狂子ミドルニア訪問(前編)(いざミドルニアへ)
昼前の人通り多い運河沿いを歩いていると……。
「お、見えてきたぞ」
イツキが指さす先には、積み下ろし最中の運搬船が停泊して、とっていは混雑している。
(今からこれに乗るのか)と思うだけで、一層大きく思える船に興奮し……走り出そうとするあたしの肩をイツキがつかむ。
「すまねえ狂子。あたいと千世は、ここまで来たボートを積み込まなきゃいけねえ……すぐ終えて戻るから、ちょっとここで待っててくれないか」
「え、そんな水臭い。力仕事ならあたし達も手伝います」
胸を張るあたしを『どう断ろうか』悩むイツキのそばで千世が、頭を下げる
「ごめんなさい、気持ちは有り難いんですが、そのボートはギルドにとって『企業秘密』みたいな物だから、見せられないの」
「うん。だったらしょうがないか……あたしとビギナは、邪魔にならないよう、とっていの先の方にいるから……ビギナ行こう」
「すまん、すぐにすむから。行くぞ千世」「はい」
そして約二十分後。
戻ってくる二人
「お待たせしました」
「戻ってくるとき乗船許可もらってきたから……早速乗ろうか」
「あ……お昼とかは」
「船内に簡単な屋台があるから大丈夫」
乗り込む
『カーンカーンカーン』船の警鐘が響き……呼応するようにとっていの警鐘も鳴り
船員。周囲を確認し渡し板を船に収め……係留ロープが解かれ……下流に流される船上で、火がたかれ……あたしの期待を具現化するように音を立て膨らむ、楕円の気球がゆっくり膨らみ……『運搬船』は『飛空船』へ、その姿を変えてゆく
『ギシギシギチッ』あちこちからきしむ音が聞こえ(へし折れるんじゃないか)なんて妄想に落ち着かないあたし……イツキさんに声をかけようとしたとき。
船体がぐらり大きく揺れ……『ザバザバザバ……』水が流れ落ちる音とともに『離水』船体が浮き上がった!
そして……高度を上げるにつれ……海風に押されゆっくり前進を始め……速度を出していく飛行船(もと運搬船)
(感動。そう、大きな乗り物はこうでなくちゃ)
城壁を……国境を越えたころには、手を伸ばせば雲に触れそうなほどの高さを、飛行船は風を切り進んでいる。
(押し倒さらそうな風。だけど。この景色最高……あ。教科書に載ってたとおり地平線って丸いんだ)つまりこの異世界は球体
船首の手すりを掴み、身を乗り出し『絶賛大興奮中』のあたし。
「すごい、ねえすごいよ」
「本当に……って、きょうちゃん危ない」
「落ち着いて下さい、落ちたら大変ですよ」
「だって見てよほら!」
更に身を乗り出そうとするあたしの肩を掴み、引き戻す二人……その様子を笑いながら見るイツキに声を上げる千世。
「笑ってないで手伝ってください」
「ははは、わるい。狂子その気持ちわかるよ、あたいも初めて乗ったときは『この世界はあたいのモノだ!』なんて恥ずかしげもなく叫んでたっけな」
「ははは」
『まったくこいつは。困った奴だ』といった風にあきれ顔で苦笑いすビギナ……そんな彼に気付いたのか、慌てて訂正する。
「はじめの数回だけで! ……流石に仕事で戻るたび乗ってるから、もう慣れちまったよ」
(某アニメ映画のセリフを言いたいけど、こんな高さじゃ人なんて見えやしない)
眼下を流れる森や平地、緑の景色や。岩山の向こうに広がる砂漠。さらに向こうのぼんやり見える景色に『興味しんしん』興奮冷めず。さらに身を乗り出すあたしの後ろでは、なぜか千世がそわそわ回りを見ているしている(狂子が落ちないか、気をそらそうと心配)。
「もしかして、ちいちゃんも見たい?」『交代しようか』
などと振り向こうとするあたしの服を引っ張ると、船尾のさらなる向こうをゆびさし、うれしそうな声を上げる。
「きょうちゃん見て! 後ろ見て……島がある」
