帰還そして、疑問(前編)
元の世界……放課後。
古びた物置の中。点滅する蛍光灯が照らす、埃っぽい床を『今や遅し』とうっすら笑みを浮かべ、メガネを輝かせるローブ姿のメガネ君先輩が立っている
狂子と千世が異世界より帰還してきた
「ふふふ、待ってたよ」
彼の声に狂子は顔を上げ、思わず一歩下がりこわばった笑顔を返し
「メガネ君先輩、待っていてくれたんですね」
「可愛い後輩の為なら、おやすい御用さ。で『同好会に入るか』の答えを聞こう」
彼が横へスライドし、背後のテーブルに並べたプリントとボールペンをさすなり、あたし達は、迷うことなく声をそろえ「「入ります」」と答え……名前とクラス出席番号を書き、彼に手渡した。
受け取ったメガネ君先輩は、にやりと笑い説明を始める。
「良いね。予想通りの良い返事だ……物置のカギは、入り口立札の裏側に隠しておくから、自由に使ってくれ」
「ありがとうございます」
「うん。しかし注意と義務がある……まずは注意、物置には必ず鍵を持ったまま入り、中から鍵を閉める事」
「それじゃここは密室に」
「そのとおり、誤差一分前後で戻ってこれるうえ、ここはほぼ使われない倉庫だが……偶然入ってきた者に、転移するところを見られるのは、なにかとまずいだろ?」
「確かに」
「そして義務……これで君達は自然観察同好会に入ったんだから、出来る限り毎日同好会の活動をする事」
「何をすればいいんですか?」
「そんな身構えなくても、簡単な事さ……放課後、昼休み毎日適度で良いから、中庭等の掃除や、水やりなどをするだけでいい」
「はい、分かりました」
「プリントは明日、職員室に届けておくから、今日はそのまま帰ってくれて大丈夫だ。それでは明日から頼んだよ」
「「はい」」
「それでは僕はお先に失礼する……カギはテーブルの上に置いてるから戸締り頼んだよ、では」
とメガネ君先輩は手を振り、ローブ姿のまま去ってゆき……狂子達は
(その服装で街中歩くの? もし捕まっても、あたし達の名前は出さないでね)
彼の背中を、唖然と、心配そうな表情で見送った。
数分後、落ち着いたところで狂子が口を開く
「ちいやん、あたし達も帰ろうか」
「はい」
狂子達は言われた通り、鍵をかけそれを隠し……夕日に照らされる校門をあとにした……帰り道、人影のない細道で(ここでなら)と狂子は立ち止まり声をかける。
「ちいちゃん、お願いがあるんだけど」
「はい何ですか?」
「うん、今後異世界での事なんだけど……用事とか、クエスト仕事の途中なら待つからさ……あたし達、一緒のタイミングで異世界とこの世界を行き来出来ないかな? その方が話題が合わせられるから」
「良いですよ。というより……実は私も、同じ事考えていました……確かに、同じタイミングじゃなきゃ、異世界で会うきょうちゃんと、学校、テレビの事を話しても、かみ合わないから」
「そういう事……だから良いかな」
「もちろんです……ではデバイスを通して連絡しあいましょう」
それからしばらく歩き……正面に千世の家『中二寺』の山門全体が見える橋の上。狂子は気になっていた(模擬戦をした千世ちゃんの動き、あれってホントに異世界だから、なのかな)と思い、川で泳ぐ鯉を夢中で見下ろしている千世の背後にゆっくり近づき声をかけ
「ちいちゃん」
「なんですか」
一呼吸おき、振り返ろうとする千世の頭めがけて、手刀を下ろし、見事ヒットさせる。
「いた!」
頭を押さえ距離をとる千世に、動揺する狂子
「え。あれ?」
「あれ? ってひどいよきょうちゃん。なんで」
「ごめん。だって異世界と同じように避けられるのかなって思ったから……ホントにごめんなさい」
「そんなことだろって思った。こぶとか出来てないから、許します……でもあれは異世界だから出来たことで、元の世界の私の反射神経じゃ無理だから……今度やったらきょうちゃんでも、怒りますよ」
「うん、ごめんね」
そして山門前で別れた狂子は何度も『あの一瞬』を何度も思い返しては
(さっきのあれ。ちよちゃん、チョップする手を見てたよね? もしかしてわざと当たったのかな?)
と浮かぶ疑問に首をひねりながらも、まっすぐ帰宅した。
「ただいま」
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『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第十七部『帰還そして、疑問』
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by.メガネ君(作者)




