狂子ミドルニア訪問(後編)(ミドルニア城にて)
そして三人は、一路ミドルニア城へと坂道を登ってゆき……城が見えて来た。
「……て。言ってるまに城が見えてきた」
衛兵が居ない立派な門をくぐると眼前にそびえるのは
「城というよりは、大きな洋館か宮殿みたい」
「うん……数年前も来たけど。相変わらず、ちょっと不気味だよね」
「分かってないなビギナくん、そこが良いんだよ」
談笑していると、千世が扉を開け手招きする
「気に入ってくれた様で良かった……さあ早く入って」
『お言葉に甘えて』と入ったら体育館ほどの大広間が。周囲の彫刻など雰囲気に圧倒されてると……。
「おお千世。よくぞ無事戻って来てくれた!」
響く大きな声に目をやると……正面の階段から、例の女王らしき女性が速足で降りてくる。
「はい。ただいま戻りました、マスター」
数日ぶりに聞く彼女の声にあんどし、笑顔で肩を抱き出迎えるベリハ……だが。
「感動の再会邪魔して悪いな。マオウサマ」
割り込むイツキに、不機嫌な顔で言葉を返す。
「何だ、また来たのかイツキ……元老院の爺らに報告なら会議室におるぞ」
正面二階の廊下を指さすべリハの腕を下すイツキ
「用があるのはあたいじゃなくて」
「その、マスター……紹介したい人が、居ます」
「おお。たしかに見ない顔が一人おるな」
「はい……親友の」
「どうも初めまして、鬼道狂子です……千世のマスターさん、軽装鎧とドレスの良いとこ取り、素敵です」
「おお。この良さが分かるとは、お前なかなか見どころがあるな……よの名は、ミドルニア・イルネス・ベリハ……由緒正しき魔王族の血お次ぐものなり」
「はは、出たよなんちゃって魔王」
「うるさい……て、鬼道……その目の雰囲気。いや、もしかして……静江という者を知っておるか?」
「はい。あたしの母ですが」
あたしの返事を聞くなり青ざめるベリハ
「その、お母さまには大変お世話になり…………」
後から聞いた話だけど……その昔、言葉や力で説得され……王という肩書にふさわしい人間になるため努力するようになり……ママは、べリハ以外からとても感謝されたらしい。
「おひさしぶりです。ビギナ・スター、です……その、あの……なぜそんな怒った顔をなさるのですか……僕、いけない事しましたか?」
女の談笑を邪魔するなと、ひきつった笑顔で返答するべリハ
「いやいや。ビギナひさしぶりだな……さぞここまで来る空の旅は、女三人に囲まれ、さぞ夢心地のいい旅であったろう」
「両手に花であった事は確かでしょうけど、背後に居たイツキの視線はいばら、というよりも栗のいがみたいでした」
「ははは、言いよる」
「ははは。ほんとに……よし後で覚えてろ」
と、ひきつった笑顔のイツキの台詞に、青ざめるビギナ
などと楽しく談笑していると
「おやおや、お客人ですかな?」
怪訝そうな表情をするベリハ。
楽しい談笑を遮る老人の声に、怪訝そうな表情で返事するベリハ。
「ああ」
彼女の視線たどると……にぎやかな声に誘われたか、二階廊下をこっちに向かってドワーフ、人間、エルフ、男三人の姿が……階段を降りあたしたちの前に整列。
「これはこれは、ビギナ殿。お久しぶりです」
「はい、お久しぶりです。ドン・トリーノ様……半年ぶりですね」
「おいドン・トリーノ。外交担当でもないお前が、どうして他国のギルドの人間を知っている」
「はい……イージス王国で行われた抑止会談(抑止力自慢)の帰り……なぜか護衛とはぐれ、道に迷っていたところ、運よく、見回りをされてたビギナ殿と出会い」
「はい、本当に運がよかったです。あの路地は時々ガラの悪いヤツが現れるので」
(以前ビギナがカツアゲと、イツキに会った通りか)
「軍事を担当するものが直接出向くなど……一歩間違えれば、宣戦布告とみなされるぞ、何を考えておるのだ!」
心配そうな口調で声を上げるベリハへ、髭を揺らす様に笑い言葉を返す