「ほんとだ。あの形『天神島』みたい」
「みたいって、もしかして狂子さんの世界にも『天神島』在るんですか?」
「うん。ほんとにそっくりな形の無人島。だけど……かなり昔人が住んでたって噂があるの」
「そうですか。僕達の世界であの島『天神島』には鬼族がいます」
「そうなんだ」(貴族? 別荘なのかな)
うなずき答えるビギナに、軽く言葉を返すあたし……すると
なぜか驚いたような顔でイツキが混ざってきた。
「え、驚かないんだね。さすが静江さんの娘だ……それに、あの島にはあと二つ名前が有ってね、あたいらの国じゃ『火の神島』って言うんだ……まあ由来について短い昔話をしてやろう。あの島はな昔、向こうに。まだ見えないけど。ミドルニアにそびえる火山のてっぺんだった……で、噴火で飛ばされて…………途中、バキアの上空を通った時『飛行する岩』て呼ばれて……イージスの海へ、まるで天からの贈り物みたいに落ちて『天神島』て合計三つの名前があるんだ」
島の歴史を自慢げに話すイツキに、見ほれる狂子を見たビギナは『負けてられない』と目立つように大きな声を上げ、遠く前方に見えて来た景色を指さす。
「ほら狂子さん! 見てください! 正面に見えてきた。あれがバキアです!」
「巨大岩石群?」
良いところを見せようとしたが、あっけなくイツキに横取りされた。
「ここから見たらそう見えるだろうけど……賑やかなんだぜ……朝も言ったと思うけどバキア(あそこ)は獣人たちが幅を利かせている」
「獣人」
(獣人! 会いたい、モフモフしたい)
妄想で目を輝かせるあたしの肩に手をのせた真顔のイツキが耳元言い聞かせるように言葉をつづける。
「ああ、けどな、特に猫耳メイドには気を着けろ」
「え⁈」
その表情と台詞のギャップに、一瞬唖然とすけど(何その夢の組み合わせ)と鼻息荒く興奮しだすあたしに、イツキが念を押す。
「いいな。気をつけろよ!」
「はい」
…………船内で食事などの描写も入れる予定…………
セミの抜け殻の唐揚げを平気で食べる狂子
千世「どうして食べれるの」
イツキ「お、いける口だね、流石は静江さんの娘」
狂子「毎年家族で食べてるし、美味しいから……ちいちゃんも食べる」
千世「……毎年家族でって」
「え……だって毎年ちいちゃんの山で取ってるし、くれるじゃん」
「はい。でもあれは男子みたいに(飾ったりするためじゃ)……もしかして」
「そう食べてんの……もちろんちゃんと洗ってからね」
そして……バキアの国境壁を越え、砂漠地帯に入った飛行船は高度を落とし始め……両脇から帆のような翼を広げる。
「急にど高度を下げて、もう着くの?」
「ちがうよ。砂漠の地表全体からくる上昇気流を羽の帆に受けて……おかげで砂嵐が起きずらいし……ミドルニアに近づいたら火山の地熱などで」
「だからまきを無駄使いせずに済む」
「すごい(エコロジー)」
感心するが横を見ると、イツキが渋い表情で遠くを見ている
「イツキさん、どうしたんですか」
心配するあたしの声に、イツキは一瞬苦笑いし、振り向き口をひらいた。
「いや大丈夫だ……この際だ千世も聞けよ、向こうに岩山が見えるだろ?」
「はい」
指さす先……砂漠の中。蜃気楼のようにぼんやり見えるふくらみが見える。
「そこの洞穴に、あたいらが以前退治した『砂漠の盗賊団』のアジトがあるんだ」
「そこまで分かってるなら、壊滅できるのでは?」
「確かにその通りだが……なかなかの手練れ揃いで……向かっていた隊員は誰一人として戻ってこないどころか、盗賊の頭に説得された、賭けに負けたから等と、
盗賊団に寝返ってしまうから、手に負えない」
「「頭脳派ですね」」
感心する二人に苦笑いするイツキ
