ホームシック(短編?)
そして時は、現在にもどり…………。
「てな感じに知り合って……それから何度もおんなじ目にあってるビギナ(こいつ)を助けたり。『エトセトラ』から仕事を依頼してもらったり。そこで静江さんと出会えたりして、今に至るってわけさ……いや他にも色々あるぜ例えば……これなんてケッサクだ」
「わー言わないで!」
身を乗り出すように手を振り、必死に制止するビギナに皆が笑う。
そしてメニューが運ばれ、食事をしていると……狂子が思いついたように、食べながら声を出す
「千世ちゃん、こうして再会できたことだし、ちょうど良いから、今晩一緒に、元の世界へ戻らない? あちこちででママの名前を聞くからきになって(かるいホームシック)」
「はい。私も、お爺さんと家の事が気になってました」
『帰る』と言い出すあたし達に、二人が驚き立ち上がる。
「おいおい、急だな」
「えっ帰っちゃうの。戻ってくるよね⁈」
「心配無用、このデバイスには、互いの世界を行き来した時間と、年齢の身体情報が記録されてるから、互いの世界に人にとっては数分後には戻ってきてると思う」
「うん」
それでも肩を落とすビギナの背中を、イツキがたたく
「狂子ちゃんの言うとおり、静江さんはこの五年間来てないし……多分もう来ないだろうけど。その五年間、呼んでもないのに現世の爺さんは数日前まで来てたじゃねぇか」
「ああ、たしかに」
『あのお邪魔虫か』と言わんばかりの渋い顔を向けあう二人に
「すみません」
つぶやき申し訳なさそうにうつむく千世を、なだめるイツキ。
「いやいや、悪いのはあの現世であって、千世が謝らなくていい」
「……でもどうやって戻るんですか?」
ビギナの質問
「あ」
『ごもっともな意見』と、狂子は急いでナビに質問する
「どうやって、元の世界に戻るの」
『主よ、ようやくですか……簡単です。ただ私に向かい「元の世界に帰還する」と言うか、念じれば良いだけです……加えておきますと、騒ぎを避けるため人気の無い所で行うことをお勧めします』
「あれ? それって、どこからでも行き来できるって事?」
『はい、おっしゃるとおりです』
「て事は、トイレの穴にダイブしなくても良かったって事⁈」
『はい』
「騙された!」
声を上げ、ナビとの通信を終えるあたしを心配するビギナ
「何か問題でも起きたんですか?」
「大丈夫、心配しないで……とりあえず、騒ぎにならない様に、人気の無い所で帰ろうと思うんだけど」
「だったらさっき話した、あたいとこいつが出会った路地裏なんてちょうど良いんじゃないか……あたいらにとって、数分で戻って来るなら、そのまま待っていてやるよ」
そして路地裏……
(ここが二人が会った場所か……男女の出会いには、なんともにつかわしくない)
「相変わらずこの埃っぽさは変わらねえな」
「そうだね」
「そうだ狂子ちゃん。そのデバイスって、まだ静江さん使えるのか?」
「えっと……ナビ」
『はいまだパス(生体認証)は残っているので使えます』
「使えるみたい」
「じゃあ、あたいとこいつの姿(今の姿)見てもらいたいから撮ってくれないか?」
「いいですね……それじゃ」
中腰でにこやかに笑うイツキに肩を組まれ。緊張のせいか少々ひきつった笑顔をするビギナ。
そうして、イツキとビギナに見守られながら、狂子達は、懐かしき我が家、元の世界へと帰還した。




