予期せぬ展開(胎動の予兆)
ここは異世界、ミドルニア城二階の一室。
「千世よ、早く戻ってこぬか」
部屋の主であるべリハが腕組をし『今や遅し』と指でリズムをとっている
「あいつらが行って一分もたってないだろ……しかし、コラペリ人数分て太っ腹だな、楽しみだ」
「僕はしょうじき半信半疑だよ。あんな高級飲料(異世界では)一人一口でも十分だよ」
などと話し合っていると、誘われたように地面から煙がたち始めた。
「おお」
「確かに数分で戻ってきたな」
三人は『来るぞ来るぞ』と整列し笑顔で出迎え……狂子たちも光の中から現れた。
「ただいま」笑顔の狂子
「マスタ、じやなかった。べリハ様、お待たせしました」
「おお。二人とも待っておったぞ」
両手を広げ抱きつこうと近づくべリハだが、二人が持つ荷物の量に、思わず後ずさるする。
「なんだその大量の荷は⁈」
その声に『してやったり』とばかり笑顔の狂子
「よかった喜んで(おどろいて)くれて。あ、千世ちゃんが持ってるのがお菓子で、あたしが持ってるのが、約束のコーラ、じゃなくてコラペリかな」
「お、お主ら、向こうの世界ではよほど名のある金持ちか領主か⁈」
「ははは。みんな知ってると思うけど、もう一度言うね……あたしは小さな道場の跡取り娘で……千世はどこにでもある小さな寺の跡取り娘」
「確かにちょっと特殊ですが、私たちは一般市民と認識してください」
「しかしな、これだけの量だ」『いくらするか知ってるか⁈』納得できずくいさがるイツキに、申しわけないとく頭を下げる
「うん……言っちゃ何だけど。イツキさん達だけじゃなく、この世界全員、例の旅人に、ぼったくられてますよ」
「「「なんだって!」」」
声を上げ驚く三人。の前に五百ミリリットルのペットボトルを置く
「はい、例えばこれ。ここじゃいくらしますか?」
「五十。いや安い時で四十六万ドルゲン、くらいか」
(ドルゲンは、転移時にそのまま円い変わるから)
「四十六万円」
千世の回答に、思わずせきこむ狂子
「いや、それ、冗談ですよね。え、これ、あたし達の世界じゃ高くても百五十円。安いとこじゃ八十円前後……まあ八十ドルゲン、かな」
その言葉を聞いた瞬間、三人はそろって『ある男に殺意を抱いた』という。
無理もない……八十円で仕入れたものを、五十万円で売るなど、ぼったくりを超えて立派な犯罪である。
(良い読者は真似をしない様に)
『無言』静まり返った空間が数秒続き……おもむろに立ち上がり、腰の装備を確認し、背中を向けるイツキ
「あ、みんな、ごめん。ちょっと例の旅人殺して来るわ」
「うむ、よろしくたのむ」
それはいいアイデアだと快く了承され、うなずき出かけようとするイツキのまえに狂子が飛び出し超腕を広げ、不思議そうな顔を向ける二人を交互に睨み返しながら声を上げる。
(気持ちは分かるけどさすがにそれはまずいって)
「イツキさん物騒な事言わないで、ベリハさんも頼まないでください!」
「……ははは。冗談に決まっておろう」
苦笑いをかえす二人をみて、狂子はポリタンク並みの大きさを誇る業務用コーラの容器を突き出し、イツキに抱え込ませた。
「そんなことよりこれ。イツキさんに飲んでもらおうと買って来たんですよ」
「なんだよこの量……一生かけても稼げないぞ。そうか、これであたいの体、買うつもりか」
驚きのあまり、イツキは目を白黒させ口走る
(う、イツキさんのナイスバディーが、あたしのものに……いけないいけない)
「いえいえ、お金の事なんか気にせず……遠慮なく飲み干してくださいよ」
狂子がイツキの背中を押し『まあまあ座って』とべリハ達が座っている円卓へ座らせるなり、袋をひっくり返し、飲み物や菓子を広げる。
「おお、その赤い(袋の)菓子。懐かしいな」
「えっべリハさん、ポテトチップス知ってるんですか?」
「ああ、いつだろう『ご褒美だ』と静江さんが持ってきたのを、イツキと分けて食べた思い出があり……『この旨さ、独り占めするのはいかん』と我が国にでも、それに似た菓子を作って露店で売っておる」