「ただの『バクチバカ』さ……ちなみにその男の名は、トニー・ワイル、座右の銘がこれまた『他人の言う事に従い働くだけの人生なんて、負けだと思う』なんて自分勝手な、実に盗賊らしい言い訳だ! ……挙句の果て、あたいが単身で乗り込んだ時に、あいつなんていったと思う?」
「仲間にならないか。とか?」
「惜しい。半分正解かな。正解は……『赤黒の目の色が同じだから』って理由だけで『あたいの事を妹だ』とかぬかして、抱き着きに来やがったんだ……ああ、阿野にやけ面、今思い出しただけでも、気持ち悪い」
「でも手練れの賊長なんですよね……どの様にして戻ってこられたんですか?」
「説得なんてはなから聞く気もないし、あんなクズ達と一緒の穴倉で生きるなんて、まっぴらごめんだね……股を膝蹴りしてやったら、泡吹いておとなしくなったよ」
『ははは』と自慢げに笑うイツキに
『いやいや笑い事じゃないだろ』と股間をおさえ後ずさるビギナ。
そして飛行船は砂漠を抜け……乾燥地帯を抜け、小さな森(防風、防砂)を飛んでいると……行く手に大きな火山が、ミドルニアが見えて来た。
「ようこそミドルニアへ。そのまえにちょっと笑える昔話したいから下見てくれないか」
イツキが、あたしと千世に目をやり、下を流れる焦げた森を指さす。
「この辺りは大昔、エルフの森だったらしんだけど……何十年前かの大噴火で、火事になり……ごらんのとおり半分は今も焼け野原で、もう半分はミドルニアの元老院の『工業化』て口実だけで切り倒され……大半のエルフたちはミドルニアに移住させられ……日の当たらない暗い炭鉱で働かされたおかげか……気持まで暗くなって『俺たちゃダークエルフだ』ていいだした……つまりダークエルフの誕生ってわけさ……悲しい話だろ」
「だじゃれ」
つまらなそうにつぶやく千世に、あたしも苦笑いを返す
「ははっ、ダークエルフって、いったい……」
「伐採した後、植林しなかったんですね」
「千世のいうとおりだ、火山信仰してる国で、自然は大切にしなきゃダメなのに……代々続く元老院の三バカトリオは工業化の金の光に目がくらんでそんな当たり前な事も見えなかったんだろうよ」
「あたし達の国も、昔はそうだったって聞くよ」
「すまねぇな……なんか、しんみりさせちまった……でも見ろ植樹が始まっている」『静江がベリハに知恵をやり、べリハが元老院を説得』
ミルドニアの街並みが見えてくると……飛行艇は、気球の前方を開け、逆噴射代わりに熱を逃がしながら、まるで火山から上り広がる煙を避けるように、みるみる高度を下げてゆき……
とっていを越え……上流の着水用に造られた貯水池に……積み荷が崩れないよう、派手に水しぶきを立てることなく着水するなり、方向転換をした運搬船(もと飛行船)は、羽をたたみ、気球を片付け。人々が待つとっていへ、ゆっくり運河を下りはじめた。
乗組員総出で、気球をたたみ、バケツリレーを行っているのを見て
「あたい達ギルドは、皆の役に立ってなんぼだ……手伝いに行くよ!」
「「はい」」
イツキの号令にあたし達もバケツリレーを手伝った
……そしてとっていが見えてきた
「すごい人盛り」と興奮するあたしに
「適材適所ってことで、力仕事はオーク達に任せてるんだ、ちょっと悪役面してるからっておどろかないで」
そんなの無理、いい意味で驚くよ。流石は異世界
とっていについた運搬船は、渡し板を伸ばした。
読んでいただき、ありがとうございます。
『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第十六部『狂子ミドルニア訪問・後編』
いかがでしたか? 気に入っていたたけたなら是非
ブックマーク ・ ☆一つでも、評価をいただけると……
とてもうれしく、励みとなります。よろしくお願いします。
by.メガネ君(作者)




