狂子ミドルニア訪問(後編)(温泉編)
「狂子、お前なかなかいい太刀筋してるじゃないか……流石は静江さんの娘だ」
「ありがとうございます、イツキさん」
「うん……もう少し鍛え(頭を)、落ち着いて相手に立ち向かえるようになった時……武舞台の様な平地なら、さっき口走ってた『あたいとの手合わせ(じゃれあい)』考えてやってもいいぞ」
「はい、頑張って強くなるので、ぜひお願いします!」
「おう」
あたし達を先頭に元老院、計七人は裏庭を火山の方へ、しばらく歩き……石レンガ造りの立派な建物に入り、階段を降りると、銭湯でおなじみ『男。女』
ののれん扉が松明に照らされている。
思い出し笑いしたべリハ
「ふ。ビギナとやら。お前とはここで一時のお別れだ。しかしまあ分かっていると思うが『老人に囲まれるんが嫌』だからと言って抜け出し、女風呂に来ようものなら、その瞬間、永遠の別れとなろう……それと別に、見ればわかると思うが、露天風呂には浸からぬ事をすすめる」
「はい、気を付けます」
「うむ良い返事だ。ではな」
一行は男女に別れ、貸し切り状態の『ドキドキ、バスタイム』を始めた。
まずは男風呂から、ここは脱衣所。ビギナの前で中年男が次々にその裸体をを披露していく。
「何を恥ずかしがっとるのかね」
肩を狭めるビギナに、御年二百歳以上と思えない筋骨隆々のドワーフ。
ドン・トリーノ
「相変わらずのムキムキ爺さんだな」(シュセン)
「お前こそ、相変わらずのわがままボディーじないか、その肉そいで食ってやろうか」(トリーノ)
接待のたまものだろう、豊満なシュセン・ドルゲン
中年男が互いの腹を触りあっている
「お前ら二人と違って、人族は寿命が短い。だからこそ『太く短く』がわしの人生だ……短いと言えばログよ。そのガリガリボディー、エルフ族のくせしてわしより早く死んでくれるなよ」
「貿易に内政。ストレスばかりでやせてしまうのだ」
男風呂……浴室ビギナは一人、硫黄の匂いの中かすかに鼻を刺す加齢臭を感じながら。
(思春期の男だから……しょうがないじゃないか)と、壁の向こうから漏れる女性陣の会話『桃色吐息』を聞いてやろうと澄ます耳に聞こえるは……。
「うぇ~」
「あぉ~」
「おぅ~しみるわ~」
『年寄り吐息』にうつむく湯面から漂う複雑な香りと……悶々としながら、元老院の爺エキス入り温泉を楽しんだ……以上!
そして男性読者お待ちかね女風呂……脱衣所。
「温泉、温泉」
鼻歌まじりに服や下着を脱衣かごに投げ込み、全裸になったあたしはそばで固まっている千世に
「ちいちゃん、どうしたの? 温泉きらい?」
「ううん」
「だったらなに」
「裸見られるの恥ずかし」
きいたことがある『女同士でも裸を見られるの恥ずかしい』という認識があるらしい。けど、理解できず顔をしかめていると
「おお!」
感嘆の声を上げながらべリハが、あたしと千世の間に割り込んできたかと思えば……あたしの胸をまじまじと見てる。
「なんでしょう」
笑顔を引きつらせりあたしに。次の瞬間
「えい」
あたしの胸を揉もうとしたのだろうが(サイズ的に)無駄な事……あたしの胸の上で拳をつくってる。
「な!」
顔を真っ赤にし、後ろに飛ぶあたし
(あ……千世の気持ちが理解できたがする)
睨みつけるあたに、べリハは嬉しそうな声で両手を広げる。
「やはりよの見立ては間違ってはおらんかった! その未来へ希望に膨らまんとする胸(心)大地。狂子こそよの胸の、否、共通の悩みを分かち合える同志だ……どうだ、よと二人だけの同盟をつくらぬか⁈」
両手を広げ近寄ってくるべリハに危機感を感じ、思わず後ずさるあたし。
……そんな様子を見てたイツキが胸をゆらし声をあげ笑う。
「ははは、断られてやがる。で、何て名前の同盟に勧誘してたんだ……もしかして『小さい胸同盟』とか?」
「ぐ」
図星をつかれ、悔し顔で固まるべリハを見て、一層大声で腹を抱えて笑うイツキ。
「ははは図星か! でもその同盟も、いつまでもつことやら」
「どういう意味だ」
おちつくイツキ。
「はあ笑った……ちょっと考えりゃわかるだろ、狂子はあたいらより五つも年下で育ち盛り……もってあと二年だろうな」
「え、ほんと」
(あたしの胸、二年で大きくなるの)
イツキの言葉に心動かされ、にやりと笑いながら自分の胸を撫でるあたしに『こうしちゃいられない』と声を上げ、べリハが反論。
「うるさい。狂子もそのようなヘリクツに流されるでない」
「ヘリクツなもんか。理由ならあるぜ、狂子は『あの(巨乳の)』静江さんの娘だ」