「いえいえ、あの様な会談、互いの軍事力の自慢ごっこ……茶番……張り子の虎が威嚇している様なもので、お気にされる程のものではございません」
「そうか……だがきおつけよ」
「はい……今は友好国であっても、かつては敵国……いつ裏切られるか」
「こら、彼らの前で、言葉が過ぎるぞ」
「これは失敬……しかし、外交も商売同様、内心では相手を疑ってかかるものでございます」
「分かっておるわ」
不機嫌そうに顔をそむけるべリハをよそに、自己紹介を始める。
「わしは軍事担当……ドンパチ・タマ・トリーノ(通称ドン・トリーノ)だ……よろしくな嬢ちゃん」
と、髭面のドワーフが頭を下げるのと入れ替わるように
「私は、商業、工業担当の……シュセン・ドルゲン……皆様同様、人間でございます」
頭を下げる小太りな男のそばに立っていたエルフが口を開く
「最後に、貿易および、政治担当……ログ・ウエストでございます」
と、初老のエルフが頭を下げ……ビギナの前に歩み寄ると、少し上目づかいで質問をする
「してビギナ殿……最近王子は、いかがですか」
「元気ですよ」
「それは長乗……して『アストラルワークの研究』とやらは」
「これといって……」
その言葉に、ベリハが笑いながら口を挟む
「あの男、体内アストラル容量にセンス、ほぼ無いくせして、可愛いものだな」
「どういう意味?」
「お前にも言ったか、世には魔族の血が流れておる……ゆえに相手のアストラル量や才能を、ぼんやりとだが感じることが出来る」
『ほんとかよ?』とばかり鼻で笑うイツキに一瞬むっとするべリハだが、気をとりなおし
「このような所でただ話すだけ、というのもつまらんし……長旅で疲れているであろう。そこでだ、よの城自慢の温泉にて『女同士、裸の付き合い』といかぬか?」
「お前にしちゃ気がきくじゃねえか」
「温泉、いいね」
「はい、お供します」
「では行くぞ!」
短いマントをひるがえし、上機嫌で歩き出すべリハへ『ここぞ』とばかり興奮気味に質問するビギナ。
「ぼ、僕も一緒に入っていいんですか⁈」
「「「「は⁈」」」」
………女性陣の視線が(本性を現したかこの、変態メガネ猿が)と言わんばかり、一気に冷たくなる。
「おいおい、駄目に決まっておるだろ……ちゃんと男風呂もあり、しかも、元老院のじじい三人衆のダシがしっかり出ておるぞ」
べリハの言葉を聞くなり『仕事を中断できる理由ができた』と元老院の一人がすかさず口をはさむ。
「ビギナ殿どうですかな。こちらも四人で『男同士、裸の付き合い』とまいりませぬか?」
「え。いや」
あわてるビギナの姿に笑うイツキ。すかさず元老院がたたみかける
「それは良い。追加ダシといきましょうか」
「わし等も、ビギナ殿から若者のダシを吸収できそうだ」
「さあ、早速行きましょう」
背中を押されながら地下の内風呂へ連行されるビギナは『最後のあがき』に声を上げあたし達に視線をおくる。
「分かりました一緒に行きますが、出来れば僕も温泉がいい」
「許可する!」
ベリハの声に安堵のため息を漏らすビギナ……に、テンションを上げはしゃぐ元老院。と、ベイハがくぎを刺す。
「ただし、温泉には体を洗ってから浸かること。とくに元老院の三人『天然温泉じゃ、ヒャッホーイ』などと野生にかえらないこと」
「「「「はい」」」」
……そんなこんなで、元老院との話を終えたあたし達は、城の裏手へと向かう。
「ふふふ何を隠そう、よの自慢の風呂は裏庭にたつ分厚いレンガ倉庫内の洞窟に入り、地下にある」
「凄い、洞窟風呂なんて初めて」
「驚いてくれるは嬉しいが、よの口上を邪魔するでない……気をとりなおし。さらに洞窟風呂は、火山の恵みともいえる天然温泉……更に、呪いを受けしよだけがしか浸かれぬ獄熱の露天風呂が有るのだ」
「ああ、あれな」
少し呆れ気味に笑うイツキ
そして……両開きの木戸を開け裏庭に出る。




