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胎動、歪み

「今帰ったぞ」

静かな廊下をつかつかと足音を立て歩き、元老院の扉が跳ね返らんばかりに勢いよく開き……円卓で話し合う老人三人はいっせいに目を丸くし、べリハを見る


「お帰りなさいませ、なんともご機嫌のようで」

崩れた笑みを向けるシュセン・ドルゲン(商工業)の言葉に、鼻を鳴らすべリハ

「十三年ぶりの、イージス王国は……しゅびはいかがでしたか」ログ・ウエスト(貿易・政治)に

「王子め、よの顔を忘れておったわ」

「それは何とも」

「だが見よ! 条約を交わしてきたぞ……これで、あの様な男に、よの国を支配されずに済むそ」

満点の答案を親に見せる子供の様に自慢げに、契約書を見せびらかすべリハ


「それはちょうじょう、頑張りましたな姫」

目を細め喜ぶログ・ウエスト(貿易・政治)


「あの国は私たち異種族を毛嫌いしてまうからね……商談が一方的でやりづらい、最悪、奴隷にされる」

頭を掻き、ため息を漏らすシュセン・ドルゲン(商工業)



「姫様の血族、王妃様と、お会いになられましたか⁈」

髭を揺らし興奮気味のドン・トリーノ(軍事)


「会えなかった、会わせてくれなかった」

悔し気に歯を見せ、首を横に振るべリハに、すぐさま質問するログ・ウエスト

「なぜ」


「密会し、極秘情報が洩れるからだと」

疲れたように鼻で笑うベリハ


「あのような弱小国家の極秘など片腹痛い。いざとなればどちらが強いか武をもって示してやるわ」

姫を悲しませたと、顔を赤くし円卓を殴るドン・トリーノ

負けじとばかりべリハも顔を赤くして大声を返す

「物騒なこと口走るな! そうならぬよう、調印をしてきたのだ」


「ではその書類を見せてください」

「うむ見るがよい。よだってやる時はやるぞ」

ベリハから書類を受け取るなり目を通す、政治家、ログ・ウエスト……数秒後。


「なるほど、たがいの国から婚約者を提供する……では、王子を誘拐しましょう」

さも当然と言わんばかり自然な口調で笑顔を浮かべ、とんでもないことを口走る政治家、ログ・ウエスト

「ははは、誘拐とは、また大きく出ましたな」

作戦、策謀、派手なことが好きなドン・トリーノが機嫌よく賛同し、笑い絵う二人に


「なぜそうなる!」

『強引な作戦。それは間違えてる』と焦るあまりせき込みながら声を上げるべリハ


『彼女の言葉に賛成する』と静かにうなずくシュセン・ドルゲン

……と、ここに強硬派と、保守派の構図が完成した



「反対されるなら、姫はどの様な解決方法をお考えか。おっしゃっていただきたい」「あの男は、イツキや千世のような乳が大きい女を好むらしいから、牛のごとき乳をもつ女を送ってやればいい……いや、むしろ牛を送ってやればよい」

