもしれないから……あたしは、仲間を集めるため、ここに来ました……これが召集令状です』
目を丸くした警備に、そっと召集令状を見せると……意外な反応が
「確かにその印にひっせき、本物のようですね……はははは失礼、しかし相変わらず、イージス国、国王は何を考えている……ここは中立国家だ……だからここでは、そんなの効力がないただ紙切れにすぎない……勧誘したいなら、まあ見せるのは自由だが……相手次第だから無理に誘うのは禁止だ!」
「はい」
「良い返事だ……差し支えなければ、誰を誘おうと思ってるか、教えてくれないかな?」
「うん……ギルドマスターから勧められた『メイド喫茶』に居るジュラちゃんを」
「はははっ、ジュラちゃんて」
「え何、あたしおかしい事言った」
「いや、すまない……しかし、彼女をちゃんづけするか……悪い事は言わん、やめておけ」
「それはなぜ?」
「それはな」そう警備の男が返答しようとした時
「おい警備」「何くっちゃべってんだ」「後がつかえてるんだ」「早くしてくれ」
と順番待ちしてる集団が、口々に怒鳴り声で苦情を並べ
「すみません! ……まあ、行けばわかるさ……ここが『冥土喫茶』だ」
無料配布されている地図に丸を書いて、あたしに渡すなり「行った行った」と馬の尻を叩き……あたしは事なく通過出来た。