「僕も静江さんに『ギルドのみんなで』といただきました。が半分以上イツキ(こいつ)に食べられましたが」
「そんな事もあったな」
思い出し悔しそうな顔をするビギナのかたを。苦笑いしながらたたくイツキ。
「異世界のお菓子。こんな光を反射する袋はじめて見ました」
「うむ、そんな事よりよは、この黒き帯のコラペリと、炎と悪魔の顔が描かれておる菓子にする……魔族の血を受け継ぐよにふさわしい物であろう」
相変わらずの魔族設定にご満悦なベリハに、一同苦笑いするイツキ
「だったらあたいは、このでかいコラペリ飲むんだから。当然つまみもこのデカいのをもらうぞ」
遠慮なく、米袋ほどはあろう大きな菓子を抱きかかえた。
「僕は、この赤帯のコラペリだけでもう夢のようで、他にはいりません」
「私は……マスターと同じダイエット、じゃなく黒い帯の、コーラペリと……すいません。お菓子は赤のポテチチップスにします」
「どうした千世、袋に書かれた悪魔の顔に置くしたか?」
「いえ……はい」
「あたしは王道の、赤い帯のコラペリと、赤のポテチチップスかな」
グラスに注ぎ
「遅くなったが、この素晴らしき出会いと。二国の長き友好に……乾杯」
「「「乾杯!」」」
さっそく一口飲むべリハ。だが、がっかりと顔を曇らせ呟く。
「うむ、ぬるいな」
「ごめん」
「いやいや、謝らんでよいただな……よし」
とべリハが手をかざしたテーブルには、冷気漂う杯が人数分現れた
「これってもしかして」
指さす狂う子に、誇らしげに頷くべリハ
「うむ流石は狂子、察しが良いな……そのとおり、よのアストラルワークスにより作り上げたとけぬ氷の杯だ」
「凄い、氷なのに持ち手のところは冷たくない、なぜ」
「そんなの障壁をはったにに決まっておろう」
「こんな高度なアストラルワークスをいとも簡単に」
「これ程度でお驚くなど。やはりイージス王国における『アストラル技術の研究』とやらはそこが知れておるな」
感心するビギナへ、自慢げに嘲笑を返し一気に飲み干そうとするベリハ。だが、むせて盃を睨む
「なんだ、コラペリがもつ、シュワシュワはあるが。何だこの苦さは……口直しだ」
わしづかみで菓子をほおばるが、直ぐに口を押さえ……何とかのみこみ涙目。息荒く顔をゆがめ舌を出す
「なんだこの食べ物は辛うぃ……甘いもの甘いもの!」
大笑いするイツキを尻目に、積まれた菓子の中からチョコレートを取り出しほおばり、一息つく
「マスター、辛いのが苦手なのですか?」
「うむ」
「ははは、口じゃさんざん大人ぶってるくせに、味覚はまだお子様だな」
「べリハさん、これなんてどう?」
強炭酸のコーラと、チョコの塗られたポテチを渡す
「しま模様のポテチは、しかしこの匂いはチョコか、ポテチにチョコなど美味いに決まっておろう、なんと悪魔的な食べ物を作ったんだ」
天にも昇るような、ゆるみっ切った表情のべリハ
それを見計らったかのように、扉が開き元老院の三人が現れる
「円もたけなわ、失礼します」
「何だ⁈ 急ぎの用でなければ明日にしてくれぬか」
「世継ぎの事でございます」
「世継ぎだ?」
「端的に申しますと子作りの事でございます」
全員の動きが止まり、元老院と顔を赤らめ声を上げるべリハに視線が注がれる
「またかしつこいぞ。それに来客の前だぞ!考えんか」
「すみません。ですが」
「……なら丁度良い。ここに若い男がおる」
イツキが声を上げ制止する
「すまぬ。お前のものだったな」
「なに言ってんだ……第一お前は王族だろ」
「違う。魔族だ」
「はいはい。だったら普通の男じゃだめだろ……どうだこの際、うじうじせずお前が向こうに行って……王子のなにの、いえ、うつわの大きさを見定めてくるのも良いんじゃねえか」
イツキの言葉をすぐに突っぱねる事無く、考えているのか顎を人差し指で叩いたべリハは、目を輝かせ言葉を返す
「うむ、確かに一理あるな……そして何より面白そうだ……イージス王国訪問など何年ぶりだ」
ここぞとばかりに、元老院が言葉を付け足す。