「はい。まさにそれです」

「おい、ホントに牛で良いのか?」

「ご冗談を。牛や、ただ乳の大きな女を送ったところであの国はすぐに送り返し……イツキや千世を求めてくるはずです」

「それは、まずいな」

「はい。イツキをとられたとしても、山うらの遠征隊に代わりになる強い女は居ます……ですが、千世はわが国で一人しかいない異世界人をとられるのはかなりの痛手です」





「しかし交渉、対話次第で……もっと良い道も開けるのではないでしょうか」

流石は商人と言える、慎重な意見にべリハも同意し指さす

「そうだそうだ」


「確かに一理あり、ですが姫様、わしら異種族を嫌うあの国が、条約を守るなどと思いか」

再び声を上げるドン・トリーノの勢いに乗せられるログ・ウエスト

「そう今頃、捨てられているがおち」


「でもこちらにも、ほれこのように、同じ契約書が」

円卓にたたきつける契約書を鼻で笑うドン・トリーノ、覆いかぶさるように二つの署名欄を指さすシュセン・ドルゲン

「確かに、べリハ様と、パトリス国王のサインが」


「何度も言わせんでいただきたい、そんな紙切れ、偽造だと言われるに決まっておるわ」

「だからその前に誘拐を……馬鹿げている」



「でしたら姫の言ったようにあの国にはもう一度王子を産んでいただくというのは」

べリハとでは保守できるのもここまでかと、渋い顔で息を漏らすシュセン・ドルゲン

「そんな下劣な案、よは(元老院では)言っておらんぞ」

顔を赤らめるべリハ


「それは失敬、姫は姫でも、イージス王国の姫君とであります……こんな事も有ろうかと、向こうの女王とはこのように指輪に見立てたアストラルデバイスで、

通信密会をして誘拐の承諾をえており」


「そんな、お前たちも女を道具と思っておるのか⁈」

「「「いいえ」」」」

「申し訳ありません……ですが女王は……今度はまともな王子と王女を教育すると、言っておられました」

「嫌だ」

「しかしここが治めどころです、今世代は諦め、次世代に託しましょう」






「言いたいことは分かる……だが発起人でもある、よが断りもなく契約を破るなど」

次世代への期待という甘い言葉に、反論できず頭を抱えるべリハ

今がチャンスとばかり声を上げたたみかける元老院


「姫よ! その自分勝手なくだらぬプライドで、今まで続いて来たこの国が、あの様な男におかされ支配されても良いのですか⁈」

「いやそれは」


「らちがあきませんので、ここは民主的に、多数決を取りましょうぞ」

「我らが国を存続させるため、王子誘拐に賛成の方……挙手を」

手を上げる元老院が、さあ挙手をと言わんばかりにべリハを見る


「続いて反対の方……」

三対一、敗北感に力が入らず手が思うように上がらないべリハは元老院を見て、数表目を閉じる

思い通りいったものの、申し訳なさそうな顔をし結果を口にする


「三対一で」

こうじょうの途中、べリハが口を挟む

「いや、覚悟を決めた、ぜんかい一致で良い……しかし誘拐するとはいえ、どうやってあの城に……イージスと言うだけあって守りは強固と聞いたぞ」



「覚悟を決めていただきありがとうございます」

「イージス王国の守りが強固など……それは戦争中で、今や昔の話でございます」


「そうなのか」

「はい、今では、我らの国もそうですが、あの国も平和ボケしているらしく、一日中窓が開けっぱなしです」


「不用心ですね……だがそこが良い」

容易に攻略できると、満面の笑みを浮かべ円卓をたたくドン・トリーノ


「窓から侵入します」

自信満々のシュセン・ドルゲンに、バカ丸出しの作戦だと嘲笑するべリハ


「ああ確かに、窓はあいてるからな……だからといって、いきなり現れた者に警戒するのではないか」


「それはそれで、女好きの王子……女のいろかで誘惑しましょう」

とべリハを見てほくそ笑む、ログ・ウエスト




「よの出番だな!」

待ってましたとばかり声を上げ、胸を張るべリハに

『何言ってんんだこの娘は』といっせいに、どこかうれいをふくんだ白けた顔を、べリハに向ける元老院


「いえ、何と言いますか……ここで必要なのは女のいろかであって……」

「無論分かっておるわ、見よこの無駄な起伏の無いながらかな体を」


「ですから、少女の可愛さではなく」

「まとをえぬな……つまり何を言いたいのだ」


「姫……非常に言いずらいのですが」

「あんたみたいな貧弱ボデーィーじゃ、無理ってことよ」

「全くもってそのとおり」「うむ」「そうそう……って!」



「イツキ、いつのまに」

と驚きのあまり声を上げるべリハに、ドアにもたれかかっていたイツキが歩み寄る


「よう……千世を寝かしつけて、暇つぶしに廊下を歩いてたら、開けっぱなしのドアから面白そうな話が聞こえて来たから……悪いけど全部聞かせてもらったよ……

で、どうやら、あたいの出番のようだね」

「女のいろかなら、よだって負けておらぬわ!」

胸を張るべリハと、それをつき返すように胸を張り返すイツキ

「ふん、どこが?」


身長差ゆえ、眼前に突き出される球体に、不機嫌そうなべリハ

「そこまで言うなら、作戦は考えてあるんだろうな」


「勿論」と地図二枚広げ……まず三国の書かれた地図を指でなぞり

「日の出前、人気が無いいミドルニアの船着場から、アストラルエンジン付きのボートでどこにも立ち寄らず行けば」

とイージス王国の地図、運河をなぞり、城のすぐ前の大橋を指さす「翌日の夕方にはイージス王国運河の大橋の下にて待機……深夜に城の裏門より、かぎ爪で壁を登り

王子の私室に侵入……王子を誘惑、気絶させる」



「ふん、ありきたりな作戦だな……誘惑させると簡単に言うが、がさつなお前がどんなセリフを吐くのだ」

すねるように反論するべリハを、鼻で笑いながら答えるイツキ

「それはね、あんたみたいな体形どおりのお子様には言えない、大人の台詞よ」


以前温泉でも見たが……そのあまりにも違う体のラインを見せつけられ、悔しがるべリハ

「うう」


「でだ、あたいが、王子を抱えて運河まで運んでる間、その護衛しんがりと王子を気絶させるのに、千世をかりて行くけど良いかい」

「良い……作戦はよから話そうか」

「ああ、だが念のためあたいもそばに居よう」















「すまんな……では元老院諸君、邪魔して済まなかった」

べリハがまだ話しているにもかかわらず元老院達が口を挟む

「いいえ」「良い対話でした」「姫の愛国心、尊敬いたしますぞ」

「うむ、よは、決心の揺るがぬうちに千世へ、任務を伝えに行くゆえ、これにて失礼する」


短いマントをひるがえしながらイツキを連れ、元老院を出て、千世の眠るベリハの私室へ……ドアを開けると、ソファーで眠っている彼女を、テーブルのろうそくが

優しく照らしている


「起きろ千世……起きてくれぬか」

べリハに肩をゆすられ、眠そうに目をこすり上体を起こす千世

「すいません……寝てしまいました」


「別に良い……それよりもお前に新たな任務を伝える……なお拒否権はないと思ってくれ」

「はい」

「……数日の後、イツキと共にイージス王国の城に侵入し、王子を誘拐してきてほしい」

「え……そんなことをしたら戦争」

「いや確かに……だがその戦争を回避するため」

「意味が分かりません」


確かに千世の言うとおり

「いいか、このまま何もせづにいたら……あの国王の事だ自分の妃、つまりべリハの血族(おばさん)の命を交渉材料に、この国は支配され……こいつも同じ運命に

されるかもしれない……それは嫌だろ」

「はい、でも」

「あ~、心配するな誘拐はあたしがする……お前はせいぜい顔を見られないよう頭巾をかぶって、あたいを守ってくれるだけでいい」








しぶしぶ了承する

読んでいただき、ありがとうございます。

『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』

第二十二部『胎動、歪み』

いかがでしたか? 気に入っていたたけたなら是非

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とてもうれしく、励みとなります。よろしくお願いします。


by.メガネ君(作者)

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