疑問検証(前編)(元の世界)
『千世ちゃんて、実は強い子』と疑問を抱いたまま朝を迎えた。
(今日は四時間目に体育があるのに、ろくに眠れなかった……しんどい)
「お」ひらめきに声が出た
(『女子ソフトボール』これはつかえる)
……そして、四時間のグラウンド……。
「よし、二チームに別れろ」
普段なら『いじめられない様に』無理やりにでも千世を同じチームにするあたしだけど、今日は違う。
案の定、暗黙の了解で近づいてくる千世の肩をつかみ回れ右をさせ、敵チームに差し出す。
当然、千世はおろかクラス全員が驚く
「え。きょうちゃん、なぜ⁈」
不安でいっぱいな声を出す千世
「ごめん、たまには、対戦するのも良いんじゃないかと思って……あ、敵チームの皆さん。分かってると思うけど『負けたのは千世ちゃんのせいだ』なんていじめないこと」
などと勝利宣言まじりに言葉を付け足した。
(これでよし……千世ちゃんの運動神経を対戦し感じてみたい)
と自身に言い聞かせ……三回表。体もあったまってきた
マウンドに立ち顔を上げると……なんともご都合主義に、千世がバッターボックスに入ってきた。
得点はゼロ対ゼロ。ツーアウトのランナー無し。
(これなら千世ちゃんがどうなっても、さほど影響はないか)
ニヤリと笑う狂子に、何やら疑いの視線をかえす千世。
(もしかして考えが読まれた⁈)
なんて焦る心を一呼吸し落ち着かせ、ボールを握った右手を突き出し
「直球勝負!」
大きな声で宣言するあたしと、うなづく千世に『おお』と会場がどよめく。
運動神経の差から『千世が狂子の直球をとらえるなんて不可能』結果は明らか……だけど、この組み合わせは最初で最後の好カードだと、視線が注がれ……流れ弾に当たりたくないキャッチャー、審判は一メートル以上バックする。
ピッチャーゴロでも、とにかく塁に出ようと、千世は当然バントの構えで『来い』と言わんばかり、やる気十分な表情を返された狂子は、ボールが大福のようになるまで
必要以上に、滑り止めの粉を付けた
セットポジション……風を切り回転する手から放たれる速球は矢の如く……千世の胸へ
全員が言葉をなくす
「デッドボール」
「「え⁈」」
バットを落とし、しゃがみ両手で胸を押さえる千世……これには普段彼女をいじめていた女子までが、思わず駆け寄ろうとする、眼前に狂子が
「ごめん手が滑って。大丈夫⁈」
千世に駆け寄るなり、バットと彼女を見『あ』と声をもらし、渋い顔をする
そう、バットのグリップには白い粉がたっぷりと付着し……彼女の胸には型抜き(バッド)みたいな丸い汚れが広がっていた。
(これって……千世ちゃん、ボールが当たる瞬間、左手を放してグリップでバントしてる……なんて『マンガみたい』考えすぎか)
考え黙り込む狂子を見ながら、すねた声を出す千世。
「ひどいよ、きょうちゃん、もしかしてわざと」
「ホントごめん。手が滑って……保健室行く?」
一変。頭を下げ申し訳なさそうな声を出す狂子に『実は怪我なんていていない』千世も視線をそらし(状況的に断れない)小声でうなづいた。
「あ。はい」
返事を聞くなり『言質を取ったぞ』とばかり得意げな顔で担任に
「先生、暗木さんを保健室に連れてきます」
「お、おう。頼んだ」
二人で校舎へと向かった……そして授業中で人通りのない廊下。
(保健室に着いたら狂子にケガした振りがばれる)と挙動不審になる千世。
(彼女にボールは当たってない)と予測し横目で千世の胸を確認する狂子。
(あれ? もう胸を押さえていない……よしゆさぶってみよう)
「ホントごめんね。胸押さえてないけど、まだ痛い?」
「え、うんと、うん大丈夫みたい……だからきょうちゃんは授業に戻って」
「いや、だっであたしのせいだもん……人が居ないから、ボールの当たった胸見せて」
「いや、恥ずかしいよ」
「何で? 異世界じゃお風呂で裸見せあった仲じゃん」
「恥ずかしい事言わないで! あれはお風呂だから良いの、そんな事より、今日の同好会活動だけど」
「昼休み、花壇の土が乾いてたら水やり……放課後、余裕が有れば雑木林に在る倉庫までの獣道の草刈り……でも胸が痛かったら無理しないで、あたしに任せて」
「ありがとう、でももう大丈夫だから」
と言っている間に保健室の前
千世の「大丈夫だから」と手を伸ばすよりも先に、狂子が勢いよく戸を開け「先生!」と声を上げるが返事や物音が返ってこない……見渡し……先生は留守のようだ
「先生居ないけど、ベッドで休んで」
「ううん……ベッドを使う程じゃないから、体育が終わるまで、窓際の椅子で休んでる……だからきょうちゃんは早く授業に戻って、勝ってね」
「うん……おだいじに」
千世に促されるまま、狂子は一人保健室を出ていく
そして昼休み、晴天が続いているせいか、乾いた花壇に水やりをする二人
ふと視線を感じ
(メガネ君先輩かな……ちゃんと活動してるか監視してる?)
