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ストーカー狂子(前編)

山門前へと駆け戻った狂子だが、時すでに遅し

山の上へと長く続く石段にも階段にも千世の姿はおろか気配すら無く、ただ足元で木の葉が舞うだけだ

「ママの言ったとおり何かある、行くしかないか」

(親友とはいえ、秘密や、まして隠し事を暴くなんて……ワクワクする)

などと不謹慎な事を考えながら……山門に入りかけたところで足が止まる


それもそうだ……親友といえど、突然自宅に来るなり「隠し事を教えて」等と言われ「はいはい」と素直に話す正直者(ばか)等そうは居ないだろう


(ここはパンツスタイルに着替え、少し険しくとも、山の裏手からこっそりと侵入しよう)

今日のところは侵入口を探そうと、山に沿って歩き出した


苔むした石垣と、堀の様な幅の広い用水路を、うつむき加減に歩いていると……突然

頭上からの妙な鳴き声に、思わず肩を震わせ、視線を向ける

「野良猫か」

(しかしどうして、威嚇する鳴き声ってときおり人間の声に似るんだろう)


ため息を漏らす狂子をもう一度威嚇するなり、野良猫は、尻を向け一目散に山を駆け上がっていく

「ふふ……けものみち発見、今日はここまでかな」


けもの道を発見した成果に満足した狂子は、苦笑い混じりに呟くと、周囲の景色や目印を覚え、家路についた



翌日の昼休み……狂子達は、昨日につづき中庭の花壇に水やりをしている

予想はしていたが、離れて所からいじめっ子たちが、こちらを見ながら何か話しているが、他の生徒の声が反響して上手く聞き取れない

長く見すぎていたせいか、千世もいじめっ子の存在に気づいたらしく、怯えたような表情で狂子を見る


「大丈夫……そんな事より異世界に行く事だけどさ」

「いつ、あ、また放課後の倉庫から転移するの」

異世界が気に入っているのか、明るく言葉を返す千世


「ごめん、来週くらいにしない」

「ずいぶん先ですね、どうしてですか?」

あからさまに落ち込む千世に、ほほを指で書きながらその場で思いついた言葉を口にする狂子

「ちょっと、ゲームにはまちゃって……ストーキン、じゃなくて、ステルス系のアクションゲームなんだ」

「今度、見せてくださいね」

「……うん」



そして夕方……山門前で千世と別れるなり狂子は、山の裏手へ昨日見つけたけもの道の前に到着し、鞄からズボンと軍手を取り出すなり

「人目が無いから助かるわ」

と念のため周囲を確認するなり、ちゅうちょ無くスカートを下ろし、ズボンにはき、ブラザーを脱ぎ、それら適当に鞄に押し込み、軍手をさし『よし』と気合を入れ、石垣に飛び移り器用に登ると、足元に落ちてた木の枝を振り回し、枝や草を

かき分け……意外としっかりした足場のおかげで、見る間にけもの道の斜面を登っていくことが出来た


が……斜面の頂上を見て足を止め、渋い表情をする

(まずい)

ちらりと見える屋根の位置形、木々の配置からして……このまま上ると真っ平らな所に出て、千世の家や本堂に近づくまでにばれてしまうだけでなく……その場合、

不審者扱いされてしまう可能性も考えられる


(暗くなってきたからそろそろ帰ろう)

あともう少しというところで、ため息を漏らし、斜面を下り家路につく狂子




そうして翌日の昼休み……今度は場所を変え、グラウンドに背を向け雑木林で草むしりをしていると……毎度ながらの、いじめっ子の姿に狂子はため息を漏らす

(毎度ながらご苦労な事だ、こんな所まで来るとは……そんなに気になるならいっその事、草むしり、水まきを手伝ってくれたら)

と、ため息を漏らしながら聞き耳を立てる


「ああ、あの女、守ってくれるからって、鬼道さんにべったり」

「ホント調子乗ってんじゃないの、見ててイライラする」

「近いうち呼び出したして……」


いじめっ子の、少々どの越えた物騒な発言に、狂子の手が止まる

(ホント、あたしこそ彼女達を呼び出して……声かけ、お話ししなきゃね)




そして夕方……山門前で千世と別れるなり狂子は…………中略……昨日ユーターンした場所から、横に移動していくにつれ傾斜がきつくなり岩肌があらわになって来る

「そうここ、この崖……街の景色が見えるのに、高いのが怖いからか、千世ちゃん近寄らないんだよね」

まさに侵入するにはうってつけ……確かに離れて見れけわしい崖、まさに残骸絶壁(ざんがいぜっぺき)けど近くで見れば、ただの『虫食い岩』

表面は無数の穴が開いてる、だけじゃなくでなく、あちらこちらに手足を賭けられそうな突起が

まさに『単色のボルダリング壁』のようだ

「高さは十五、二十メートルはありそうだけど。あたしならいける」


(どれに手おかけ、足をのせ、次に……)

などと模索しながら上ばかり見ながら歩いていたせいか、つま先で軽く何かをけ飛ばした


その聞きなれない音とかんしょくに、足元を見た狂う子はかおをひきつらせ、先日の野良猫よろしく、マントヒヒの様な奇声を上げ、後ろにはね避けた勢いで尻餅を突き、

腰をさするより先に口を塞ぎ、聞き耳を立て様子をうかがう……と、静かなものだ


狂子が取り乱したのも無理はない……彼女がけ飛ばしたのは土に汚れた骸骨、それも人の頭蓋骨なのだ

よく見ると頭頂部は欠け穴が開いている

(理科室以外で、人の頭蓋骨なんて見るのは初めて……でもこれって本物なんだろうな)

深呼吸をし、冷静になった狂う子は、その頭蓋骨や骨を拾い木の下に置き

「さっきは蹴ってごめんなさい……どうか、化けす、成仏してください、南無……」


と合掌していた手で、拳と平手を合わせ……気持ちを切り替え壁に向かい……登り始めた

岩壁の出っ張りはときおり崩れ、多少危うい場面もあったが、転落する事無く数分で登り切った


(いや、以前から気になってたけどこの祠(積み石)って、頭蓋骨(あれ)のためにたてられたんじゃないよいね)

がけっぷちにひっそり建つ小さな祠を見ては『触らぬ神に祟りなし』とそそくさ、その場を後に境内に向かう

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