「それを言えばよの母上……は記憶にないが、イージス王国におる叔母の胸……く……これも魔族の呪いか……おのれ魔族め」
(小さいんだ)察するあたし
『やれやれ』と息をもらすイツキ
「おいおい、魔族がかわいそうだろ」
「なにお!」
……終わりがみえない口喧嘩……と。
「クション!」
(いつの間に)脱いだのだろうか。裸にタオル一枚で、大人しく待ってた千世がくしゃみをする。
「わるい千世よ……それではいざ!」
木戸を開けるなり、湯気と熱気が……そして女風呂の内装、壁はむき出しの岩肌、そこから滝のごとく流れる源泉垂れ流しの大浴槽層。
そして何より目を引くのは正面。巨大ガラスむこうに見えるマグマが『ここは火山だぞ』と証明している。
「湯につかる前に体を洗うこと」
そして
「はあ、やっぱ風呂はいいわ、胸の疲れが取れるってもんよ」
「はい」
「千世までしつこいぞ……それは、よと狂子への当てつけか」
「ごめんなさい」
「いや思わず口から出たとはいえ、すまない」
「イツキさんとビギナの出会いをママから聞いてたら、ちょっと気になることが」
「なんだ? さっきの(失言)わび代わりに答えてやる」
狂子は(その言葉を待っていた)と一瞬ほくそ笑み言葉を続ける
「じゃあ遠路なく……ビギナの事をどう思っているんですか、ずばり好きですか⁈」
よくやった、仕返しだと言わんばかりに、べリハがにやりと笑いながら、イツキにねじり寄る
「おお、自分より強い男が好きだ、などと言うお前が……小枝の様な男をそばにおき続けるなど、筋が通らぬ……確かに、気になるな」
「は、す、好きとかそんなの分かんねえよ! ほら狂子ならわかるだろ、あいついろいろ気が利くし、弱いから歯向かった時は殴っていうことをきかせたり子分として
申し分ない……それに、あのサラさんの息子だぞ、飯がうまいから一生そばに置いておきたい」
ニタニタ笑う狂子とべリハのそばで、イツキを見つめる千世
「それって結婚」
「そんなんじゃねえ、専属の料理人だ……ああもう、あたいものぼせちまって、何言ってんだか、とにかく答えたろ……体洗ってくる」
たしかに、のぼせたように顔が赤いイツキは、勢い良く立ち上がるなり、そそくさと湯舟を出る
「ははは、何とも良い気分よ……と、よは露天風呂に入ってくるとしよう」
べリハは、分厚いガラス戸に向かう……外には煮えたぎるマグマ、と側には専用露天風呂と書かれた立札が
「皆は真似してはいけな、いや逝けはするな、よし……皆は真似したら、死ぬぞ」
と一言、外に出るなり髪を下ろし、ちゅうちょなくマグマにその身を浸け……息を漏らし、なんともリラックスした緩んだ表情を見せる
よく見ると彼女の銀髪が、まるで電熱線の様にマグマの赤に染まっていく
数分後……狂う子と千世も、のぼせて来たのかさすがに限界と湯舟を出ようとした時
ボコンと爆発に似た音と共に、マグマ風呂のベリハも立ち上がり、狂子達を見ながら髪に着いたマグマを両手で払った……その飛び散り広がるマグマはまるで
フェニックスの羽の様と、彼女の髪色は気付けば銀髪へと戻り、光沢が増していた
これは、あとから聞いた話だが……なぜマグマに浸かっても髪の毛一つ燃えず、平気なのかと質問したところ
過去……王位など継げぬ幼少の頃に両親が生贄となり、マグマにその身をささげた時……神、いな悪魔はそれだけでは気が済まなかったのかべリハまで呪いがかかり
、マグマに入れるようになった……だがそのおかげで不死身とか噂され、命を奪狙われることは一切なかった
そして風呂を出て……夕食を食べた狂子は休憩中、千世に
「早いと思うけど、元の世界に戻らない?」
と提案
「良いですよ……でも」
「もう帰るというのか……もしや、よの城が国がつまんなかったと⁈」
「ううん、とても楽しい……異種族も沢山いて、千世じゃなく、あたしがこの国に転移していたらと思うくらい……でも、ちょっと気になることを残していて」
「あ……入会届」
「向こうの学校の中にも何かのギルドが有るのか?」
「ううん……こっちの世界と行き来しやすいようにと、メガネ君先輩のはからいで、進められてる同好会」
「「入ってみようと思って」」
「メガネ君先輩……どこかで聞いた事が有るような」
「うん、ビギナが以前教えてくれた、旅人さんの正体……あたい達とは逆パターンで、ここの世界の人間」
「それはそうと、二人とも、必ず戻ってくるのだぞ」
「うん、皆の感覚で数分後には戻って来る……しかも人数分のコーラ、コラペリのお土産付きで」
「そいつは楽しみだ」
「それじゃ」「「行ってきます」」
「「「いってらっしゃい」」」