と目を向ける狂子の予想は、見事にはずれ……視線の先には、先の思わず腰を上げた、いじめっ子女子二人
しかし、見ているだけで何かをしようとはしていない事に安心する。
そうして放課後……一時間ほど草刈りをし、下校の途についた……そして山門前
「また明日……ホント今日はごめんね」
「そんなに自分を責めないで下さい、避けられなかった私も悪いんですから……それでは、また明日、さようなら」
「うん、ばいばい」
そう言い手を振りあって別れ……数秒後ふり返ったあたしの視界に彼女の姿はなかった。
(やっぱりもう一度……異世界で確かめるしかないか)
次のひも、例の女子たちは見ているだけで何かをしようとはしていない事に安心する……するけど、ああはっきりしないヤツが嫌いなんだよね。て、はっきりしないと言えばあたしの千世に対しての疑念もそうだ
と気付かされ
道具を倉庫(部室)に片付けているのを利用し
「せっかくだから異世界に戻らない」
「急ですね」
「嫌?」
「いえ、その……『コーラーをお土産に戻ってくる』って約束は?」
「忘れてた……じゃあこの後、買い物に付き合ってくれない」
「良いですが、私もお金、協力させてください」
「ありがとう助かるよ。だったらついでにポテチチップスも。いっぱい買っていってあげよう」
そして放課後、狂子達は近所のスーパーにて
「これなんてどうですか?」
「いいね、あ新商品だ」
などと談笑し、異世界に居る友人達の喜ぶ顔を想像しながら、買い物かごいっぱいに詰め込み
目を丸くしてるレジ店員や他の客をよそに店を出る
千世の自宅に着くなり、狂子は忘れないうちにと電話を借り
「ママ、ちいちゃんちと、異世界によって帰るから心配しないで、七時までには帰るから、夕飯用意しててね」
『ケガしない様に。それと、くれぐれも異世界で死ぬなんてない様に気をつけて帰ってきなさいね』
何とも浮世離れした会話だろう……この親にしてこの子あり、逆か……とでも言いたげな苦笑いを浮かべる千世をの手を引っ張る狂子
「異世界に行く前に、一緒にお風呂入ろう」
「はい……でも、異世界につけば、以前の温泉に入った身体状態に戻るので問題ないのでは」
「分かってりけど、元の世界に戻ってきた瞬間汗臭かったら……ね」
「はい」
そして入浴中
「いつここ(元の世界)に戻る予定ですか?」
(そりゃ『あたしの疑問が晴れてから』て言いたいけど)
「一緒に盗賊退治ができるようになって、仕事が終わってから」
「はい」
「千世ちゃんの部屋から異世界に行きたい」
「いえ! その私の部屋……そう散らかってるので、広い本堂から行きましょう」
読んでいただき、ありがとうございます。
『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第十八部『ストーカー狂子』
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by.メガネ君(作者)




