狂子ミドルニア訪問(中編)(ミドルニア到着)
とっていに渡り板がかかり……下船する乗客を見ながら『動きやすくなったからもう少し船内を探検しようかな?』と悩んえいるあたしの肩をたたき、言いずらそうに頭をかくイツキ。
「たびたびすまないけど、あたいと千世でボートを降ろして来るから……いやなに、すぐ戻るから狂子達は、このとっていでも散策して待っててくれないか?」
「はい……企業秘密じゃなきゃ、あたし達も手伝えたのに、残念です」
「すまないね、千世行くよ」
「はい」
イツキと千世が、軽く頭を下げ駆け足で遠ざかっていくのを、悔しげな表情で見送るあたしの肩に手を添えるビギナ
「仕方ないよ、行こう」
「うん」
「乗客の皆様、大変申し訳ございませんが、お早くお降りください」
せかすように背中を押す船員にうながされるまま下船した。
(もう少し船内探検とかしたかったな)
とっていで恨めしそうに運搬船を眺めるあたしの耳に『ガン、ガン』とドラの音が響き、呼応するようにとっていに立つ作業員も、ドラを鳴らしすと
『待ってました』
とばかりオークたちが群れをなし、運搬船へなだれ込んだと思えば……略奪のごとく勢いで積み荷を運び出している。
そんな迫力ある光景をあたしは目を輝かせ興奮気味に見ている
「お待たせ。案内するから、とりあえずそこの倉庫街(港町)にでも行こうか」
「おお雰囲気ある」
白く光るしっくいに、色とりどりな建物。いかにも『立派な街だろ』と主張しすぎのイージス王国とちがい。
火山のおかげか、周囲の工場から出る煙るのおかげか、すすけた灰色の壁に、連がむき出しの建物『無骨。だからこその重厚感』まさに男の、職人の町といった感じがあたしの心をつかみ……さらにダメ押しの!
目の前を行きかう、他種族の光景に、興奮!
「ちいちゃん、落ち着いて」
「無理! ……だって見てよ。そこ、耳の尖ってるのはエルフ。髭面で昼間から酒くさい小人のドワーフ……他にも沢山の種族がゆきかって……これこそ異世界、あたしもミドルニアに転移したかった」
「ははは……喜んでくれてる様で、あたいも連れて来たかいが有っるってもんだ」
誇らしげな顔をするイツキとは反対に、取り繕うような早口でビギナが質問する。
「イージス王国だって、良いですよね?」
「うん確かに、中世ヨーロッパそのものって感じが良いよね……でも人間ばかりで、異種族が居ないというのは、あたし的にはちょっとね(単なるテーマパーク)」
もっともな意見で反論に困ったのか「うう」とうなるビギナをよそにイツキが
「狂子、たびたびすまない。ギルドのオヤカタに報告しなきゃいけねえから事項が、ちょっとだけ抜けさせてもらうよ」
「はい」(意外と仕事熱心)
「いやなに、すぐ合流するから。千世……街を案内しながら、狂子達を『なんちゃって魔王』の所へ連れてってやんな」
「はい」
千世の返事を聞くなり、イツキは倉庫の路地裏へ姿を消した。
「イツキさん、凄い身のこなし……ん。『魔王の所へ』って、もしかしてちいちゃん、魔王に会ったことあるの⁈」
「はい……この国を治められてるかたで、私が仕えるマスターなんです」
「へえ、王様なんだ」と、あたしの脳裏に王子のにやけ面が浮かび
「でも、だからってちいちゃんをいじめるような奴だったら……あたしも『自称勇者』になって、きっちり挨拶しなきゃね」
「やめて」
千世が両手であたしの拳を押え、視線を合わせ言葉をつづける
「『魔王』と言ってるだけで、とても優しくておしゃれな女性で、異世界に来た私に居場所を与えてくれた人なの」
「うん。優しい人みたいで安心した(なら普通に挨拶しなきゃ)……でも『おしゃれな女魔王』ってぐたいてきにどんなかんじなの」
「では横を見てください」
千世が指さすものそれは、ポスターに団扇、はてはキーホルダーにフィギュアなど……まさにアイドルグッズだ。
「これイージス王国でも見たことある。国をまたいで人気者なんて」
(……いやでも真顔でそんな……てことは)
戸惑うあたしに、言葉をかけずらそうなビギナ
「彼女が、私のマスター。ミドルニア女王『ベリハ・ミドルニア・イルネス』様です」
「え女王⁈ 旅芸人の歌姫じゃないの」
一国の女王に失礼極まりない言葉を叫んで『まだ信じられない』と固まるあたし……そこに背後からイツキが現れ、笑いながらあたしの肩をたたく。
「ははは、そうなるよな……しかも驚けこいつ、あたいやビギナと同じ、十八歳なんだぜ」
「え」
そして三人は、一路ミドルニア城へと坂道を登ってゆき……城が見えて来た。
「……て。言ってるまに城が見えてきた」