「友好国とはいえ念のため、影の一団アボティランより護衛を着けさせます」
「であればこの二人が良い……ドレスを着、侍女という事にしておけば、世のそばに立っておっても問題なかろう……もし良ければ狂子達にもよを護衛してほしいのだが」
「いえ、それは立場的に無理ですよ」
「うん、でもあたしは、状況次第でその時は、べリハの護衛に着こうと思う」
「ありがとう……しかしよが居ぬあいだ、この国の政治はどうするつもりだ」
「ぶっちゃけ、政治に関しましては姫が居ても居なくても何ら問題ないと思っております」
イツキが声を上げて笑う
「ぶっちゃけすぎであろう、イツキも笑うな!」
「いやすまない」
「予習までに知っておきたい、狂子、ビギナ、イージスのたしか、チャラ王子とはどういう男だ?」
「あたしは、この世界に来た直後に会って、一時間も話してないから第一印象でしか分からないけど……あたし達の世界の言葉で例えたら『ウェイ系?』、
アストラルワークスの研究をしたりして賢そうだけど、いろいろ他人任せかな」
「短時間と言いながらよく見ておるではないか……うむ……『ウェイ系』ウェイ、つまり道、賢く他人任せ……なるほど、しっかりとした国の道筋を考えながらも、
己の考えのみで突き進まず国民の意見も聞く……良い王子だな」
「だいぶ違うと思いますが……僕は王子とは直接お会いした事は有りませんが……よくお忍びで城下に来ては荷馬車いっぱいに買い物をし、それを惜しげなく国民、とくに
若い女性にプレゼントしては」
「自ら消費により経済を動かし……国民と話し、身分の差を少なくしようとしておるのか……しかし気に入らん、戦を起こさぬ為に結ばれ続けられている二国の王子と姫
による子孫繁栄という盟約をやぶり、もしや国民の中から妃を選ぶつもりではなかろうな!」
怒りをあらわにするべリハに、狂子が声を掛けられずにいると、代わりに千世がイツキに質問する
「マスターはどうして、お怒り何でしょうか……盟約とは」
「お前たちも知ってると思うけど……十数世代前、今となってはどちらが起こしたのか不明だが、このミドルニアと、イージス王国は絶えず戦争をしていた、
それを見かねてかまだ集落でしかなかったバキアが仲裁となり……和平協定の提案が……互いに相手国に王女を嫁がせ(悪く言えば「人質協定」)るという盟約が
結ばれ……繁栄と盛んな交流となっている」
「姫、もし再び戦争になろうともわが王国が負ける事などございませぬ……無論私めも戦争は反対、平和が一番と思っております」
「平和が一番、良い心がけだ……して、訪問はいつにしようか」
「早くても失礼、遅ければ姫様のど忘、否、決意が揺るぎましょう、ですから再来週が良いかと」
「うむ……ではあす書状をしたため」
「そんな流れになろうかと、すでにここに書状は書いております……ですから後は、文面を確認のうえ、姫様の署名と印をお願いしたいと」
「相変わらず抜け目なく……ん、まだよは元老院らの手の上で踊らされておるのか」
「そのとおりですが、少しづつでありますが進歩されておりますので……私達と並びたてる日を楽しみにしておりますぞ」
髭を揺らし優しく笑う元老院から、書状を手に取ったべリハは早速文面を確認するなり
「文面が大人しいが、よかろう」
と羽ペンで署名し印を押し、丸め、赤いろうを垂らし印を押した
「狂子、ビギナよ……今晩より帰国次第、これを王子に、イージス城に届けてはくれぬか」
何気なく渡された書状に、ビギナの手が震える
「せせ責任重大だ、どうしよう」
「うんいいよ、でも、門前払いくらいそうだから、少し時間はかかるかもだけどギルドを通して渡すよ」
「頼んだ……ギルドへの報酬は訪問した際に支払おうと思う」
そうして、ひとしきり談笑した狂子達は……星空の下、べリハ、イツキ、千世、「くれぐれも頼みましたぞ」と連呼する元老院達と、他種族の護衛に見守られながら
深夜便の船で、交代交替に寝ながらイージス王国に戻った




